- 2017年09月06日 10:39
「男性は家事が下手」もだめ。性のステレオタイプ的CMが、英国で禁止へ
2/2どんな広告が「性のステレオタイプ」と見なされるのか
改めて、「性のステレオタイプに基づいた広告表現」とは何か。
ASAによると、*「身体のイメージと性を結びつける」-例えば、女性は極度に痩せている体であると魅力的、あるいは好ましいというイメージを広げる広告
*「モノ化」-主として、女性の体をモノとして扱う広告。広告内容に注目してもらうため、体の一部のみに焦点を合わせる
*「性愛化」―女性の体などを不適切な表現を使って、あるいはその人に損害を与えるような形で、性愛の対象として描写する
*「性の特徴と役割付け」-性の特徴と役割を固定化して描写する
*「性のステレオタイプに合わせない人を嘲笑」
ASAのガイ・パーカーCEOに、もう少しかみ砕いて説明しもらおう。
「女性が掃除をしたり、男性が大工仕事をしている様子を示す広告=性のステレオタイプ的広告、と言っているわけではありません」(7月31日、ASAのウェブサイト、以下同)。「女性が家族のために買い物をしたり、男性が芝刈りをする様子を出せないとしたら、おかしなことになりますから」。
パーカー氏は続ける。「広告は現実と切り離すことはできません。私たちが問題にしているのは・・・家族全員で家を乱雑にした後で掃除をするのが母親だけだったり、ある職業は男性だけが就くもので、女性はなれないと言ったことを表す広告のことです」。
また、「強くて禁欲的でないと、『本当の』男の子ではないとか、男性だから家事が全くできない、といった様子を描写する広告」もステレオタイプに基づいた広告と見なされるという。
パーカー氏は広告だけが性のステレオタイプ化を作り上げているとは思わないが、「広告がそんなステレオタイプ化を補強しているのは事実」という。性のステレオタイプ化は人の可能性を「狭めてしまう」。
新たな広告基準の枠組みは年内に公表される予定だ。
市民から目立った反発は見られない?
18歳未満の子供を性愛の対象として描く広告や性のステレオタイプを基にした広告の禁止措置について、英国の市民はどんな反応をしたのだろうか。
筆者が見たところでは、大きな反発は起きていないようだ。
「性のステレオタイプを基にした広告の禁止」というと、「そこまでやるの?」という感想を持つ人もいそうだが、具体的に「女児=バレリーナ、可愛い子ちゃん」、「男児=エンジニア、指導者」という区別に違和感を覚える人が少なくないことが背景にありそうだ。
クラークスの靴の男女別表記に与野党を問わず多くの議員が非難の声をあげたのも、そうすることで国民から支援が得られることを知っているからだ。
リベラル系高級紙「ガーディアン」に寄せられた声を拾ってみる(ASAのリポートが発表された7月18日付)。
「広告のステレオタイプにはあきあきしているが、人の表現の自由を制限する動きもいやだ。難しいが、両者のバランスを取ることが求められている」(EditorialJoe)。
「多くの人が表現、言論の自由について書いているが、広告は言論ではない…心を変えさせるためのビジネスだ。…もしそのビジネスが社会に損害を与えているなら、規制を支持する」(Taxed2Death)。
「規制を支持する。職場で差別は許されないし、テレビでも同じだ」(Stuart Jones)。
「皮肉として使われた表現はどう判断するのだろう?」(Francis Downes)。
「規制を支持する。もっとするべきだ。…個人の自由にゆだねるべきだという人もいるが、巨額を持つ産業が無尽蔵の資金と調査結果を使って消費者に攻撃をかけてくれば、消費者はまともな選択ができなくなる」(Iain Reid)。
ガーディアンのコラムニスト、アン・パーキンス氏は、禁止措置を支持しながらも、ASAの権限は限られており、政治の嘘を規制できないと指摘する。例えば、昨年6月、欧州連合(EU)に加盟し続けるかあるいは離脱するかで国民投票が行われた。キャンペーン運動中に離脱派は「離脱すれば、週に3億5000万ポンドの分担金を国民保健サービスなどに回せる」と繰り返した。最終的に離脱と決まった後、離脱陣営は「数字が正確ではなかった」と述べた。
ASAは政治にかかわる広告の規制権限を持たないため、こうした「嘘」についての苦情を処理したり、禁止する動きは取れなかった。
テレビやラジオの政治報道に偏向があるなどの苦情は情報通信庁(「オフコム」)が担当し、新聞報道の苦情は大手新聞社が加盟社となっている独立プレス基準組織(IPSO)が担当している。
「男の子は男の子らしく」、「女の子は女の子らしく」・・・そんな表現を私たちは日常会話でつい使ってしまう。
しかし、「男(女)だからこうしなさい、ああしなさい」という表現は、時としてその人のポテンシャルを狭めてしまう可能性があるとするASAのパーカーCEOの言葉には一理あるとも言えよう。



