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サルでもわかる配当政策

最近、民衆党幹部の方々の麗しい発言に呼応する形で、配当性向とか内部留保とかのファイナンス用語がネットで話題になっているようです。

そこで、今日は配当政策について解説したいと思います。

まず、会社というものは、お金を貸してくれた銀行とか、社債を買ってくれた人とかの債権者と、資本金を出してくれた株主で成り立っています。
株主と債権者がいたからこそ、会社を作って事業を営むことができたのです。
会社は株主の所有物なので、役員を選んだり、最終利益をどのように処分するかなどの重要なことは株主の会議である株主総会で決定します。
株主全員の意見がそろわない場合は多数決で決まります。

さて、会社の事業内容をまとめているのがバランスシートです。

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バランスシートですが、基本的には右側に必要な資金がどのように調達されたが書いてあって、左側にはそれがどういうふうに使われたかが書いてあります。
左側は自動車会社なら工場などの設備になりますし、航空会社なら飛行機などになりますし、銀行なら貸出先への債権や国債などになります。

会社は左側のアセット・サイドを使ってお金を稼ぐわけですが、どれぐらい稼いだかを毎年報告するものを損益計算書、略してP/Lといいます。

1.売上高(Sales)
 1000億円

2.粗利益(Gross Profit)
 600億円

3.営業利益(EBIT, Earnings Before Interest and Taxes)
 400億円

4.税引き前利益(EBT, Earnings Before Taxes)
 300億円

5.当期利益(Net Income)
 200億円

売上高が実際に商品がどれだけ売れたかです。 それから商品を作るのに必要だった原材料費や工場を稼働させるためのコストを引くと粗利益になります。 その後に営業マンの給料や広告費や様々な経費を引いて営業利益になります。 それから債権者に払う利息を引いて、税引き前利益になります。 最後に国にピンハネ(税金)されて、最終的な利益になります。 この利益が株主のものです。

以上からわかるように、まず取引先にお金を払って、従業員にお金を払って、次にお金を貸してくれた債権者に利子の分のお金を払います。 そして、国がピンハネして、最後が株主というわけです。

つまり、株主の立場が一番弱いのです。 株式会社は株主のものだとよくいいますが、それは法律上の問題だけではありません。 このように一番最後に分け前をもらう株主の利益を、経営者がちゃんと追求していけば、結果として取引先、従業員、債権者、国とみんなハッピーになるから、会社は株主のものだと考えるのがベストなのです。

さて、この当期利益ですけど、これは全て株主のものです。この当期利益は株主の利益を最大化するように使わなければいけません。また、経営者(役員)へのボーナスはここから払われます。 株主は経営者を首にして新しいのにするか、たくさんボーナスを払ってまた頑張ってもらうか決めることができます。たとえば全額配当に回すこともできます。

ここで、配当額と当期利益の比が配当性向(Payout Ratio)で、当期利益のうち配当や役員賞与で支払われなかった分が内部留保(Retained Earnings)です。

一見、全額支払われた方、つまり配当性向100%の方が株主は得のような感じがしますが、それは大きな間違いです。まず、配当の支払いだけを考えると、株主の利益には中立です。

株価1000円の会社が一株当たり50円の配当を支払うとします。この50円は権利確定日の日に株を持っていた人全員に支払われます。権利が無くなる日を権利落ち日といいます。他の条件が同じなら、権利落ち日には株価が50円さがるのです。なぜなら50円の配当がもらえなくなるからです。権利落ち日の前は会社にこの配当予定の50円分の現金がくっついているので、会社の値段、つまり時価総額がこの現金を含んだものになっていますが、権利落ち日以降に株を買った人は、この現金は他の誰かのものになることが決まっているのでその分がちょうど割り引かれるのです。つまり配当をもらう株主は、配当では50円得するけど、株価の下落で50円やられるので差し引きゼロです。株式投資をやっている人ならこの辺は当たり前のことですね。

さて、それでは会社は配当性向をどのように決めるべきなのでしょうか?それはこの会社がこの資金を有効に使えるかどうかで決めるべきなのです。有効に使えるかどうかは世界全体の株式市場のリターンと比べられて判断されます。まあ金利が低い最近ですと5%〜8%ぐらいですかね。

成長著しい分野で、研究開発や設備投資に100億円を投じれば120億円(20%のリターン)ぐらいになりそうなら、配当なんかせずに全て投資すればいいのです。それでも足りなければ増資をして、さらにお金をぶち込めばいいでしょう。また、企業買収によるシナジーでさらに成長できそうなら、配当するよりM&Aにお金を回した方が得でしょう。この投資でもうかった分はもちろん株主のものなので、配当でみすみす投資機会を逃すよりも株主はもうかります。マイクロソフトなどは創業以来2003年まで一度も配当をしませんでした。株主が気にするのはあくまでトータル・リターン(=インカム・ゲイン+キャピタル・ゲイン)であって、経営者がどんどん会社を成長させてくれるなら配当なんか全くいらないのです。

逆にいえば、100億円が101億円ぐらいにしかならないなら、全部配当してくれという話になります。1%程度のリターンなら、株主が自分でインデックス・ファンドを買ったり、国債を買った方がましですから、当たり前です。

ところで、この内部留保は利益を上げている会社なら会計上毎年毎年積み上がっていきますが、それはバランスシートの左側の工場とかになっているので、そのまま現金で溜まっているわけではありません。当たり前ですが。

まあ、今、説明したことが、配当政策の基本なのですが、日本では・・・という話をはじめると長くなるので、それはまた次の機会に。

参考文献

内部留保、wikipedia
政治家のみなさんに向けた会計の初歩の初歩、isologue
MBAバリュエーション、森生明画像を見る
実践 コーポレート・ファイナンス―企業価値を高める戦略的財務、高橋文郎画像を見る
グロービスMBAファイナンス、グロービス経営大学院

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