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中国の『新型農村合作医療』総点検(8)―医療費適正化(上)

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洋の東西を問わず、医療サービス水準の向上および患者負担の軽減は常に公的医療保障に課されている最大の課題であるといえる。しかし反面、これら課題達成の過程には、医療費適正化も強く求められている。

これまでに、中国の新型農村合作医療(以下、「新農合」と略称)の給付システムを取り上げて医療給付水準の向上や患者の自己負担軽減等についていろいろな角度から見てきたが、今回は医療費増大の抑制をめぐる取り組みを検証してみる。

そもそも医療費適正化はなぜ必要なのか。まず、国際比較するため、日本の医療制度から入っていこう。

日本の医療制度は三つの特徴を持つとされる。

(1)「国民皆保険」体制の確立によりすべての国民が公的な医療保険制度に加入し、保険料納付の見返りとして医療サービスを受けられる。しかもその自己負担はそれほど重いものではない。

(2)患者が医療サービスを必要とする際、「フリーアクセス」を認められ、医療機関を自由に選べる。

(3)「出来高払い」方式の診療報酬体系をとっており、医療機関が医療行為をすればするほど収入が増えるような仕組みになっている。近年、高齢者の入院を対象とする「定額(包括)払い」方式も導入されてはいるものの、「出来高払い」方式は依然として主流である。

これらの特徴は日本の医療保障の高い水準を表していることは確かだが、決していいことばかりではない。医療費の自己負担軽減が患者の「モラル・ハザード」を防げず、医療資源の効率的な配分を妨げていることは否めない。「モラル・ハザード」とは、保険という制度が存在する場合、保険がない場合に比べて、さほど医療が必要ではない状況であっても診療を受けがちになる、という行為である。かつて老人医療費無料化の実施に伴って生じた「病院の老人サロン化」や「社会的入院」の一般化はその顕著な例である。

また、フリーアクセスは風邪や軽傷でも大病院へ駆け込む傾向に陥りやすく、医療機関は役割を分担しにくい。さらに、出来高払い方式の診療報酬体系は、さまざまな治療を試みる急性期医療に適しているが、医療費の高騰を招きがちで、科学的・効率的な治療を阻む一因でもある。

一方、中国の医療制度は基本的に日本の医療制度と異なる構造を持つが、共通点がまったくないわけではない。中国では「国民皆保険」体制の実現はまだ途中であり、とりわけ「任意加入」を主流とする点では果たして日本と同様に実質的な「国民皆保険」を達成できるかという疑問が残ったままだ。少なくても、現在の中国では国民全員が公的な医療保険に加入して比較的軽い自己負担で病気治療を受けられる状況にない。また、医療機関の選択において中国の国民は医療制度上、多大な制約を受けており、日本のような「フリーアクセス」とは程遠い。しかし、診療報酬体系においては中国も「出来高払い」方式をとっており、医療機関は過剰診療、「薬漬け」、「検査漬け」などを通じて自己利益の最大化に走っている。

結論を先取りすると、医療費の増大、とりわけ医療費の非効率的な使用を生じさせる要因を見ると、中国と日本とは似たようなものもあれば、異なる部分も大きいということだ。

中国の中央省庁の一つである国家会計監査署は「会計監査法」に基づいて2010年5~6月に遼寧、黒龍江、江蘇、安徽、福建、河南、湖北、湖南、四川など9つの省の45の県・県級市・区において09年1月~10年5月間の新農合基金の徴収、管理、使用および関連政策の執行状況に対して会計監査を行った。と同時に、新農合指定病院(郷・鎮の衛生院)97カ所と9つの省の新農合情報ネットワークを調査した。会計監査・調査の結果は2011年2月 16日にウェブサイト「中国政府網」で公表された。

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