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「セキュテリィーの為の戦争」だったと述べていた高市早苗氏

承前

 私がこのマッカーサー「自衛戦争」説を初めて知ったのは、いつのことだったか、もうよく覚えていない。
 少なくとも、20年以上前のことではなかったかと思う。
 おそらく、当時のオピニオン誌か何かで読んだのだろうと思うが、違うかもしれない。
 その頃は、ああそうなのか、そういうこともあるのだろうなと、素直に受け取っていた。

 「自衛戦争」との訳がおかしいのではないかという疑問をもったきっかけも、よく覚えていない。
 ただ、昔、自民党の高市早苗・衆議院議員(前総務相)が、「セキュリティのための戦争だった」と述べていたのが、強く印象に残っている。
 それが、「自衛戦争」との訳に疑問を覚えたきっかけだったかどうかは、よくわからない。それより前だったかもしれない。

 今ネットで検索してみたら、高市早苗氏のサイトに、当時の経緯を示す同氏によるコラムが掲載されていた。

2002年08月27日

田原総一朗さんへの反論

 8月18日放送の「サンデー・プロジェクト」にて、田原総一朗さんが、私に対しておっしゃった言葉について、25日の番組で謝罪がありました。

 18日の放送では、「満州事変以降の戦争は、日本にとって自存自衛の戦争だったと思うか?」との田原さんの問いに対して「セキュリティーの為の戦争だったと思う」と私が答えた途端、田原さんがまくしたて始めました。「下品で無知な人にバッジつけて靖国のことを語ってもらいたくない」「こういう幼稚な人が下品な言葉で靖国、靖国って言う」「靖国神社に行ったら、下品な人間の、憎たらしい顔をしたのが集まっている」

 全国ネットの生番組で突然「下品」といった言葉で罵倒され、あまりの出来事にしばし茫然。数分前に「国立追悼施設新設の是非」について私が行なった説明の中に下品な言葉遣いでもあったのかしら・・と思いを巡らしながらも怒りが込み上げ、怒鳴り返したいのを我慢して座っているのが精一杯でした。その後、この件では反論のタイミングも得られないままに番組が終了。

 翌日、電話で田原さんから「下品という表現は申し訳なかった。高市さん個人の事を言ったのではなく、国会議員が集団で靖国神社に参拝することは良いと思わないし、今日も右翼から電話があったが、靖国に参拝される方の中に下品な人が多いということを言いたかった」とお詫びが有り、後日、「サンデー・プロジェクト」のプロデューサーが議員会館に足を運んで下さいました。「私たちには、個人の人格攻撃になる言葉を放送したという『放送責任』というものがありますから、次回の番組できちんと謝罪します」とのことでした。

 私はこの番組を見ていないのだが、確かこの件で今は亡き月刊誌『諸君!』が高市氏の反論文を掲載し、合わせて他の論者による田原氏批判も載せていたと思う。残念ながら記事は処分してしまって内容は確認できないが。

「満州事変以降の戦争は、日本にとって自存自衛の戦争だったと思うか?」
との田原氏の問いに、高市氏は
「セキュリティーの為の戦争だったと思う」
と答えたとある。

 高市氏が「自存自衛の戦争だった」と思うなら、「そうだと思う」と答えればいいだけである。それをわざわざ「セキュリティーの為の戦争だった」と言い換えている。
 ああこの人は、「自存自衛の戦争」という用語には疑問を覚えているのだな、それで、マッカーサー証言の原文にある「security」の語をそのまま用いているのだなと、当時思った記憶がある。
 だから、それ以前から、「by security」を「自存自衛のため」と訳していることがおかしいのではないかという疑問はもっていたのだろう。

 このコラムはこう続くのだが、

 プロデューサーの誠実な人柄に接し「十分に名誉回復していただけますね」と念を押した上で、改めて私の戦争についての考え方もご説明しました。下記の内容です。

(戦後教育を受けた私の「現代人としての価値観」や「現在の国際法」に照らして考えると、他国の領土・領海・領空内で行なう戦闘行為の殆どは(同盟国への防衛協力の場合等を除く)、「侵略行為」である。しかし、「日本にとって」「自存自衛の戦争だったか」ということなら、そうだったと思っている。その問いは「当時における戦争の位置付け」を問われたものと理解したから。

欧米列強の植民地支配が罷り通っていた当時、国際社会において現代的意味での「侵略」の概念は無かったはずだし、国際法も現在とは異なっていた。個別の戦争の性質を捉える時点を「現代」とするか「開戦当時」とするかで私の答え方は違ったものになったとは思うが、私は常に「歴史的事象が起きた時点で、政府が何を大義とし、国民がどう理解していたか」で判断することとしており、現代の常識や法律で過去を裁かないようにしている。)

ここでも、「「日本にとって」「自存自衛の戦争だったか」ということなら」と、「自存自衛」は質問者側の言葉になっており、高市氏が自身の言葉として用いているのではない。

 もっとも、この説明の後段の「欧米列強の植民地支配が罷り通っていた当時、国際社会において現代的意味での「侵略」の概念は無かったはず」という点には私は同意できないのだが。

 侵略の概念があったからこそ、満洲事変に対して中華民国が国際連盟に提訴し、リットン調査団が派遣され、国際連盟が「満洲国」建国を承認せず、わが国は国際連盟を脱退せざるを得なかったのではなかったか。

 侵略の概念があったからこそ、石原完爾らは南満洲鉄道の爆破を自作自演して、正当な自衛行動であると少しでも見せかけようとしたのではなかったか。

 侵略の概念があったからこそ、わが国は大東亜戦争に際して、欧米の侵略からアジアを解放すると称したのではなかったか。

 なお、このコラムによると、8月25日の同番組では、田原氏による「下品」発言の謝罪と、高市氏の上記の考え方の説明がなされたが、後者に対して田原氏が、

「ちょっとここで反論したい。植民地政策がまかり通っていたが、第1次世界大戦が起こりまして、ウイルソン大統領が植民地政策はやめようと、その直後にワシントン条約で植民地を作るのはやめようということになった。満州事変、日中戦争はこの後のことなんです(後略)」

と述べたとのことで、番組に出席していない高市氏がこの発言に反論を加えている。

 「植民地を作るのはやめよう」という「ワシントン条約」なるものは存在しないので、この点では高市氏の主張は正しいが、第1次世界大戦後のワシントン会議で締結された9か国条約の効力までも否認しようとしているのはいただけない。
 詳しく述べる余裕はないが、中国が当時分裂状態に陥っていようが、ソ連(高市氏は何故か「ロシア」と言っている)による共産化の危機が迫っていようが、9か国条約が未だ有効であった以上、爆破事件を自作自演した上での満洲国建国という事態が、同条約に違反することは疑いようがないからだ。

 ただ、高市氏がその反論で「様々な要因の中で追い詰められていった日本の「当時における大義」はやはり「自存自衛だった」と言わざるを得ません」と述べながらも、

(その後の戦闘行為の中で発生した個別の戦時国際法違反事例を正当化はいたしません。米国が原爆投下で犯した「非戦闘員の殺戮や非軍事施設への攻撃」といった事例は、各国とも経験しているはずです)

と付け加えていたことには留意しておきたいし、さらに

いずれにしましても、公共の電波を使って「不正確な言葉と情報」を発信して、その場にいない私の考え方を批判されたやり方は、フェアーでなく、メディアの正しい在り方とは思いません。

と述べた点については、当時も現在も、完全に同意である。

(続く)

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