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欧州債務危機の本質~開けられてしまったパンドラの箱~

イタリアの10年物国債の利回りがここのところ7%前後での乱高下を続けています。そしてスペイン国債も6%台半ばでの動きを見せています。我が国の10年債の金利は1%を切っており、同じユーロ圏ではドイツの10年債の利回りは2%以下の水準にあることと比較すれば、インフレ率等の違いがあるとはいえ、いかにそれが異常な状況かは明らかです。

 例えば我が国の長期金利が3%程度まで上昇すると、国の借金の利息の払いだけで10年経たないうちに40兆円以上の利払いが発生し、昨年度の国の税収が40兆円を切っていることを考えれば、家計に置き換えればまさに「毎月の給料以上のお金がローンの利息の払いに消えてしまう」というあり得ない状況に陥ってしまう。このことからもわかるように、金利の問題は国の財政の持続可能性に大きな影響を与える非常に深刻な問題なのです。さらに、金利が上昇を始めると持続可能性への疑問がマーケットで台頭し、さらに金利が上昇するという悪循環をもたらし、事態がどんどんと深刻化するということも忘れる訳にいきません。

 この点はこれまでも様々な場面で書かせていただいていますが、今日は今のヨーロッパの危機的状況について少し触れたいと思います。

 ギリシアから始まった一連の債務危機、事態はドイツ以外のすべてのユーロ圏の国の国債の暴落という状況になりつつあります。これはそもそも可能性としては以前から言われていたことです。

 まず理解しておかねばならないのは、ユーロという共通の通貨が存在する一方で、財政政策の主体は依然として国家であり、そのねじれがあるということです。この点が日本やアメリカ、イギリスなどの他の国と異なる最大のポイントです。

 理屈としては、「ユーロを守るため」ということでデフォルト(債務不履行)を起こさせないということであれば、すべての国の国債の利回りはほぼ同じレベルに収束するはずです。しかし実際には依然として国の境は明確に存在し国が非常に強い力を持っているので、各国の国債の利回りは異なり、国によって資金調達のコストが異なっています。

 そしてそのことが微妙な均衡を生み出して、それぞれの国がそこそこのコストで資金調達をできる環境が維持をされてきました。

 しかし今回、ギリシアの危機を発端として、かろうじて維持をされてきたこの均衡が崩れてしまったというのが今起こっていることです。

 従ってその対策も非常に難しい。

 仮にEFSFによる救済策が機能してデフォルトをさけることができた場合、もちろん債権放棄を一部強いられたことはあった訳ですが、しかし、ユーロ圏が総力を挙げて最後は救済するのだということになれば、事態が落ち着いた後、再び不安定な国の国債に分不相応な投資が集まり、結果として今回の危機前と同じ様な非常に不安定な状況を生み出すことになりかねません。

 しかしその一方で、デフォルトが実際に起こり、ギリシアだけでなく他の国にまで波及するとすれば、今後ユーロ圏における国債への投資は事実上ドイツ以外には向かわないということにもなりかねません。その場合には各国の財政運営は破綻してしまう訳で、もちろんユーロを維持することは困難になってしまいます。

 以前から指摘され続けてきた、通貨圏、金融政策の主体と財政政策の主体のズレというユーロ圏のゆがみがもはや持たないということを示しているのが今回の事態かも知れません。市場参加者も政治家も、誰もが気づきながら気がつかないふりをしてきたこの矛盾についてのパンドラの箱が開けられてしまった訳です。もはや元に戻ることはできません。

 EU圏共通の財政政策を行うEU財務省を作るのか、あるいはユーロという単一通貨をやめるか、少なくとも大縮小するか、きちんとした抜本的な構造改革をして矛盾点をなくさねば問題解決のスタートラインにすらたどり着かない、EUはそんな瀬戸際に今立たされていると言ってよい状況です。

 6月にEUに招聘されて意見交換をしていた当時は、こうした矛盾点の指摘に対してほぼすべての担当者、政治家、専門家が「一歩一歩積み上げて今日のかたちをようやく作れたユーロを大事にしていくためにも、仕組みの急激な変化は望ましくない。ゆっくりとしたペースで財政政策と通貨圏の一致をはかっていくのだ」と言っていましたが、もはやそんな余裕はありません。

 戦争に悩まされて続けてきたヨーロッパの人にとって統一欧州はまさにローマ帝国以来の夢であり、ユーロという共通通貨はまさにその象徴。その思いは十分に理解できますが、それに引きずられることなく現実的な改革を断行することが必要です。

 しかし、そうはいっても今でも意思決定プロセスは一つの国よりも遥かに複雑ですし、改革を断行するのは正直難しいと思われます。実際危機後出てきている対策は、対処両方の範囲を出ていません。

 実は政治的にも出口の方向性が明確になっていない今回の債務危機。我が国への影響も避けられない問題ですので注視をしていきたいと思います。

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