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  • LM-7
  • 2011年04月30日 22:50

原子力発電のコストは本当に安いのか?

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さらに大島教授は原子力政策の財政的裏付け(上記③の費用)として、一般会計エネルギー対策費と特別会計(電源開発促進対策特別会計→2007年度よりエネルギー対策特別会計)を挙げている。エネルギー政策は国策であり、追加的な財政支出がなされたり、電気料金を通じて追加的な負担ができるような措置が取られている。これに関しては自民党政権下で複雑な制度がパッチワーク的に追加されてきたという。大島教授は電源別に計上されている財政資料は存在しないとして、「國の予算」を基礎に可能なかぎり電源別に再集計して発電量で割っている。

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続けて大島教授は、立地対策費用の実に7割は原子力支出であるなど、交付金実績からすれば約7割が原子力向けであるとして、財政支出を加味した電源別費用(単価)の実績を次のように算出している。これは上記①②③の費用の合計となる。原子力が他と比べて突出した手厚い保護をうけているせいで単価が高くなっている(1kWhあたり約2円)。

原子力火力水力一般水力揚水原子力+揚水
1970年代13.577.143.582.7441.2016.40
1980年代13.6113.767.994.5383.4415.60
1990年代10.489.519.614.9351.4712.01
2000年代8.939.027.523.5942.7910.11
1970‐200710.689.907.263.9853.1412.23
※事故の場合の被害額、被害補償額は上記の表には含まれない。


ここで大島教授は次のように小括している。
  • 原子力単体でみた場合であっても、原子力は安価な電源とは言いがたい。
  • 「原子力+揚水」でみれば、最も高い電源である。
  • 電力料金を通じて支払われている電源開発促進税を主財源とする財政費用は、原子力が最も高い。
  • つまり、原子力は、財政的に優遇措置を受け続けてきたと言える。
  • 今後も優遇策を続けるべきかどうかは議論の余地がある。少なくとも、財政からの資金投入を含めて議論すべきである。
これに対する反論としては次のようなものがある(ある環境経済学者の原発コスト分析を考える: ニュースの社会科学的な裏側など)。
  • 原子力と揚水を合わせることには妥当か?
    • 出力調整が行えないのは原子力に限った話ではなく、火力などを始め、太陽光や風力などの再生可能エネルギーも出力調整が行いにくい。ピークシフトのために揚水発電は必要であり、原子力だけにその費用を加算することが妥当かどうかは議論の余地がある。
  • 将来への投資の研究開発費を加算するのは妥当か?
    • 再処理などの将来にかかる費用はともかく、新型炉などの将来への研究開発投資(③の一部)を現在の価格に反映させるのは、指標としての特性を損なうのではないか。政府が再生可能エネルギーや原子力に多大な研究開発投資を行ってきて、多額の補助金を出しているからこそ、現在の単価(太陽光42.0円、風力10.0〜14.0円)が実現できているわけであり、再生可能エネルギーを同様に開発費用や補助金を加算して単価計算したらどうなるか? それらを同一の基準で計算した比較が必要なのではないか?
  • 過去の実績と将来コストを混同しているのではないか?
    • たとえば水力発電所の単価が低いのは黒部ダムなどの過去に建造された大規模ダムの減価償却が済んでいるからであり、今あのようなダムを作ろうとすると短期的に単価を何倍にもするようなコストが発生するはずである。平成23年度の資源・エネルギー関連予算案の概要によれば、エネルギー対策特別会計7,356億円、一般会計(資源エネルギー庁分)128億円のうち、原子力発電推進に割り当てられているのは1,816億円に過ぎず、過去と異なり近年の原子力発電への補助は小さくなっている。このように過去の実績と将来コストは必ずしも同一視できない。トレンドとしてみれば、ほとんど維持費になっている水力発電のコストが横ばいであるのに比較して、原子力発電のコストは年々下がっている。

バックエンド費用



ここで再び原子力2010 [コンセンサス]より発電コストの内訳を見てみよう。
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項目の分け方に若干の差異があるが、図の資本費・運転費及びフロントエンドが①発電に直接要する費用にあたり、全体の85%を占めることが分かる。図の再処理、高レベル廃棄物、その他が②バックエンド費用にあたり15%を占める。③国家からの資金投入は費用外であり、④事故に伴う被害と被害補償費用のために積み立てられている金額はごくわずかだ(後述)。

再処理にかかる費用は発電コストの10%に過ぎないとされているが、絶対金額ではどの程度の値になるのだろうか。次の表は、総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会(2004)「バックエンド事業全般にわたるコスト構造、原子力発電全体の収益性の分析・評価」による②バックエンド費用(ただし廃炉費用については含まれていないようだ)の内訳を記したものだ。
再処理11兆円
返還高レベル放射性廃棄物管理3000億円
返還低レベル放射性廃棄物管理5700億円
高レベル放射性廃棄物輸送1900億円
高レベル放射性廃棄物処分2兆5500億円
TRU廃棄物地層処分8100億円
使用済燃料輸送9200億円
使用済燃料中間貯蔵1兆100億円
MOX燃料加工1兆1900億円
ウラン濃縮工場バックエンド2400億円
合計18兆8800億円

バックエンド費用18.8兆円のうち、再処理事業費用が約11兆円(操業費用約9.5兆円、廃止措置費用約1.6兆円)と大半を占めることが分かる。高レベル放射性廃棄物処分に係る拠出金は約2.6兆円、他の事業は1兆円前後に過ぎない。日本は核燃料サイクル政策を推進することを国の基本的考え方としているが、原子力発電全体の経済性や国民の理解の確保が重要となる。

大島教授はこの費用推計に関しても次のような疑問があるとしている。
  • バックエンド事業の範囲
    • 劣化ウラン・減損ウランの処理は対象外
    • MOX使用済燃料の再処理ないし処分費用は対象外
    • 六ヶ所再処理工場のみ評価(全量再処理する方針を堅持するのであればさらに必要)
    • 高速増殖炉サイクルに関する事業は対象外
  • 費用推計の不確実性
    • 大規模実施事例が世界的にない
    • 高レベル放射性廃棄物、TRU廃棄物地層処分廃棄物の具体的計画がない
    • 人類が生存する期間中、人類に影響が出ないようにするという要求を満たす必要がある
  • 費用推計にあたっての仮定
    • 再処理工場の稼働率を100%と想定している(AREVA社の実績は2007年:56%)。
    • 放射性廃棄物処理費用の妥当性(高レベル放射性廃棄物ガラス固化1本あたり3530万6000円と見積もる→実績(返還高レベル放射性廃棄物の管理費用単価は1億2300万円/本)
  • 資源経済性
    • 得られるMOX燃料:4800tHM(重金属トン)=9000億円程度
    • 再処理費用11兆円+MOX燃料加工1兆9000億円
    • 「リサイクル」費用をリサイクル資源利用者に課さない構造

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