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タモリが「鶴瓶に勝てない」と言った意味

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東京進出に失敗した笑福亭鶴瓶に再浮上の足がかりを提供したのが、タモリの『笑っていいとも!』でした。現在、2人は同じNHKで「全国をブラブラする番組」を続けていますが、タモリは「同じようにブラブラしているようで全く違う」「本当に全体的な人間力で彼には勝てない」といいます。タモリが惚れ込む鶴瓶師匠の魅力とは――。

※以下は戸部田誠『笑福亭鶴瓶論』(新潮新書)の第22章、「タモリという『テレビの師匠』」からの抜粋です。

■「東京進出失敗」の烙印

「俺、聞いたんやけど『いいとも!』終わるってホンマ?」

2013年10月、30年以上続いた『笑っていいとも!』の終了を発表するきっかけを作るという大役を担ったのは笑福亭鶴瓶だった。

「来年の3月で『いいとも!』終わる」

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戸部田誠『笑福亭鶴瓶論』(新潮新書)

タモリが淡々とした調子で答えると、観客はもちろん、出演者たちも驚きの声をあげた。それもそのはず。その時、このことを事前に知っていたのは舞台上ではタモリ本人と笑福亭鶴瓶、そして中居正広だけだった。番組のプロデューサーですら、当日それを知ったという。ごく限られたフジテレビの上層部とタモリの話し合いで決められたものだったらしい。

鶴瓶が番組の終了を知らされたのは、発表の前日だった。タモリから直接電話があり、「火曜日に発表するからきてくれ」と告げられたという。

鶴瓶がレギュラーを務めていた木曜日ではなく、火曜日にわざわざ“乱入”させて発表したのは、意味がないわけはないだろう。

もちろん、タモリが大事にしている生放送のハプニング性を“乱入”という形で演出するということが一点。そして、何より、タモリの笑福亭鶴瓶に対する信頼と仁義があった。

■鶴瓶とタモリを最初に繋げた意外な人物

鶴瓶とタモリを最初に繋げたのは、意外な人物だった。

「ものすごくおもしろい人がいる」

そんな一言を添えて若き日の鶴瓶のもとに一本のカセットテープが送られてきた。

送り主は井上陽水である。そこには『タモリのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)が録音されていた。

鶴瓶は、そのテープを再生すると、そのおもしろさに驚愕した。すぐに鶴瓶は、自身のラジオ番組のゲストに呼んだのだ。まだお互いに一般的には無名の存在の頃だ。

その後、二人はまったく別の道に進む。

タモリはカルト芸人から一転、『笑っていいとも!』に抜擢され、日本のお昼の顔に。

鶴瓶は、東京で局部露出事件を起こし、大阪に帰って、大阪ローカルのカリスマに。

だが、1987年、二人は再び交わることになった。

前年に東京再進出した鶴瓶だが、ビートたけしの裏番組に敗れる形で、「東京進出失敗」の烙印を押されかけていた。それを早くから予測していた人物がいる。『笑っていいとも!』のプロデューサーだった横澤彪である。彼はタモリにこう持ちかけた。

「笑福亭鶴瓶という、関西では圧倒的な人気を持つ男が東京に進出してきます。で、これが多分失敗します。そこで『いいとも!』に入れたいと思っています」

そしてその目論見通り、87年にレギュラーに抜擢したのだ。

鶴瓶にとって『いいとも!』の存在は大きかった。大阪での地位そのままに、明石家さんま(金曜)や所ジョージ(水曜)、片岡鶴太郎(火曜)らと肩を並べる木曜日の“曜日リーダー”的立場で出演し、存在感を高めていった。翌年にはそれまで関西ローカルだった『パペポTV』が全国ネットに。

この二つの番組によって笑福亭鶴瓶という存在が認知され、その芸風も理解されたといえるだろう。

ちなみに知名度という点だけにおいては、東京進出直前の85年から放映されていたユニ・チャームの生理用品「ソフィ」のテレビCMで、「お月さん」として出演したことによって広がっていった。

『いいとも』レギュラー加入の翌年に放送された2回目の“フジテレビ版「24時間テレビ」”である『1億人のテレビ夢列島'88』には、早くもタモリとともに総合司会を務めた。そのことからも、『いいとも!』とタモリが、鶴瓶の東京での浸透に大きな役割を果たしたことがわかるだろう。

■鶴瓶が『いいとも!』レギュラーを継続した理由

鶴瓶はタモリを「テレビの師匠」だと言う。

実は、レギュラーになって10年近く経った頃、鶴瓶は『いいとも!』降板を申し出たことがあった。様々な理由があったが、所ジョージ、さんま、鶴太郎といった同世代の盟友たちが番組を去ったこともその一つだった。自分も身を引いたほうがいいと思ったのだ。スタッフも了承し、4月に卒業という形で決まっていた。

そのことを直接伝えるため、鶴瓶はタモリを呑みに誘った。

そこで鶴瓶は正式に『いいとも!』降板の報告をするとタモリが珍しく強い調子で言った。

「ダメだよ」

鶴瓶にはその頃、自分自身の現状にモヤモヤしていた。日本全国で認知こそされてはいるが、自分自身の芸風が確立されているわけではない。もっと自分らしいテレビの出方が東京でもできるはずだ。

そのためには『いいとも!』を辞め、退路を断たなければならない。そうすれば、もっと自由に自分自身を出せるかもしれない。そんな思いがあったのだろう。

だが、そんな鶴瓶にタモリは言った。

「あなたね、『いいとも!』はね、ジャブが効いてくるよ。あなた絶対やっときなさいよ」

そのアドバイスに従い、鶴瓶は『いいとも!』レギュラーを継続したのだ。

タモリが、そんな風に共演者を慰留することはほとんどない。タモリにとって鶴瓶は特別な存在だったのだろう。

「鶴瓶は歳が近いこともあって、共感する部分も多いし、話も楽」「若い頃に観てきたものも、ちょっとした古いギャグも共有できているし、安心感もある。たくさん話すわけじゃなくても、一番分かり合えている」と語り、こう評している。

「彼は人間としての芯というか、男気みたいなものを持っている。だからちゃんと話せますよね。

話っていうのは、そこを認めていないとどうしても上滑りというか、『この人にはここまで言っても分かんないだろうし、話す必要もないだろう』ってことになるんですよ。でも彼とはそれがまったくない」

『いいとも!』などでよく見かけた光景の一つに、鶴瓶が何か身振り手振りで熱っぽく語っている最中に、タモリが「目、細いね?」などと、まったく脈絡のないフリを挟むというようなやりとりがある。

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