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【読書感想】吉田豪の"最狂"全女伝説 女子プロレスラー・インタビュー集

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ダンプ松本:ヒールのほうがみんな気が弱いね。よく言われてるけど、ホントに性格の悪い人がヒールになったら殺しちゃうし、もっとひどいことするでしょ。

——男子のヒールもみんないい人ですよね。

ダンプ:みんないい人、ホントに。だってクラッシュがファンの子にもらったプレゼントなんか、あの人たちはみんな平気で捨てちゃうじゃん。それを極悪が拾ってたんだから。

——ダハハハハ! エコロジーですね(笑)。

ダンプ:そうよ! せっかくもらったものなんだから、「これ着れる!」「このサイズ合う!」とか言いながら拾って、プレゼントにお金が入っていたときだけ本人に返す、高いものが入っていたときだけ本人に返すっていう。

——そこもいちいちちゃんとしてますね。

ダンプ:ちゃんとしてる。だって極悪同盟の鉄則っていうのがあって。「人の悪口を言わない、陰口を言わない、内緒話をしない、時間には遅れない、友達に優しく」だから。

——全然悪くないじゃないですか(笑)。

ダンプ:全然いい人でしょ? みんなに笑われるんだけどね。極悪は時間も守るし、仲間同士の悪口も言わないし、陰口も言わない。ヒールは客には嫌われるけど、人間的には嫌われない人でいようねっていうのが決まりだったから。その反対にクラッシュとかベビーフェイスの人はファンには好かれるけど、人間的には嫌われてたって感じで。その当時は……ってフォローしとかないとね(笑)。

 ちなみにこの後、ダンプさんは、まだ十代で下積みだった長与千種さんが、急にスターになり、お金も貰えるようになったら、勘違いしちゃうのもしょうがないよね、とまで気遣った発言をしているのです。
 いやもうほんと、これ、どこが「極悪」なんだ?という話で。
 「ホントに性格の悪い人がヒールになったら危ない」というのも、頷ける話です。

 これを読んでいると、当時の全女というのは、本当にギリギリのところでやっていた、というか、もうその危険水域をはるかにこえてしまっていたんですよね。

 「松永一族」のひとりであり、全女のレフェリーをつとめていたボブ矢沢さんの回より。

ボブ矢沢:あと北斗晶が首を折っちゃったときも僕がレフェリーやってたんですよ。

——最近、映像を見直して戦慄しましたよ。

矢沢:あれはホントヤバかったですよ。

——何がとんでもないって、北斗さんが完全に首やっちゃったあとも、3本勝負だから試合がふつうに続いていくことなんですよ。

矢沢:そうなんですよ。1本目でいきなり首やったじゃないですか。「ヤバいな、やめようか」って言ったんですよ。そしたら「ボブちゃん、首を引っ張って」言われたんですよ。

——えぇーーーーっ!? その状態の首を!

矢沢:「いいから引っ張って! 大丈夫だから!」って北斗が言って。よく首が詰まって、それを引っ張ってアジャストするっていうのをやるんですけど、さすがにそのときはそのレベルじゃないっていうのはわかりましたから、「いや、これいじらないほうがいいぞ」「いや、最後まで私やるから。いいから引っ張って!」。それでしょうがないからタオル持ってきてガーンッと引っ張って、「どうだ?」「うん……大丈夫、治った!」。

——治るわけないですよ!

矢沢:治ってないですよ全然(笑)。だけど「大丈夫、できるできる!」って、それでふつうに2本目、3本目もやってましたね。

——2本目、3本目でもふつうに首を攻撃されてたから、とんでもない試合だと思って。

矢沢:ホントいつどうなるかと思って。こっちもいつ止めてもいいようにスタンバッてたんですけど、最後までやりましたもんね。

 現在ほど、頭部打撲や頸椎損傷時の対処法が周知されていない時代とはいえ……
 北斗さん、死んでいてもおかしくなかったよね、これ……
 でも、周囲も止められない、鬼気迫るものがあったというのも事実なのでしょう。
 ちなみに、首の骨を折ったあと、さすがの全女の経営陣も北斗晶さんの復帰は難しいだろうと考え、本人にもそう説明したようですが、北斗さんは「何があっても自分の責任だから、会社に迷惑はかけないから」と、半ば強引に復帰したそうです。

 命をだいじに、というのと、命をかけてでも、やりたいことがある、というのと。
 全女のようなプロレスは、これからの時代は成り立たないだろうとは思うのです。
 うーん、でも、こういう「ガチンコ」を見たい、という人も、少なからずいるのだろうな……

 多くの関係者が、それぞれの視点から語った「全日本女子プロレスの栄光と狂気」。
 人それぞれ、自分にとっての「真実」がある。
 かなり読み応えのあるインタビュー集でした。

1993年の女子プロレス (双葉文庫)

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1985年のクラッシュ・ギャルズ

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