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育児を「しない」父親、「できない」父親 - 本多カツヒロ (ライター)

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――他にも、結婚相手の収入を女性が重視するあまり、産後にミスマッチが起きると。

藤田:毎年、大学で500人以上にアンケートを取っています。性格以外で、将来の結婚相手の何を重視しますかと聞くと、女性は収入、男性は容姿が一番という結果になります。

 そこで授業では、現在のような共働き社会では、男性の収入が落ちていること、また収入の多い男性は、長時間労働を強いられ、転勤も多いことを伝えています。本書でも、大企業で働く転勤族の妻にインタビューしていますが、彼女の夫は3年毎に転勤を繰り返しているそうです。知らない土地で3年毎に暮らす上、夫は長時間労働で、家にいる時間が短い。そのため彼女は友人もなかなかできず孤独だと話してくれました。

 だから、授業では家事や育児をきちんとやると言っている人と結婚したほうが、転勤や仕事ばかりの人と結婚するより、産後は絶対に幸せだよと話しています。

 それに現在は、昔とは違い、女性でも総合職で就職でき、それなりに稼げる。それにいまの若い子たちは、女性より男性が偉いなんてたいして思っていません。だからこそ、パートタイムでもフルタイムでも家事や育児の時間を含めると、フルタイムの夫より長時間働いているのに、なにもしてくれない男性に納得いかない面があります。

 ただし、家事や育児に積極的でない男性も、こと子どもの教育や習い事には熱心な方が多いようです。熱心に勉強を教えたり、習い事の検定日には顔を出したりという姿が見られます。

――家事や育児に男性が参加すると、子どもにどんな影響があるのでしょうか?

藤田:多くの調査で、父親が育児に関わったほうが、子どもの情緒が安定し、自信や意欲が高まり、友だちも増える、という結果が示されています。将来、学歴や業績が高まるとも報告されています。これだけ良い影響があるにもかかわらず、育児に関わらないというのは、自信や意欲といった非認知能力が目に見えにくい成果だからかもしれませんね。

――一方の少数派の家事・育児に日常的に参加している2~3割の男性は、具体的にどんな家事をしているんですか?

藤田:さまざまな調査を見ると、ゴミ捨て、食べた食器を片付ける、子どもをお風呂に入れる、といったものが多いようです。ただ、ゴミ捨てに関しては、家事ではないという議論もありますが……。

 ただ、こうした育児や家事に積極的に参加する男性でも、料理と子どもがうんちをした際のおむつ替えをしないというのは調査をしているとよく聞きます。

――女性でも結婚してから経験を積んで料理が上手になっていく人は多いと思いますし、男性が特別料理ができないということはないと思いますが、なぜでしょうか?

藤田:料理をつくらないと言い張る男性には2パターンあるように思います。1つ目は、料理という家事を自分がすること自体が面倒臭いと考える男性。もう一つは、母親が専業主婦だった男性に多いのですが、女性の手料理に愛情を感じるという男性です。そうなると、妻は仕事帰りに買って帰ったお惣菜で夕食を済ませるわけにはいかなくなります。いまの大学生を見ていても、昼食にお弁当を持参する男子学生は珍しくなく「うちの母ちゃんの弁当が一番うまい!」なんて口にします。弟や妹が学校にお弁当を持っていくので、親が一緒につくってくれたり、父親の収入が下がっているから、お弁当で節約しようというのもわかるのですが、一定年齢以上の人たちはびっくりしますよね。

 諸外国を見ると、アメリカは夕飯にテイクアウトやレンジでチンしたものを食べたり、ヨーロッパでは夜は冷たいものをメインに食べたり、中華圏では屋台などで夕食を済ますことが多く、日本ほど女性の手料理にこだわってはなさそうですね。

――共働き社会の先輩である欧米並みに父親が家事・育児に参加するにはやはり長時間労働の改善が必要でしょうか?

藤田:これは私の仮説ですが、長時間労働さえなくなれば、現在でも家事・育児に参加している2~3割の男性は自動的にもっと参加するようになるでしょう。そのためには、ヨーロッパのように残業時間を1日1~2時間に法律で制限することも検討する必要があります。

 ただし、まったく参加しない男性の意識を変えるのはなかなか難しいのかなと思います。

――早く帰れない、育休が取りづらい状況というのは、管理職の人たちが、時代が変化していることを意識していないことも原因かと思います。社員が積極的に家事や育児に参加できるように取り組んでいる企業はあるのでしょうか?

藤田:くるみんマーク(註「子育てサポート企業」として厚生労働大臣の認定を受けた証)が導入されたり、先進的な事例に取り組んでいる企業はあります。ただ、企業のトップがそういった意識を持っていても、現場レベルまで浸透しているかは微妙です。働き方改革に関して、国がもっと力を入れるべきだと思いますね。

 それよりも、企業に対しては早く帰らせたほうが利益が上がる、といったインセンティブを与えないと難しいと思います。

 また、ここ2~3年、就職市場は売り手市場です。うちの学生を見る限り、いまの大学生は出世したいとか、いい車に乗りたいなどという感覚はほとんどない。少し前の大学生はブランド物のバックなどを持っていましたが、いまの学生はせいぜい財布がブランド物といった程度で、服もファストファッションがほとんどです。その代わりに、よく言われるように旅行などのコト消費にお金を使っている。

 そういったこれまでと違った感覚を持つ学生が仕事に求めているのは、やりがいや居心地の良さですから、いままでと同じようにやりがいもないのに、長時間労働を強いても、辞めていくでしょう。しかも、どんどん若者の人材は不足していきますから、企業自体が変わらないとならなくなるときが来るかもしれませんね。

――将来的に長時間労働が少なくなるのに期待しましょう。それでは、現在夫が何もせず困っている女性は、夫にどのように働きかければよいのでしょうか?

藤田:聞き取り調査をするなかで、子どもが生まれても、夫が働き方をまったく変えず、家事や育児をしてくれない場合は、大抵の妻は交渉すると言います。それでかなり積極的になってくれる人もいますが、まったく変わらない人もいると聞きます。でも、こればかりは言い続けるしかありません。ある研究によると、妻が育児分担を言えば言うほど、夫の育児の量が増えるといいます。

――ある女性は、夫に言い続けることでケンカになるのは避けたいし、自分がやったほうが早い、と言っていました。

藤田:夫の家事・育児への参加に関する妻の満足度を調べた調査があります。それによれば、専業主婦の家庭では、互いの役割分担ができているため、夫は土日さえ育児に参加すれば満足度は高い。

 しかし、共働き家庭の場合、土日だけでは不満という結果です。不満をため込むよりも、妻側は、具体的な労働時間や分担状況などのデータを夫に見せて、論理的に説得するのも1つの方法かなと思いますね。

――家事・育児に参加する2~3割の男性の妻をのぞく、ほとんどの女性は、専業主婦、パートタイム、フルタイムに限らず、事実上一人で家事や子育てを行うワンオペ育児の状態になっています。こうしたことが世の中になかなか伝わらないのはどうしてだと考えていますか?

藤田:私自身、産後、仕事がそれまで通りには出来なくなりました。ただ、それ以上に、街の景色が違って見えたんです。子ども連れで入れないお店や、ベビーカーでは通れない道もあります。これは出産前には想像もつきませんでした。

 結局、こうした社会問題を世の中に伝えるマスメディア自体が、男性が多く、長時間労働を強いています。だからこそ、こうした問題に鈍感なのかもしれません。

 また、(毎日新聞で)コラムを連載してわかったことは、一部の女性誌や新聞の生活面、テレビの主婦向け番組で子育てに関する情報を目にすることはあるかもしれませんが、それ以外ではほとんど報道すらされないため、子育て期にない女性や、男性は一切目にしません。さらに言えば、多くの男性は、平日の昼間は会社で仕事をしているため、その時間帯に子どもを連れて、死にそうなくらい疲れた顔をしながら、育児でてんてこ舞いの女性の姿を見ることがない。ライフスタイルが別々になっているため、お母さんの大変さに気づかない、目に入らない点があると思いますね。

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