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歴史家は「コメンテーター」になるな

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今日の横浜北部は暑さが落ち着きまして、晴れておりますが涼しく過ごせております。

さて、久々の更新です。以前番組でも触れたトピックです。
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歴史家は「評論家」になるべきではない
by モシック・テムキン

ドナルド・トランプはたしかにアメリカ人のほとんどの人にとって大災害であり、世界にとっても危険な存在かもしれない。ところが彼は歴史家たちにとっては、大きな恩恵を与えてくれる存在だ。

なぜなら彼の政権がグロテスクに映れば映るほど、歴史家たちはその理由を説明するために、ケーブルニュースの番組でたった30秒の非難や、新聞の記事の中の引用しやすい言葉のために呼ばれるようになったからだ。

私も歴史家の一人だが、われわれの注目されるべき職業がこうして注目を浴びるのは喜ばしいと考えている。

ところが同時に私は、歴史が、矢継ぎ早かつ表層的な形で、しかもそのほとんどが歴史的な「アナロジー」を引き出す形で表現されていることに懸念もしている。

その結果として、読者や視聴者はトランプ氏に関して誤解を生むことが多く、現在の困難な状況に関してほとんど役に立たないような「歴史の教訓」を得ることになってしまう。

このようなことが起こる原因の一つは、まさに「歴史家がやってはいけないこと」にある。

われわれは学生たちに対して、「アナロジー」に注意するように教えている。アナロジーというのは政治家や政策担当者たち(彼らは目の間の問題に合うようにアナロジーを選ぶ)の間で人気があるものだが、過去と現在の両方を歪めてしまうことが多いのだ。

ひとつの例を挙げてみよう。トランプ氏は選挙期間中に、恐慌時代のルイジアナ州知事として有名だったヒューイ・ロングと比較されることが多かった

確かに二人の間には似ているところがある。トランプ氏と同様に、ロング知事も「大衆」の旗印の下で活動しており、エリートを攻撃し、批判者たちには「煽動政治家」や「ファシスト」と呼ばれていた。

ところが二人の間の違いはさらに重要だ。ロング知事は叩き上げの既得権益に挑戦した本物のポピュリストであり、知事として道路・橋・病院の建設や、貧者の救済に責任を持って取り組んでいた。

彼自身は決して「人種カード」は使っておらず、この時代の南部の大衆的な政治家にとっては衝撃的なほど珍しかった。

ここで重要なのは、トランプ氏がロングと似ているかどうかという点ではない(実際彼はロングとは違う)。むしろ重要なのは、このアナロジーが無意味である、ということだ。

実際のところ、このようなアナロジーは有害でさえあり、危険なものともなりうるのだ。

たしかに歴史はわれわれに様々なことを教えてくれるものだ。ところがその教訓の一つは、「歴史の教訓には限界がある」ということだ。歴史が繰り返すことはめったにないのである。

たとえばトランプ氏のウソやごまかしがリチャード・ニクソン元大統領に似ているからといって、それがウォーター・ゲート事件の再現とはならないのである。

しかもウォーター・ゲート事件は、ある種のハッピーエンドで終わっている。ニクソンはこのスキャンダルで失脚しているからだ。

ニクソンの話がわれわれに教えているのは、アメリカの政治システムが機能しており、大統領でさえも法律には逆らえず、民主制度の役割を果たしているということだ。

トランプ氏もニクソンと同じような不名誉に直面するかもしれないが、そうならない可能性もある。当時と現在の社会的状況がほとんど違うからだ。

1974年にはフォックス・ニュースや、似たような民間のプロパガンダメディアも存在しなかったし、議会の共和党の人々は献金してくれた富裕層のために減税を進めるよりも、民主制度と合衆国憲法を重視していた。

もし過去の大統領や政治家たちとのアナロジーや比較に根本的な欠陥があるとすれば、歴史家たちは何をすれば良いのであろう?トランプ時代の彼らの役割は、一体どのようなものであるべきなのか。

まず一つ考えられるのは、今回のようなメディアからの注目を利用して、軽薄なアナロジーを突き崩すことだ。

その一例として考えられる格好のターゲットは、トランプ大統領をヒトラーやムッソリーニのような、様々な過去の外国の独裁者たちと比較するという流行のアナロジーだ。

もちろんここでも自国優位主義(ジンゴイズム)や民主制度に対する軽蔑など、似たような部分は確かに存在する。

ところが同時に危険性も存在している。ヒトラーと比較すると、トランプ氏は実際のところそれほど怖い存在ではないし、トランプ氏と違ってヨーロッパのファシストたちは、はるかにイデオロギー的であり、トランプ氏の堕落した面や、自らを「偉大なディール・メイカー」として見ている点を見下したはずである。

さらに、ほとんどのアメリカ人にとって、ヒトラーとムッソリーニの話は喜ばしいものだ。なぜならわれわれは彼らを打ち負かしたからである。

結局のところ、歴史家ができる最も重要なことは、アナロジーを「批評家」たちに任せて、その代わりに現在のわかりづらく見える状況にどのように到達したのかという点について、批判的かつ面倒な説明を提供することなのだ。

そして実際に多くの歴史家はこのようなことを行っているのだが、あいにくメディアのスポットライトの下で行っているわけではない。

これは何も極端な意見ではなくて、実際に政治関係の優れた歴史家たちが常にやってきたことだ。

1955年のことだが、歴史家のヴァン・ウッドワード(C. Vann Woodward)が『ジム・クロウ法の奇妙な経歴』(The Strange Career of Jim Crow)という本を出版した。これは南北戦争後の人種差別政策の源泉について簡潔にまとめた優れた歴史書である。

著者のウッドワードは、過去からのアナロジーを求める代わりに、ジム・クロウ法は多くの南部の人間が考えていたような太古の昔からの伝統ではなく、19世紀後半という比較的最近の人種差別主義の高まりによって始まったものであるということを解き明かしたのだ。

社会・政治面における時代的な変化を追うこと――これこそまさに歴史家の基本的な仕事なのだが――によって、この本は社会的な進歩は可能であることを示したのである。

ウッドワードは切り取られやすい言葉や評論家が好むようなアナロジーを使ったわけではない。ところが彼の研究は、戦後の人種政治に大きなインパクトを与えたのである。キング牧師はこの著作を「公民権運動における歴史的な聖書だ」と評しているほどだ。

トランプ氏の場合でも、そのような明快な歴史の説明ができれば、彼の「プラネット・アース」(BBC制作の環境保護ドキュメンタリー番組)に対する憎悪にもかかわらず、トランプ氏が別世界から来たわけではないことがわかるはずだ。

彼の台頭は、たしかに世界的な独裁主義への流れや民主制度への嫌悪感と明らかに同調するものでありながら、同時に彼はまさに、近年のアメリカの歴史による産物なのだ。

彼はそれほど過去の政治家と似ていないだろうが、彼らと同じようにトランプ氏も、われわれが理解でき、しかも対応できるような、歴史的なプロセスから恩恵を受けてきた。

それはつまり、われわれの有名人への信仰や、性別・人種・経済の面での格差、対外戦争による精神的打撃、投票者たちの不満、そしてアメリカ国民の多様性や政治的な好みを反映しない政治体制などである。

ここで疑問が出てくる。公共善のために何もしてこなかったリッチな男が、そもそもなぜ政治家になってしまったのだろうか?中国からバラク・オバマ大統領の生誕地に至るまでのあらゆる不明確な知識は、なぜ何百万人もの人々にとって重要なのだろうか?

彼の豊富な資産は、どのようにして政治における権力と影響力へのアクセスを与えたのだろうか?移民によって構成されている国で、なぜ外国人嫌いがこれほどまでに力を得てしまったのだろうか?

歴史家たちはこのような疑問を解明するような研究を行ってきたわけであり、それらに答えるに最もふさわしい人々だ。

歴史家の説明というのは、過去の大統領の比較による簡単な説明よりも視聴率をとれないだろうが、トランプ氏については良い説明ができるだろうし、アメリカ人は自分たちでより良い歴史をつくることができるということを明確にしてくれるはずだ。
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