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出禁になる患者たち

(この記事は、2016年5月31日に若手医師と医学生のための情報サイトCadetto.jp http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/cadetto/ に掲載されたものです。Cadetto.jpをご覧になるには会員登録が必要です。)

アメリカの病院や医師には、救急医療を除き、応召義務がない。診療は、基本的には医師と患者の契約と考えられている。したがって、医師側が患者を診ない(契約を結ばない)こともできるし、患者を出入り禁止、すなわち“出禁”にすることだってできる。

例えば、外来を何度も無断キャンセルする患者。外来は予約制なので、無断キャンセルされると枠に空きが生じる。本当に受診したい他の患者が、その患者のせいで受診できなくもなる。多くの外来で、無断キャンセルを繰り返すと予約が取れなくなったり、悪質な場合は外来受診できなくなるといったポリシーがある。

さらに、意図的で悪質なクレームや攻撃的な発言を繰り返すなど、医療従事者とトラブルを起こす患者や、脅迫や窃盗、暴力行為など、医療機関内で犯罪行為に及ぶ患者。こうした患者は、時として一発で退場処分、 出禁になることもある。

出禁にもグレードがある。軽いものでは、ある特定の外来への予約や受診が禁じられる。重いものだと、病院システム全体での受診や受療を禁じられる。メイヨーでも極めてまれではあるが、こういった対応をせざるを得ない患者さんがいた。例えば、職員への脅迫や暴力行為を複数回繰り返した患者などだ。

メイヨーシステムは多くの地域中核病院やクリニックを持っているため、システム全体への受診禁止は患者にとって相当厳しい措置だ。したがって、そういった措置を適用する際は、患者の権利が不当に侵害されないように、プロトコールに沿った段階的な手続きを取り、弁護士と相談しながら慎重に物事を進める。

例えば、問題行動を起こす患者には、なぜそのような状況になるのか、こちらで改善できる部分はないかを検討し、改善案があれば実行する。それでも行動が改善されず、患者自身に問題がある場合は、口頭や文書での忠告があり、「次回も問題を起こせば××という措置を取る」と通達する。それでも問題が続く場合、最終通告がなされて、実際に“出禁”処置が取られる。各々のステップで法的に問題がないかは、病院の弁護士と確認する。

しかし、救急診療には応召義務があるため、出禁になった患者も救急室に来れば治療を受けられる。緊急であれば、人道的な観点から入院もできる。だから結局は、出禁にしたところで、症状が重くなってから医療にかかるだけだ。医療システム的には、効率が悪い気もする。より良い解決策は何かないものだろうか?

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