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労働市場改革の経済学 ―正社員保護主義の終わり― 八代尚宏

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この本は、現代の日本が抱える歪な労働市場とそれを改革するための処方箋をとてもわかりやすく解説しています。

そもそも日本の終身雇用は、高度経済成長期のように所得も人口もどんどん増えている状況では、会社にも労働者にも合理的な仕組みでした。
アメリカの会社などは、3年おきにみんな転職したりします。
その会社の仕事を覚えるのに半年ぐらいは時間がかかるし、次の会社に行くための転職活動にも半年ぐらい時間がかかるので、3年ごとに会社を辞めていては、社員は3分の1の時間を会社のためにならないことに使っているといってもいいでしょう。
その点、終身雇用で社員がずっと同じ会社で働く方が効率がいいともいえます。
また、会社と社員の運命が一蓮托生なら、会社は社員を信用できます。
(こういうべったりの関係は企業の不正を起こしやすいという悪いこともありますけど)
アメリカの会社では、社員はちょっといいオファーがあるとすぐにライバル会社に転職するので、会社はまったく社員を信用できません。

よってアメリカの会社ではいろいろな仕組みが社員性悪説にもとづいて作られています。
まあ、最近、いろいろ批判されている終身雇用ですが、それなりに経済合理的なこともありますし、だからこそ、まだ日本の大企業では残っているのでしょう。

しかし、日本の経済成長が止まり人口が減少し始めた結果、日本の終身雇用とそれをよい雇用だとして作られた法制度が、日本経済にどうしようもない閉塞感をもたらすことになってしまったのです。
また、現代のように経済環境が激しく変化する時代では、労働者が成長産業に次々に移っていく社会の方が、やはり活力も生まれ豊かになっていくでしょう。
この点でも、日本の硬直した労働市場は不利です。

日本の企業はすでにいる正社員を解雇できませんし給料を下げることも非常に困難なので、利益が増えなくなってくると新卒の採用を減らしたり中止したりして人件費を抑えるしか方法がなくなります。
日本の非常に強い解雇規制は、実は新卒の求職者にもっとも不利な仕組みなのです。
また、景気がよくなっても、会社は正社員は大きなリスクがあるとわかっているので、派遣社員や契約社員でカバーすることになります。

最近は、これらの労働形態も民主党によって規制されようとしているので、そうなると大企業は海外にどんどん生産拠点を移すことになるでしょう。
その結果どうなるでしょうか?
日本には少ない正社員が長時間労働で死にそうな反面、ひまで死にそうな若年層の失業者があふれることになります。
若年層の労働者を企業が雇わなくなると、若年層の技能が高まらないので、日本はずっと低い技能の労働者を大量に抱えていくことになってしまいます。

また正社員と非正規社員の格差ですが、労働市場が正常に機能していたら、派遣社員や有期契約の社員は景気が悪くなったときに企業が人件費を圧縮するために、契約更新をしないという形でレイオフできるのだから、その分のリスクプレミアムがあるので、解雇できない正社員よりも給料が高くないといけません。

それに同一労働同一賃金とよくいいますが、これをたとえば「同じ業務なら同じ給料を払わなければいけない」なんていう法律をつくって規制することは馬鹿げています。
労働市場が流動化して正常に機能すれば、労働者の賃金はマーケットでフェアに決まっていくからです。
同一労働同一賃金を実現したかったら、硬直しきった労働規制を改革することが一番なのです。


やはり、絶対解雇できないというような今の法制度を改めて、企業が何か月分の給料を支払えばある程度は解雇できるというように労働者の権利も守りつつ規制を緩和して、さらに失業保険や職業訓練などのセーフティーネットを充実させるという方向にもっていかないとダメでしょう。
公務員や官僚の労働市場の流動化も絶対必要ですね。

日本の労働市場がもっと流動化すれば、今の日本社会、特に若者に蔓延している閉塞感がなくなり、みんなが生き生きと働けるのだろうと想像してしまいますね。
一度レールから外れても何度でもチャレンジできる仕組みの方が精神衛生上いいと思いますね。

しかし、この本、民主党議員は必読ですね。
この本を読んで「日本の労働問題」というお題で簡単なレポートをまとめてくるのを民主党議員の冬休みの宿題にしたいと思います。

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