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「1人足りとも殺させないため」に、必要なもの

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自衛官が「俺は死ぬ危険があれば任務を捨てる」だったら、X国に「日本への攻撃・侵略はやれるな」と思わせてしまいます。
でも「俺は死ぬ危険があっても任務を遂行する」だったら、X国に「日本への攻撃・侵略は難しそうだな。やめとこうかな」と思わせることができます。
X国が「日本への攻撃・侵略はやめとこう」となれば、戦闘は起こらず、実際に「死ぬ危険のある任務」を行う必要はなくなります。
(もちろん、あくまでも「自衛官の意思」は「抑止力」の要素のひとつに過ぎないので、これだけで簡単に行くものではありませんが)

私は絶対に、自衛官の身に何かが起こって欲しくありません。
でも、自衛官がその「覚悟」を持つことは、「抑止力」をより大きなものとし、国民を守ることだけでなく、自衛官の身を守ることにもなります。

私は予備自衛官で、有事の際は招集を受ける可能性があります。
招集を受けて行う任務には、身の危険を伴うものもあるかもしれません。

もちろん、正直に言えば死にたくないです。
敵だろうが味方だろうが自分だろうが、生死にかかわる場になんて行きたくないです。
怖いです。

でも、怖い怖いと脅えていたら、やれることもやれなくなります。
任務が遂行できなくなります。
脅えていたらミスをして、本来であれば危険ではない場面でも自らを危険にしてしまいます。

でも、怖いです。
イヤです。

でも……。

この葛藤とどう向き合うべきか……たくさん考えてたくさん悩み、そして関係者とたくさん話をしました。
そしてまた考え、悩みました。

……という過程を経て、出た結論が
「抑止力を高めるために、覚悟を持つ」
「日本を守るため、大切な人たちを守るため、そして自衛官たちを守るためにも、覚悟を持つ」
です。

この「身の危険」や「覚悟」には、自衛官22万人に22万通りの思いがあると思います。
予備自衛官、即応予備自衛官も同様です。

「俺は死ぬ危険があっても任務を遂行する」
もしみなさんの身近な人がこう言ったら、みなさんはどんな言葉を掛けますか?

「やめて」
「死なないで」
「生きて欲しい」
「ドン引き」
「そうか。応援するよ」
「ありがとう」

それぞれに、それぞれの思いがあると思います。
私も、私の身の案じる言葉を掛けられたら、「ああ、私のことを大切に思ってくれているんだな」と素直に嬉しいです。

一方、「抑止力」を考えた場合、どんな言葉を掛けますか?
日本を守り、私たちを守り、大切な人たちを守り、自衛官を守る「抑止力」を高めることを考えた場合、どんな言葉を掛けますか?
どんな言葉を掛けたら、「抑止力」のひとつの要素である「俺は死ぬ危険があっても任務を遂行する」という覚悟をより強い物にできると思いますか?

……とっても難しいですよね。

この答えに正解はないと思います。
でも、ほんの少しで構いませんので、ぜひ「私だったらどんな言葉を掛けるだろう」を考えてもらえると嬉しいです。

前回も書きましたが、自衛官は「死ぬ」を目的にしているワケではありません。
自衛官の目的は「任務の遂行」です。
死んだら任務を遂行できませんので、どんな状況下でも「生きる」ための努力をします。
生きて、任務を遂行します。

ので、村本さんのツイートにもありますが、よく世間で言われる「国のために死んでくれ」は、単純に「???」と思います。
死んだら任務を遂行できませんから。
生きて任務を遂行することが「国のため」ですから。

「国のために死んでくれ」は、おそらく先の大戦から連想されているのではと思いますが、今のこの時代に予備自衛官をやってる私がもし「国のために死んでくれ」に回答するなら、
「国のために死んでくれって言われても死なないよ。国のために、死ぬ危険があっても任務を遂行するけど、生きて任務を遂行するよ。私たちがやることは、ただひとつ任務の遂行だよ。そのために生きるし、死ぬ危険があっても任務を遂行するよ」
でしょうか。

さらに「国のために死んでほしくない」に回答するなら、
「うん、国のために死なないよ。国のために生きて任務を遂行するよ。国のために生きるし、死ぬ危険があっても任務を遂行するよ」
でしょうか。

「1人足りとも殺させないため」に必要な「外交」、そして「抑止力」。
これは、どちらかがあればそれで良いというものではありません。
どちらもが最大限の力を持つことで、「1人足りとも殺させない」がより実現できるようになります。

そして、「外交」「抑止力」に、もひとつさらに付け足すなら、「私たち一人ひとりの意識」。
「外交」や「抑止力」に対する、私たち一人ひとりの意識。

国民の一人として、「1人足りとも殺させないため」に、私も精一杯考えていきます。

また私は予備自衛官でもあるので、「1人足りとも殺させないため」に、死ぬ危険があっても任務を遂行します。
……まあ、言うのは簡単ですが。
ほんとこれ、難しいです。

※今回は、「日本が攻撃・侵略を受ける(日本への武力攻撃)」での「1人足りとも殺させないため」に焦点を絞りました。海外派遣など、別パターンでの「1人足りとも殺させないため」も、また改めて書きたいな~と思っています。

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