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2011年の9.11という日を迎えて

 今日9月11日は、東日本大震災の発生した3月11日からちょうど半年、そして9.11同時多発テロから10年という節目の日です。残念ながら政治家による見識を疑わせるような発言が続いてしまっていますが、この日にもう一度これからのわが国の進むべき道を考えねばなりません。

 政治家としてそれぞれの悲劇を受けて、(一刻も早く復興予算を組むことなど)きちんとした対応をすることは当然ですが、それに加えて考えねばならないのは、3月11日、そして9月11日に何が変わって何が変わらなかったのかを踏まえて進むべき方向を誤らないということではないでしょうか。

 3月11日より前から政治改革、構造改革が停滞し産業の海外移転が進み、わが国の経済が衰退しつつあるという「現実」がありました。そして、残念ながら、3月11日の悲劇を経て、状況はより厳しくなっています。このことは決して忘れるわけにはいかない現実です。

 まして今の与党は、場当たり的な反原発ムードを煽った結果の電力不足、法人税・所得税といった「頑張って働いている人・企業への課税」による日本国内でのコスト増、などにより決定的にわが国の産業競争力の足を引っ張る方向の政策を打ち続けてしまっています。5年後10年後を見据えた政策を断行していく政治でなく、目先の受けだけを狙ったような政治が、鳩山・菅・野田と政権が変わっても続けられてしまっています。

 3月10日以前のわが国の抱えている構造的問題が、さらに深刻化しているのが今の状況です。

 一方の9月11日。アメリカのクリントン元大統領は当時私がいたジョージタウン大学でテロの直後に演説でこう言いました。「9月10日を忘れるな」。

 その直前、国際政治的には、アメリカ軍がベオグラードの中国大使館を誤爆し、報復に中国が米軍機を撃墜し一触即発の状況となっていました。経済力を強め軍事的にも膨張傾向にあり独善的傾向の強い新興中国とアメリカの間の摩擦が非常に懸念されていました。

 確かにテロ以降、アメリカの本土の安全を守るという意味ではテロリストといった非伝統的脅威が大きな焦点となりましたが、忘れてはならないのは、地政学的には依然として、中国が着々と自衛の範囲を超える軍備増強をその後も続け米国と対抗しうる戦力を持ちつつあるという流れは全く変わっていない、ということです。そして長期的な視野で考えれば、こちらの脅威の方がもたらす影響ははるかに深刻です。

 先日、中国の軍事専門家とアメリカの専門家とのやりとりの中でも、中国がアメリカ軍のミサイル迎撃能力に対して米中間の相互確証破壊の状況を崩しかねないということで懸念と強めているという点が強調されていました。いつの間にか、既成事実として、中国は軍事的にアメリカと対等になりつつある、まさに 9.11の前の状況がより悪化して継続しているということ、これはわが国の安全保障を考える上でも死活的に重要な問題です。

 テロの当事国アメリカの関心が9.11以降、非伝統的脅威、テロリストに向いていることは事実です。しかし、北朝鮮、中国といった脅威を隣に抱えるわが国としては、国際政治の底流を見誤らずに、かつわが国の安全保障の本質を見誤らずに適切な対応を図っていかねばなりません。

 いくつもある課題について優先順位を明確につけ対処することこそが、政治家が果たすべき責務のうち最も重要な一つです。そのためにも、目の前で起こる事象にキチンと目を配りながらも、大きな流れを見誤らずに今のわが国が置かれている状況をありのまま認識すること、このことが非常に大事なのではないでしょうか。

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