- 2017年08月12日 11:15
嫌味たっぷり"朝日社説"を産経は嗤えるか
1/2(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)
社説には新聞社の「スタンス」があらわれる。だがこれほど両極端に分かれることは珍しい。2017年版の防衛白書公表について触れた各紙の社説で、朝日新聞が陸上自衛隊の「日報隠蔽問題」を取り上げた一方で、産経新聞と読売新聞は「北朝鮮の脅威」を強く訴える内容だった。産経と読売は日報隠蔽問題にはひと言も触れていない。それでいいのか。ジャーナリストの沙鴎一歩氏が問う――。■嫌味たっぷりに「また隠すのですか」
今回は2017年版の防衛白書についての各紙社説を読み比べたい。
8月9日付の朝日社説は嫌味たっぷりに「また隠すのですか」との見出しを付けている。この嫌味が朝日らしいのだが、そこを好む読者と嫌う読者がいるから実に面白い。書き出しは次の通りだ。
「1年間の防衛省・自衛隊をめぐるできごとや日本の防衛政策の方向性を国内外に示す。それが防衛白書の目的である」
「ところが驚いたことに、きのうの閣議で報告された2017年版の防衛白書からは、重大な事案が抜け落ちている」
「南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣した陸上自衛隊の『日報』についての記述が一切ないのだ」
「重大な事案が抜け落ちている」と指摘して読み手を引き込んでから日報隠蔽の問題を挙げる。うまい書き方である。
■白書の表現を逆手に取る朝日
続けて朝日社説は、白書に日報隠蔽問題を入れる必要性を主張したうえで、「そもそも日報隠蔽の狙いは何だったか」と日報隠蔽問題が起きた事情や背景まで掘り下げる。
「日報は昨年7月、首都ジュバでの激しい『戦闘』を生々しく報告していた。だが、稲田氏(稲田朋美・元防衛相)らはこれを『衝突』と言い換え、PKO参加5原則は維持されていると強弁した」
「陸自派遣を継続し、安全保障関連法に基づく『駆けつけ警護』などの新任務を付与したい――。日報隠蔽の背景には、そんな政権の思惑があった」
そのうえで「白書は当時のジュバで『発砲事案』『激しい銃撃戦』が発生したと記した。一方で『戦闘』の記述はなく、日報の存在にもふれていない」と指摘する。
朝日社説は最後に白書の表現を逆手に取って筆を置く。
「白書は北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威や、中国の海洋進出の活発化への懸念を強調した。自衛隊の任務遂行には国民の理解と信頼が欠かせないという指摘はその通りだ」
「ならばこそ、不都合な事実を隠しているとの疑念を招いてはならない。白書だけでなく、防衛省・自衛隊に対する国民の信頼を傷つける」
■余裕と幅のない産経社説の主張
朝日社説のように嫌味や逆手に取ることがなく、ひたすら「敵基地攻撃能力」の導入を主張するのは、産経の社説(9日付)である。
書き方に工夫がない半面、書き手の実直さが伝わってくる。ただその主張自体に余裕と幅がない。これが産経社説の最大の欠点である。そこが好きで購読している読者もいるようだが、そうした読者は多くはないようだ。だから部数が伸びずに低迷を繰り返していると聞く。
そんな産経社説は公表された防衛白書をもとにこう書く。
「もはや、政権への風向きなどを気にして、ためらういとまはない」
「安倍晋三首相は敵基地攻撃能力の自衛隊導入を決断し、小野寺五典防衛相に対して具体的検討を指示してもらいたい」
「国民を守るためには、弾道ミサイルを迎撃するシステムの強化だけでは不十分だ。日本をねらうミサイルの発射拠点や装置をたたく能力を自ら保有すべきである」
果たして産経社説の主張のように「敵基地攻撃能力」によって北朝鮮の脅威が消えてなくなるのだろうか。この沙鴎一歩には大きな疑問である。
なぜならば、日本が戦力を強化すればするほど、北朝鮮は強く反発するだろう。「目には目を、歯には歯を」では悲惨な戦争を繰り返すだけである。抑止力で留まっていればいいが、一線を越える危険は常にある。最後は核戦争になる。日本の戦力強化には、いまだ日本を敗戦国扱いにする中国やロシアも黙っていないはずだ。
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