- 2017年08月17日 17:28
第390回(2017年8月15日)
1/2北朝鮮と米国の言葉の応酬が続く中、戦後72回目の終戦記念日を迎えました。双方の指導者とも挑発的なため、衝動的軍事行動が懸念されます。気になるのは国際情勢だけではありません。日本経済を牽引してきた大企業の決算に対する疑義が晴れません。日本には他にもそういう企業があるのではないかと、世界から疑われています。
1.ザ・ホイッスルブロワーズ
米国の雑誌「タイム」は、毎年新年号の表紙を前年の「パーソンズ・オブ・ザ・イヤー」の写真で飾ります。前年の「話題の人」です。
今から14年前、2003年新年号の写真は腕組みする3人の女性。「ザ・ホイッスルブロワーズ」というタイトルが付されて、「米国の良心を救った女性達」と評されました。
「ホイッスルブロワー」は直訳すれば「笛を吹く人」ですが、英語的には「内部告発者」のことを意味します。
女性のひとりはシェロン・ワトキンス。当時、売上高米国7位であったエネルギー企業エンロンの財務担当幹部。
エンロンは、エネルギー政策の規制緩和の中で天然ガスや電力等を売買できる市場を創設。取引の価格変動リスクをヘッジするデリバティブ商品を開発し、これらを大量販売して事業を急拡大、業績も伸ばしていました。
しかし、これらの商品の会計処理に粉飾的仕組みが利用され、しかも会社の最高財務責任者(CFO)の私的企業が利益を得る仕掛けも駆使されていました。
それを知ったワトキンスは、事業内容と会計処理の是正を促すことを決意。2001年8月22日、会社の最高責任者(CEO)に直訴しました。
会社は密かにワトキンスを解雇することを検討。一方、同年秋、市場がエンロンの業績や取引に疑義を抱くようになり、同社株価は急落。12月2日、エンロンは連邦破産法第11条(チャプター・イレブン)の適用を申請し、倒産しました。
2002年2月14日、ワトキンスは米下院エネルギー商業委員会公聴会に招聘されて証言。そこで初めて自分の解雇が検討されていた事実を知ったそうです。
もうひとりはシンシア・クーパー。エンロン問題が進行していた同じ頃、クーパーは全米2位の通信会社ワールドコムの内部監査部門幹部を務めていました。
1983年に創業したワールドコムは通信自由化、規制緩和の流れの中で商機を掴み、同業他社の買収・合併戦略を積極的に展開。
70社以上の企業を買収。1998年、過去最大の総額400億ドルのM&Aを断行。自社より規模の大きい企業を買収し、AT&Tに次ぐ全米2位の通信会社にのし上がりました。
買収の繰り返しの結果、会計処理が複雑化。実態がよく分からなくなっていました。損金を益金に計上する単純な粉飾決算が行われ、粉飾は雪だるま式に膨張していました。
粉飾に気づいて実態を調べていたクーパーを会社の最高財務責任者(CFO)が恫喝。しかしクーパーは屈せず、2002年6月12日、監査委員会に調査結果を報告しました。
6月25日、CFOは解雇され、翌26日、当時のブッシュ大統領がワールドコム問題に言及せざるを得ないほどの社会問題として急浮上しました。
7月21日、ワールドコムはエンロンと同様にチャプター・イレブン適用を申請し、倒産しました。
その後の調査の結果、ワールドコムでは上司に対して物を言わない、不正に対して目をつぶる「社風」が形成されていたと指摘されています。
3人目はFBI(連邦捜査局)特別捜査官コリーン・ロウリー。2002年5月21日、ロウリーは「9.11同時多発テロ」に関連する書面をFBI長官と米上院情報委員会に提出しました。
「9.11」が起きた2001年当時、ロウリーはミネソタ州ミネアポリスのFBI支局に勤務。「9.11」に先立つ8月中旬、ミネアポリスの航空学校教官がFBI支局にある情報を通報しました。
ザカリア・ムサウイというフランスから入国した男が、8月13日から同航空学校で「着陸の仕方は必要ない。旋回の仕方のみ身につけたい」と申し出て訓練を開始。不審に思った教官がFBI支局に通報したのです。
8月15日、移民帰化局がムサウイを不法残留容疑で強制収容することを決定、フランス当局からムサウイがウサマ・ビンラディンと関係があるとの情報がもたらされ、FBIミネアポリス支局はムサウイをテロリストと疑いました。
ミネアポリス支局はそのことを直ちにFBI本部に報告、ムサウイが保持していたコンピューター等の捜査令状発行の許可を申請しました。
ところが、FBI本部はその情報を黙殺。ムサウイは同姓同名の他人ではないか等々の馬鹿げた質問、重い腰をあげない理由をわざわざ考えるような質問を支局に投げ返し、時間を浪費。
そうこうするうちに9月11日が到来。2機の旅客機がワールドトレードセンタービルに激突。3機目が国防省に突入、4機目がペンシルベニア州に墜落した後に、FBI本部は捜査令状発行を認めました。



