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「簡素なお葬式」が遺族の後悔を生むワケ

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■葬儀後になぜ? ニーズが高まる「お別れ会」

簡素な葬儀を選択したことによる後悔の念や、葬儀に参列できなかった人の弔意を拾う新しいサービスとして、葬儀とは別に「お別れ会」のニーズが高まっている。

「お別れ会」は、1994年にホテルオークラ東京(東京都港区)が開いた「故人を送る会」が始まりだといわれている。当初は、会社の役員や芸能人など、著名人が開くものとして広まったが、2010年頃には「お別れ会」をプロデュースする葬儀社や企業が全国各地で見られるまでに一般化した。

細かい段取りや礼儀作法などで画一化した葬儀と違い、「お別れ会」は「故人や家族が何がしたいか」「故人はどんな人だったか」がベースにあり、基本的に“ウォンツ(want)”で組み立てられる。葬儀を終え、遺族の気持ちの整理が終わる四十九日や一周忌のタイミングに行う場合が多いため、打ち合わせに十分な時間がかけられるのがメリットだ。「お別れ会」をプロデュースする企業側としては人件費などの負担が大きそうだが、それでも継続的に成長しており、2011年に「お別れナビ」というお別れ会サービスをスタートさせた日比谷花壇は、2016年9月時点で「お別れ会」実施件数が昨年比約1.5倍にまで伸びている。

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祖母との思い出の写真や、手作りの品々が飾られた祭壇(写真提供:鎌倉新書)

2015年11月「お別れ会 Story(ストーリー)」のサービスを立ち上げた鎌倉新書によると、立ち上げ当初は、故人がまだ社会的なつながりがある10~50代が多く、「家族葬はしたけど『お別れ会』も開きたい」という家族からの依頼がほとんどだったという。しかし最近はそれに加え、「故人をしのぶ場を設けたい」という家族以外からの依頼が増えている。

故人が勤めていた会社の同僚や部下、趣味の教室・サークルの生徒や仲間から、「『お別れ会』を開いてもいいですか?」と家族に問い合わせが入るケースが出てきたという。家族や親族ではなく、故人の関係者たちからの働きかけによって「お別れ会」が実現する事例が増えているのは、「お別れ会」や「しのぶことの大切さ」が社会に浸透してきている証しともいえそうだ。

■人生は悲しみだけじゃない。葬儀と「お別れ会」の違い

近年、一部の地域では、葬儀の原点回帰の動きが見られる。

例えば岩手県釜石市では、他の地域と同様、葬儀は「寺院や自宅で行われるもの」から、「葬儀社によるホールで行うもの」に変化した。しかし同市の葬儀社の話によると、再び10年ほど前から徐々に寺院や自宅での葬儀に戻り始め、現在はすっかり逆転してしまっているという。

さらに、長い葬列を組んで墓地までひつぎを運ぶ「野辺の送り」は、かつては日本各地で見られた葬送の儀式だが、現在はほとんどの地域で廃れてしまっていた。ところが最近釜石市では、家族葬を行った場合でも、少ない参列者で短い葬列を組んで、「野辺の送り」を行うケースが増えてきている。

しっかりと時間をとって儀式的なものを行うことにより、人は気持ちの区切りをつける。「お別れ会」が緩やかに広まってきているのは、同じような意味や役割があるためだと考えられる。

「『お別れ会』と葬儀との1番の違いは、『お別れ会は悲しみだけではない』という点です。生と死はつながっていて、故人には人生があります。遺された人にとって、大切な人の死は悲しいことかもしれませんが、その人と過ごした時間には喜怒哀楽があったはずです。遺された人たちが、その人の人生を思い出し、記憶をたどり、もう一度心の中に入れ直して、『さよなら』だけでなく『ありがとう』と感謝を伝える。それが『お別れ会』です」(鎌倉新書)

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野球のグラウンドに見立てた祭壇に、献花ではなく献球を行った(写真提供:鎌倉新書)

■「しのぶ」ことの大切さ

何事も一方に寄りすぎると、揺り戻しが起こる。葬儀の縮小化・簡素化が進み過ぎたが故に、故人をしのぶ意味や大切さが見直されてきた。遺された人の心をケアする「グリーフケア」にも注目が集まっている。葬儀はこれまで、亡くなった人のために行うものとして捉えられてきた。しかし、「お別れ会」の増加は、生きている人にとっても儀式が必要だということが、広く認識されてきた現れともとれる。

人間は、紀元前から弔いを行ってきた。4万年以上前のネアンデルタール人の骨が発掘され、周囲から花粉の化石が見つかっているほどだ。葬儀も「お別れ会」も形が違うだけで、弔う、しのぶという行為自体は、人間の本能的な欲求から来るものなのかもしれない。

(フリーライター・デザイナー 旦木 瑞穂)

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