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「短命内閣世界一」の座を争うイタリアと日本に誕生した「完全民間内閣」と「完全素人内閣」

ユーロ域内第3位、世界第7位の経済大国イタリアで、16日、首相を含む17人の全閣僚が政治家ではないモンティ新政権が発足した。イタリアでは政治家を一切入れない内閣の誕生は有識者のみで組閣したディーニ政権(1995年1月〜96年4月)以来。このディーニ政権の前に政権を担っていたのが第1次ベルルスコーニ内閣(1994年5月〜12月)で、ディーニ政権の主要な課題は年金制度改革であった。ベルルスコーニ政権を引き継いだ「完全民間内閣」のモンティ新政権が、再度年金制度改革などに取り組む構図は、完全に「歴史は繰り返す」というもの。

モンティ「完全民間内閣」が、最初に誕生したディーニ「完全民間内閣」が1995年に取組んだ年金制度改革に、16年経過した今再度取組むというのは、イタリアも日本同様「失われた20年」を過ごしているということ。かつて「おはよう、今日の総理は誰?」というジョークが流行ったほど、首相交代が頻繁な国として名高いイタリア。日本の14人には及ばないものの、1990-2010年の間に誕生した首相は8人(延12人)となっている。モンティ新政権と同様の課題に取組んだディーニ政権は短命に終わったが、こちらも「歴史は繰り返す」ということになるのだろうか。

モンティ新政権に課せられたミッションは、イタリア財政への不安を払拭するため、2013年までに財政収支を確実に黒字化が見込めるという市場を納得させる財政再建策を打ち出し、7%台まで上昇した国債利回りを下げること。

一言で言えば、「荷が重すぎるミッション」。それは、イタリア国債の利回り上昇(価格の下落)は、モンティ「完全民間内閣」の政権担当能力以前の「EFSFの資金不足問題」にあるからである。

ギリシャの突然の「国民投票宣言」によって、EFSFの規模を現在の4,400億ユーロから1兆ユーロ強に拡大する計画は宙に浮いてしまっており、ユーロは財政危機の拡大を防ぐ防波堤が存在しない状態になっている。財政危機の拡大防止にECBが関わることに関しては、ユーロの中心国であるドイツとフランスの間で意見が対立しており、ECBの存在も危機拡大防止には何の役にも立たない状態。

さらにはそのフランスも格下げリスクに晒され始め、EFSFがAAAの格付けで低コストの資金を大量に集めるのが難しくなって来ている。EFSFは今月7日に10年債を起債(発行額30億ユーロ)したが、この起債に関しては、外部からの応募が約27億ユーロしかなく、EFSFが自ら購入を迫られたという疑惑が報じられているほど(EFSF報道官は否定)。こうした中、日本政府は8日、EFSFが7日に追加発行した10年債3億ユーロ(約320億円)を購入したことを明らかにし、気前の良さを示した。

欧州が財政危機の拡大を食い止めるほどの資金力を持っていないことが、市場の不安を煽り、長期国債を中心とした利回りの上昇を引き起している。この国債利回りの上昇は、イタリアの財政にさらなる負担をかけると同時に、金融機関の信用リスクに拍車をかけるという悪循環を生んでいる。

金融機関の信用リスクを食い止めるには銀行の自己資本増強が不可欠であるが、国が資金調達に苦しんでいる中で、金融機関の資金調達が円滑に進む筈はない。金融機関の信用リスクを抑えるために公的資金を投入すれば、国が格下げリスクに晒され、さらなる長期国債の利回り上昇(債券価格の下落)を招く。

このような負のスパイラルにはまってしまっている状況下では、財政再建策の提示だけで市場に立ち向かうのは至難の業である。市場の動揺を抑えるために必要なのは、「完全民間内閣」による耳触りのいい実現性が不確かな財政再建策ではなく、EFSFの強力なスポンサーである。

イタリアの財政再建に必要なのは、年金の受給年齢の引上げと増税である。民意を反映していない「完全民間内閣」による、こうした国民に負担を強いる財政再建策を、国民は受け入れるのだろうか。現実問題としては難しい、と言わざるを得ない。モンティ「完全民間内閣」も、最初の「完全民間内閣」ディーニ政権と同様に短命内閣に終わるのかもしれない。

イタリアと短命政権を争う日本。こちらの「完全素人内閣」も危うい限り。

野田首相は17日の衆院本会議で、TPP参加による国内雇用への影響を巡っては、TPP参加で実質GDPが2.7兆円押し上げられるとの内閣府の試算に言及したうえで、「一般にGDP増加に伴う雇用への波及は期待される」との考えを示した。

この野田総理の発言は、「詭弁」と「無知」「狂気」の3重奏である。

まず「TPP参加で実質GDPが2.7兆円押し上げられる」という内閣府の試算は、「10年間で」というもの。つまり、1年間のGDP押し上げ効果は僅か2,700億円、0.05%程度で、これは「統計上の誤差」の範囲。「統計上の誤差」を10年分積み上げて「実質GDPを2.7兆円押し上げる」と公言するのは、明らかな「詭弁」である。

続いては「一般にGDP増加に伴う雇用への波及は期待される」とする部分。現在世界経済が抱える最大の課題は、「GDPの増加が雇用の増加に繋がらない」ことである。雇用拡大が最大の問題となっている米国では、2010年に実質GDPが3%成長を遂げたにもかかわらず、失業率は9%台で高止まりしたままである。こうした世界経済が抱える問題に気付かずに「一般にGDP増加に伴う雇用への波及は期待される」などと思っているのだとしたら、無知そのものである。

そもそも、469万人とリーマン・ショック後を上回る潜在失業者が存在する日本で、「統計上の誤差」程度の実質GDPの上昇が有効な雇用問題の解決策であるかのような主張をするのは、「経済音痴」を超越した「狂気の沙汰」である。

国内での非難を避けるようにAPEC出発前日に「(TPP)交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と発表し、逃げるようにハワイに向かった野田総理。日米首脳会談で「すべての物品とサービスを交渉のテーブルにのせる」という主旨の「国益」無視発言をして帰国したと思ったら、今度は追求から逃れるように、ASEAN関連の首脳会議などに出席するため、そそくさとバリに向けて出発してしまった。

「短命内閣世界一」を競い続けている日本とイタリア。「完全民間内閣」と「完全素人内閣」のどちらが短命で終わるのだろうか。

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