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「男性は家事が下手」もだめ。性のステレオタイプ的CMが、英国で禁止へ

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最近、日本で「炎上」するコマーシャルが相次いで話題に上っている。その多くは女性の描き方が「性的」、「性差別的」という批判にさらされている。

その1つはサントリーのビール系飲料「頂(いただき)」で、PR動画が「下品で差別的」とされ、7月上旬の公開後1日で中止となった。出張中の男性が現地の女性と居酒屋で飲食し、女性が「頂」を飲んで「コックゥ~ん!しちゃった」などの言葉を発する。

昨年9月には、鹿児島県志布志市のふるさと納税PR動画「UNAKO」が水着姿の少女をウナギに見立て、男性が飼育する様子を描いた。「美少女飼育ポルノ」、「性差別」などの批判が出て、志布志市が動画を削除し、謝罪する一件があった。

参考:志布志市のふるさと納税PR動画が、美少女飼育ポルノに見えるのは誤解なのか

また、サントリーのコマーシャル炎上と同時期には雑誌「少年ジャンプ」の巻頭にほぼ裸の数人の女性のイラストが掲載され、賛否両論を呼び起こした。「今後、子供にはジャンプを読ませない」という親が出る一方で、「(漫画を読むという)子供の人権を無視している」、「表現の自由だ」、「買わなければいいのでは」という擁護派の意見もあった。

筆者は一人の女性として、「頂」のコマーシャルは騒がれているほどには性的あるいは差別的とは思わなかった。しかし、人々が女性の描かれ方に敏感になっていることを示す例になったのではないかと思う。

英国でもコマーシャル(放送)、広告(紙媒体、オンライン)における男性、女性の描かれ方に大きな関心が寄せられている。

性差別的な広告はすでに禁止されているが、さらに厳格化する動きがある。児童を性的に描写する広告では、この「児童」を「16歳未満」から、「18歳未満」に引き上げるとともに、「性のステレオタイプに基づいた広告」も禁止される見込みとなっている。

新たな禁止措置に至るまでの過程と、具体的に禁止されることになる広告の基準を見てゆきたい。

性のステレオタイプに基づいた広告が禁止に

18歳未満の児童を性的に描写した広告が来年から禁止になる(画像はイメージ.ASAのサイトから)

英国で民放の放送が始まったのは1955年だが、これを受けてテレビ・コマーシャルの規制の必要性が認識されるようになった。そこで、広告業界、メディア、広告主が一緒になって立ち上げたのが「広告実践委員会」(CAP)。委員会は、広告の実践規定を作成する役目を持つ。

1961年、CPAは広告業界の独立規制組織として「広告基準協議会(ASA)」を設置し、現在に至る。

英国では、雇用法(2010年)によって、年齢、障害、結婚、妊娠、人種、宗教、性、性的志向による差別を禁じており、広告実践規定もこれに沿った枠組みになっている。

規定第4-1条によると、広告には「重大な、または広範囲な侮辱を引き起こすと見られる要素が入ってはいけない」。また、特別な配慮が必要とされる項目として、「人種、宗教、性、性的志向、障害、年齢」が挙げられている。

つまり、人種、宗教、性、性的志向、障害、年齢について、重大または広範囲な侮辱を引き起こす要素が入った広告は出せない。

ある特定の広告がこの規定に反すると思った場合、視聴者あるいは読者などはASAに苦情を申し立てることができる。ASAはその広告が規定違反かどうかを判断し、広告主に広告の取り下げなどを勧告できる。

今年5月、来年から変更される動きの1つが発表された、現在、16歳未満の子供を性的に表現する広告は禁止されているが、これを来年から18歳未満にする(放送メディアの広告については現在も18歳未満が対象)。

また、これまで、人を性的な物と見なす広告や不適切な形で性的に描写する広告が禁止されてきたが、これに加えて、性のステレオタイプに基づいた広告も来年から禁止されることになった。

新たな禁止措置は、1年をかけてASAが行ってきた調査の結果を反映している。ASAは調査結果を「表現、認識、損害 -広告における性のステレオタイプについてのレポート」としてまとめている。

レポートは以下からダウンロードできる
https://www.asa.org.uk/asset/2DF6E028-9C47-4944-850D00DAC5ECB45B.C3A4D948-B739-4AE4-9F17CA2110264347/

性のステレオタイプとは、「男性(あるいは男子)はこうあるもの、「女性(あるいは女子)はこうあるもの」という性別に基づいた固定的な考えを指すが、ASAのレポートによると、これを嫌う声が広がっている。

例えば、昨年、1000人の親を対象にした調査では、その大部分が「性のステレオタイプに基づいたコマーシャルを止めてほしい」と答えている。

また、英国工学技術団体は、クリスマスのプレゼントを選ぶときに「女の子なら人形やドレス」と自動的に考えないようにしてほしい、という。将来、女性がエンジニアを職業の選択肢の一つにする道を阻む可能性があるからだ。

調査のきっかけは「ビキニ女性のポスター」

ASAが調査を行うことになった一つのきっかけは、2015年、地下鉄構内に貼られたポスターだった。

横長の大きなポスターの中央に、ビキニ姿の若い女性の写真があり、体をまたぐようにして、こんな文章が入っていた。「あなたは、ビーチで通用する体になっていますか?(Are you beach body ready?)」。プラットフォームで電車を待っていると、思わず見てしまうポスターである。

地下鉄構内に貼られた、痩身用サプリメントを宣伝する
ポスターについて論じる英ハフィントンポスト

広告はサプリメント剤を売るプロテイン・ワールド社が制作させたもので、夏に向かって同社のサプリメントを買って痩せようと呼びかけている。

ポスターの女性のように痩身でなければだめだというメッセージを与え、そうではない体の人に「恥を感じさせた」悪い広告だということで、キャンペーンサイト「チェンジ」には7万もの抗議署名が集まった。

ASAは「この女性とは違う体形を持つ女性が、勧められたサプリメントを取らないと恥ずかしくて泳げないと感じるほどの広告ではない」と結論付けたが、サプリメントの効用にうそがあったとして、この広告は禁止となった。

このほかに、「性のステレオタイプ」を基にした広告であるとして市民から苦情が上がった広告の1つが、アプタミル社による乳児用ミルクのコマーシャルだ。女の子の赤ん坊が将来バレリーナになってゆくのに対し、男の子の赤ん坊はエンジニアになってゆく。「社会を担う性=男性」と言うステレオタイプを基にした、と解釈された。

今月中旬には、クラークス社の子供用靴も同様の観点から問題視された。女児用の靴には中敷きにハートの模様が付き、「ドリー・ベーブ(人形のような可愛い子)」という名前が付けられていた。男児用の靴は中敷きの模様がサッカー・ボールで、「リーダー(指者)」という名前が付いていた。

クラークス社の子供用靴の「性差別」を
報じるBBCのニュースサイト

「性差別的だ」という消費者からの苦情を受けて、クラークスはウェブサイトに載せていた「ドリー・ベーブ」という名前を削除した。「リーダー」はそのままになった。

スコットランドのニコラ・スタージョン自治政府首相は「2017年の現在、大きな会社がこれで通ると思っていたなんて」と驚きの声を上げた。

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