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「日本すごい」に流されないNHKの新番組

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■矢沢ファンのフィリピンバプ・ママは涙した

ホームステイ先のフィリピン人女性たちは、皆明るいが、楽しいことばかりだったわけではない。OLの姉妹は日本で正社員になる前、コンビニのレジのバイトをしていたが、勤務先の店長が日本語で仕事内容を説明する上に、大きな声を出すので怖い思いをした。それでも彼女たちは「仕事は厳しいほうがいい」と語る。

パブで働くアスカさんは、フィリピンの家族を養うために27年前に来日した。故郷の美人コンテストで優勝したほどの美女で、来日費用で抱えた借金を返済しながら日本人男性と結婚。その後、子どもを2人もうけたが昨年離婚している。離婚に至った理由のひとつには、フィリピンの家族への毎月の仕送りがあった、と自身は考えている。矢沢永吉ファンのアスカさんは、子どもたちと暮らせないつらさを涙ながらに訴えたが、「日本が今の私を強くしてくれた」とも語る。

介護福祉士を目指す留学生たちは、まだまだこれからの日本での生活に希望を持っている。学校に通いながら介護施設でアルバイトをし、毎晩故郷の家族とチャットで話す。「日本は夢が広がる国です。(日本では)どんなときでも夢をかなえるのに人々が協力してくれる。なんでもできると思います」と語る。

最近のテレビでは、「ついていく系」と同じくらい、日本の文化や日本人を持ち上げる番組が目につくようになっている。「日本すごい系」と揶揄する言葉もあるくらいだ。現実には日本は単に憧れられる国ではなく、今回『日本の異国にホームステイ!』のロケVTRが映したように、外国人労働者たちが苦労をしながら生きているという一面を持つ国でもある。

こうしたテーマは、ドキュメンタリー番組ならば珍しくないが、バラエティ番組ではなかなか取り上げられない。もしかすると制作者たちの間には、「ドキュメンタリー番組は真面目に観るもの、バラエティ番組は単純に楽しく観られるものにするべき」という不文律が存在しているのかもしれない。それゆえに、バラエティ番組が取り上げる“異国”の人々は、「日本大好き」と言われる気持ちよさを与えてくれる人ばかりになってしまうのではないだろうか。

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『体感ドキュメント 日本の異国にホームステイ!』の、芸人とタレントがスタジオでVTRを観るという構成は、バラエティ番組の手法だ。冒頭で触れた通り、「ついていく系」企画というのも、現在のバラエティの時流に乗っている。さらにVTRの合間には、スタジオで全員がフィリピン名物である孵化直前のアヒルの卵「バロット」を試食していた。

日本人からすればグロテスクに見えて身構えてしまうバロットを、芸人がおそるおそる食べるのはバラエティ番組で非常によくあるシーンだ。逆に、日本の食べ物が海外の人から身構えられることだってある。それが文化の違いである。今回千鳥が見せていた反応は、お笑いとしても異文化を受け入れるという意味でも、バランスがとれていたと思う。バラエティでも、こうした文化の違いを単なる罰ゲームとして扱わない方向性がもっと出てきてもいいのではないか。

『日本の異国にホームステイ』は、こうしたバラエティでおなじみのフォーマットを使いながら、番組のタイトルにある通り「ドキュメント」を放送することで、ドキュメンタリーとバラエティの住み分けを飛び越え、日本に横たわる現実に目を向けてもらうことを目指しているように感じられた。

次回の放送はまだ発表されていないが、今後もさまざまな国から来た人の暮らしやその背景を、バラエティ感覚で観ながら学べる番組として機能していってほしい。

(フリーライター 西森 路代)

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