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EVでも進むワイヤレス充電 - 土方細秩子 (ジャーナリスト)

 今年後半、テスラがモデル3の発売を開始することで、米国はいよいよEV量産時代に突入しようとしている。現在テスラはEVの台数増に対応するため、特にカリフォルニア州内でチャージステーションの充実を急ピッチで進めているところだ。

 モデル3の登場で何が変わるのか。自動車業界アナリストによると「ユーズドのEV価格が大幅に下がり、2万ドル台となる可能性がある」上に、「3万ドル台のモデル3、GMボルトにより、2018年にはEVの平均価格とガソリン車の平均価格がほとんど変わらなくなる」という予測まで出ている。

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(Justin Sullivan/Getty Images)

 しかし、やはりEV普及を拒むのはバッテリーの持続時間だ。いくらチャージステーションが充実しても、急速チャージでもかかる時間は30分程度。ドライブの途中に何度も30分以上の休憩を取る、さらにはチャージステーションを常に探さなければならない、というのがドライバー側には気持ちの上で負担となる。

 そこで現在注目されているのが「ワイヤレスによる充電」をEVに適用できないか、という技術だ。実はこの技術、新型iPhone8で実現されるのではないか、と噂になっている。8月中旬に中国のブログサイト、Sina Weiboでリークされた情報によると、iPhone8には内部にワイヤレスチャージング・コンポーネントが含まれている、という。ワイヤレスチャージそのものはサムスンなどがチャージングパッドにより既に実現しているが、アップルではパッドを使用せず、チャージャーから10メートルくらいの距離にあるデバイスを自動的にチャージするメカニズムを検討中と言われる。

 もちろん小さなスマホとバッテリー容量の大きいEV、しかもチャージャーからの距離が相当離れることを考慮すると、こうした技術をすぐに適用するのは難しい。しかしスタンフォード大の研究室では既に動き回る物体にワイヤレスで電力を供給する実験に成功、6月15日付のネイチャー誌で発表している。

 同大学電子工学科のシャンフィ・ファン教授によると「例えば高速道路にこのチャージャーを設置することで、付近を通るEVだけではなく携帯電話など様々なデバイスへの電力チャージが可能になる」という。ただしそれを可能にするには送信できる電力を大幅に増やす必要がある。

 教授のチームが行なった実験では、動き回るLED電球に電力を送信することに成功した。しかし使用電力はわずか1ミリワットだ。EVの場合、数十キロワットの送信が必要となる。今後は送信電力の増強だけではなく、送信距離、効率などを高めていく作業を行う予定だ。

 ファン教授が目指すシステムは、高速道路にコイルを埋め込み、EVの車体下部に設置されたコイルが道路からの電力を受け取りながら走行する、というもので実現すれば「理論的には無制限の距離を走行できるようになる」という。

 この技術は自動運転にも対応する。このようなシステムを高速道路に設置することで、ソーラーパワーなどを用いたエネルギー源とし、自動運転車両をガイドしつつチャージも行う、というシステムだ。いわゆるスマート・ハイウェイをワイヤレスで実現する、という考え方に繋がる。

課金システムをどうするのか?

 テスラのイーロン・マスク氏が現在実験を行なっているトンネル走行も、基本的な考え方は同じで、トンネル内に設置されたガイドからの情報を車が受け取り、トンネル内では自動走行となる。これにワイヤレスチャージを加えればEVの場合はトンネル内ではバッテリーをチャージしながら走り続けることができるようになる。

 問題はこうしたインフラを全国に広げることができるのか、そして課金システムをどうするのか、という点にある。EVでなくともワイヤレスチャージにより携帯を充電した場合も、EVと同様の価格設定になるのか。1台の車がどれだけの電力を受け取ったかを示す方法はあるのか。プリペイド方式か、あるいはクレジットカードなどによる月極めの課金制度になるのか。

 実現にはクリアすべき問題点は多いものの、今後この分野の研究はスタンフォードだけではなく様々な研究機関が乗り出すと考えられており、まさに「スマート」な道路から自動運転のための様々な情報、GPS、さらにはバッテリーチャージまでを受け取る時代は意外に早く到来するかもしれない。

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