- 2017年08月18日 11:46
最高値を記録した児童虐待数を減らす方法
2/2【足りないのは、こども版地域包括ケアと予算】
高齢者の領域では、地域包括ケアシステムという、地域で医療・介護・住宅・生活支援が相互に連携しながら高齢者を支えていこう、という発想と仕組みが存在します。
子どもの領域にも、こども版地域包括ケアシステムが必要で、それは保育・教育・医療・福祉・社会的養護が手を繋ぎ、情報を共有し、支援を繋げていく形を創らなければいけません。
しかし、子どもの領域では、一部の構想(地域子育て支援拠点事業等)はあれど、現実には十分落とし込まれてはいません。
その最大の要因は、制度の縦割りと予算です。
各機関がそれぞれ最善を尽くしていますが、子どもの情報を共有したり、定期的に会ってケースを共有する場はないか、あっても機能していない場合が多いです。
そうした業務に専門の職員を置く発想と予算がないためです。
こども版地域包括ケアの中で「こどもソーシャルワーカー」的な役割を担う人材が、地域の関係諸機関をコーディネートし、ケースを共有し、実際の支援メニューを個別にカスタマイズして提案していく。そうした世界になっていくと、地域の連携スキームは動き出していくでしょう。
現在、政府内では「こども保険」等の構想があり、それを主に児童手当に使おうと考えているようですが、現金を配ってもこうした問題は解決しません。
そうではなく、こうした「子どもと親子を守り、支える地域の体制構築」にこそ、こども保険で集められた税金を投下すべきです。
【未来のイメージ】
最後に、予算がしっかりと投下され、こども版地域包括ケアがしっかり機能している架空の世界を描いてみましょう。
涼子さんは5歳の男の子と2歳の女の子を育てていますが、夫のDVによって離婚。1年前にシングルマザーになりました。それまで専業主婦をしていましたが、今は昼間クリーニング屋さんでパートタイムで働きながら、夕方から居酒屋でダブルワークをしています。
近頃、お兄ちゃんが活発になってきたこと、仕事の疲れが慢性的に溜まってきたことから、大声をあげて怒鳴ることが増え、いけないと思いつつも手も出るようになってきました。
保育園の迎えの際に、いつまでも靴を履かないお兄ちゃんに大声をあげて叱ってしまったところを主任保育士さんが発見。立ち話で最近の辛い状況を聞き取りしました。
主任保育士さんは園長に相談し、児童家庭センターのこどもソーシャルワーカーに相談。こどもソーシャルワーカーさんは翌週すぐに保育園まで来てくれて、帰りがけに涼子さんから状況のヒアリングを行いました。
こどもソーシャルワーカーと涼子さんはLINEを交換し、ちょっとしたやりとりを重ねるようになりました。こどもソーシャルワーカーは、土日は子どもと少し離れてゆっくり休めるよう、地域のNPOの休日保育を紹介し、涼子さんはそれを利用することで、少し落ち着いて将来のことを考えられるようになりました。
こどもソーシャルワーカーは、区の住宅課が行なっている、空き家を活用したひとり親向け住宅について、涼子さんに情報提供。家賃がほぼ無料なので、入居することでダブルワークを解消できました。
来年はお兄ちゃんの進学なので、今のうちに区の教育課が行なっている就学援助制度について涼子さんに情報提供し、学用品等は買い揃えることができそうです。
こどもソーシャルワーカーさんは上記の経緯を「こどもデータベース」に入れ込み、小学校の校長先生とスクールソーシャルワーカー等と共有しました。以前は旧個人情報保護法によって、各支援機関がぶつ切りに情報を持っている状況でしたが、現在はそのケースに関わる全ての医療機関・福祉機関・学校・保育園等はデータベースにアクセスすることができます。
こうした施策が功を奏し、児童虐待の通告は一定数あるものの、重篤化するケースは年々減り続け、虐待死は本当に稀になっています。
これも、2010年代後半に、政府が本腰を入れて児童虐待問題に取り組もうと、しっかりと予算をつけ、地域のこども版地域包括ケアの構築に心血を注ぎ始めたからです。でなければ、今でも児童虐待は増え続け、児相はパンクしながら、児相は何をしてるんだ!とマスコミや地域住民から叩かれ続け、そして子どもたちが犠牲になり続けていたでしょう。
そうならなくて、本当に良かったです。



