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注目の若手芸人"ペンギンズ"が見せる「アニキと舎弟」の奥深さ

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純度の高い「兄弟愛」が放つ美しさとおもしろさ

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言い過ぎておくが、最近テレビに映る人達の中で、ペンギンズがいちばん美しいと思う。ペンギンズは寡黙でヤクザなアニキ、アニキ大好きなチンピラのノブオの二人組だ。もちろん設定された架空のキャラクターではあるが、それでもこんなふうに互いに互いを固く結びあっている人間関係を、2017年の現実世界に探し出すことは、とても途方に暮れるだろう。

今年は日々、四方八方から、人と人の関係のもろさを見せつけられている。昨日まで慕い慕われていた関係だったと思いきや、あくる日、そんな蜜月は微塵も無かったように変わり果てる。その反動も含みつつ、ペンギンズは美しいのだ。

<2017年4月1日放送 「決戦!お笑い有楽城」(ニッポン放送) ペンギンズ ネタ>
ノブオ「きょうはアニキと漫才やらせて頂きやす、笑ってください!(センターから上手に下がって)

アニキ「(ゆっくり登場)」

ノブオ「よっし、アニキ来たぞ、よっしゃよっしゃ」

アニキ「(センターマイクの前へ)・・・・どうも、(ノブオを指して)アロハシャツと、(自分を指して)セクシードレスでやらしてもらってます」

ノブオ「アニキおもしれぇ!アハハ、OKきょうも決まったぞアニキ!よっしゃーOKよっしゃー」

アニキ「ノブオー!」

ノブオ「はい!」

アニキ「今のはボケたんだからツッコむのがスジってもんだろう」

ノブオ「(青ざめて大声で)あぁ、すいませんでしたー!!」

アニキ「・・・・・・・・のど大切にしろよ」

ノブオはこらえようがないほどアニキを慕っている。アニキはそんなノブオを冷静に見つめながらも、常に気にかけている。いったい彼らの人生にどんな過去があったのか、任侠界から芸界に転身し、笑いに挑んでいる。アニキのほうが笑いに一日の長があり、ノブオはアニキにひたすら付いていく関係・・・という設定だ。

<同上より>
ノブオ「(嬉しそうに)アニキ~!」

アニキ「どうしたノブオ」

ノブオ「母の日にかけてあげたい言葉って色々ありやすよね」

アニキ「色々あるなぁ。次は三段オチ、すなわち3つめにボケるから、しっかりツッコめよぉ!」

ノブオ「よっしゃオラ~ッ!」

アニキ「母の日の言葉と言えばまず、お世話になってます」

ノブオ「ひとつめ・・・ふぅふぅ」

アニキ「ありがとう」

ノブオ「ふたつめ・・・ふぅふぅ」

アニキ「・・・・・」

ノブオ「なんでやねーん!(思い切りアニキをツッコむ)よしOK、よしOK、できた、これがツッコミだぞ。できたできた」

アニキ「ノブオ」

ノブオ「はい!」

アニキ「ちなみになんて俺がボケてたか聞こえてたか」

ノブオ「・・・やべえ、えっと、お世話になってます、ありがとう、こんぺいとう?」

アニキ「俺は有賀さつきってボケたんだよ。こんぺいとうだぁ?」

ノブオ「すいません・・・」

アニキ「・・・いただいとくよ」

ノブオ「アニキおもしれえ!ああ良かった」

漫才を通して、アニキの懐の深さ、ノブオのまっすぐな純情が伝わって来る。二人はどこまでもお互いを必要とし、信じあっている。この二人の関係が他者を寄せ付けず、二人だけの世界に閉じれば閉じるほど兄弟愛は純化し、美しさを増していく。「超・共依存」が美しさの核であり、美しくなればなるほど(二人を客観視する我々には)おかしさに転化していく。

ペンギンズ――、現時点ではブルゾンちえみのようなブレイクとまでは言い切れないが、そのネクストステージに位置する、2017年注目の若手芸人だ。まだ結成2年目だが、アニキとノブオ、二人とも芸歴に紆余曲折あり、今や40歳(アニキ)と32歳(ノブオ)の中堅年齢にある。この年齢の積み重ねが彼らのキャラクターに説得力をもたらし、ファンタジーなキャラのまま現実世界に居続けることに、いい折り合いももたらしている。

人間関係が希薄な時代に現れた「アニキと舎弟」ファンタジー

そして、この「アニキとその舎弟」という組み合わせは、別段珍しくない。映画・ドラマ・漫画などでひとつの定型にある設定だ。たとえば・・・、

<60年代>「ハリスの旋風」石田国松&アー坊
「男はつらいよ」渥美清&佐藤蛾次郎

<70年代>「ど根性ガエル」ひろし&五郎、ゴリライモ&モグラ
「傷だらけの天使」萩原健一&水谷豊
「ムー一族」細川俊之&たこ八郎

<80年代>「とんぼ」長渕剛&哀川翔  ・・・etc

古いところかになったが、60年代以前、90年代以降にも目を凝らせば、この「アニキと舎弟」の組み合わせはあるだろう。ある沸点を超えた時、互いに危険をかえりみず、命を賭して身を投げ出す覚悟に裏付けされた親族以上の相互献身がこの関係の主体だ。

だがこの関係は、現・2010年代後半から見返すと前時代的に映る。人と人のつながりが、ほぼデジタルツールで覆われてしまった希薄な時代だから、という、いかにもな理由も添えつつ、これは人が生きる為に親族以上の絆を他人を結ぶ必要があるかどうか、の必要性がその時代にどれほどあるか、という話だ。

遡れば、仏門の師弟や、武士道の御恩奉公あたりを根源に、やがて様式美にもなって脈々と刻まれてきた「アニキと舎弟」の関係は、すでに80年代あたりから現実に無いモノとして相対化され、ファンタジーへと追いやられてきた。

そのファンタジーをペンギンズはまとって現れた。ファンタジーな彼らは始めから「つくりごと」との親和性が高い。その特性は漫才のシメにある「泣き」のパターンで如実に活かされている。

<同上より>
アニキ「じゃあ最後に一発ギャグを」

ノブオ「待ってやした!」

アニキ「♪右手もグーで左手もグーで(こぶし重ねて)雪だるま」

ノブオ「(小声で)アニキおもしれえ・・・」

アニキ「おまえホントはおもしれえと思ってねえだろ」

ノブオ「いや違うすアニキ」 

アニキ「何が違えんだよ」

ノブオ「(すすり泣き)アニキそのギャグ、こないだおれっちが兄貴のために考えてあげたやつっすよね。アニキそのギャグ見たときは、こんなクソつまんねえの絶対やんねえかんなって言ってたのに、今日こんな大事な有楽城の舞台でやってくれたから嬉しくて~。声出なかったんです。アニキすいませんでした」

アニキ「ノブオ~~~」

ノブオ「はい」

アニキ「ルノアール行くぞ~(立ち去る)」

ノブオ「はい!(アニキについていく)」

男と男のメロウは哀しいほどバカバカしい。「ノブオ~、○○行くぞ」は「フレーズ替え」の効くフォーマットとしてすばらしい発見だ。稀に見る完成されたギャグフォーマットだと思う。

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