記事
- 2011年07月30日 02:05
世界では原発のシビア・アクシデントの後に脱原発が進んだのか?
「アメリカではスリーマイル島原発事故以来、一基も原発が作られていない。あのアメリカでさえ脱原発をしたのだから日本も脱原発をするしかない」というようなことがよくいわれますが、これは事実に反しています。たしかにアメリカに原発が何基あるのか、と聞かれれば答えは104基で、スリーマイル島の原発事故以来増えていません。しかし実質的な原子力の中身を見ると、全く違う事実が見えてきます。
下の図は、アメリカの原子力発電所の年間の発電量の推移です。
画像を見る
出所: 米国原子力エネルギー協会
実は、アメリカではスリーマイル島原発事故以来、100万kW級の原発でいうと、なんと50基分の原発の新規建設に匹敵するパワーアップを実施しているのです。既存の原発を改造したり、最新の設備に更新したりして、次々と出力の増強をしました。また、原発の経済性を決める最も重要なファクターである稼働率を、地道な努力により、1970年代は6割程度だったものを9割まで引き上げているのです。日本の原発の稼働率は、3・11以前でも6割程度で、アメリカや韓国などの電気代が安い国に大きく負けていました。定期点検を短縮したり、より効率的に保守作業を実施して、9割程度まで稼働率を引き上げるのは、世界の常識なのです。また原発の耐用年数も40年から60年に引き延ばしています。
そもそもアメリカで新規の原子力発電所が建設されなかったのは、放射能漏れ事故というよりも、1980年代は化石燃料が非常に安かったからです。火力の方が安かったので、わざわざ政治的なリスクの高い原発を新規に建設する必要がなかったのです。ところが、ここ数年、アメリカも積極的に新規に原発を建設する計画を発表しています。これも地球温暖化などの環境問題というよりは、この数年の間に化石燃料価格が数倍に跳ね上がったからです。エネルギー産業も実は市場原理で動いています。
ところで、史上最悪のチェルノブイリ原発事故を引き起こしたウクライナはどうでしょうか? 実はウクライナは非常に積極的に原発を推進ています。事故が起こった1986年当時は20%弱しかなかった原子力の比率は、今や50%に達しています。新しい原発の建設も順調に進んでいます。そもそも途上国で、50年に一回ぐらいシビア・アクシデントが発生して、その結果、最悪の場合、癌になる確率が何十年後に0.うん%上がるかもしれないなんていうものをリスクとは呼びません。放射能ホラーを怖がるのは、豊かな国の贅沢なのです。
僕は、もともと日本で政治的なコストが高い新規の原発の建設など必要ないと思っていましたので、今後、新たな自治体に原発を建設することができなくなったとしても何の問題もないでしょう。日本はすでに全国に54基も原発があり、それらをアメリカのようにパワーアップさせ、稼働率を9割まで引き上げれば、何の問題もなく電力の原子力比率を5割程度まで引き上げて、二酸化炭素の排出を押さえることが可能になります。また、そもそも脱原発というのは、合理的ではないので、もう少ししたらあまり話題にもならないんじゃないかと思います。
なぜ合理的ではないかというと、脱原発をすると、日本は貧乏になり、さらに危険も高まるからです。トレードオフでもなんでもありません。悪いことばかりです。また、民主党の中でも、脱原発などとアホなことをいっているのは菅直人ぐらいで、自民党・公明党も現状維持派です。そもそも財界や官僚組織で、脱原発なんて本気でいっている人はほとんどいません。ビジネスマンの多くも、脱原発がいいこととは思っていません。証券業界では、電力会社のアナリストは、原発停止の決算へのインパクトを必死で計算していますが、原発が停止して安全性が高まったなんていったら、頭がおかしくなったと思われるでしょう。
3・11以後の原発立地県の選挙では、脱原発派は全敗です。3・11直後に「原発推進、日本は核武装するべき」なんていい切った石原慎太郎は、都知事選圧勝でした。菅直人が一発逆転を狙った「原発ゼロ社会」演説の直後に、内閣支持率は急落しました。
原子力政策に関しては、なんだかんだいって、現状維持というのが、僕の予想ですね。庶民も来年あたりの電気代の請求書を見て、すっかり脱原発なんてアホなことだと気がつくのではないでしょうか。
原子力発電がよくわかる本、榎本聰明
激化する国際原子力商戦―その市場と競争力の分析、村上朋子
Nuclear Power in Ukraine, World Nuclear Association
下の図は、アメリカの原子力発電所の年間の発電量の推移です。
画像を見る
出所: 米国原子力エネルギー協会
実は、アメリカではスリーマイル島原発事故以来、100万kW級の原発でいうと、なんと50基分の原発の新規建設に匹敵するパワーアップを実施しているのです。既存の原発を改造したり、最新の設備に更新したりして、次々と出力の増強をしました。また、原発の経済性を決める最も重要なファクターである稼働率を、地道な努力により、1970年代は6割程度だったものを9割まで引き上げているのです。日本の原発の稼働率は、3・11以前でも6割程度で、アメリカや韓国などの電気代が安い国に大きく負けていました。定期点検を短縮したり、より効率的に保守作業を実施して、9割程度まで稼働率を引き上げるのは、世界の常識なのです。また原発の耐用年数も40年から60年に引き延ばしています。
そもそもアメリカで新規の原子力発電所が建設されなかったのは、放射能漏れ事故というよりも、1980年代は化石燃料が非常に安かったからです。火力の方が安かったので、わざわざ政治的なリスクの高い原発を新規に建設する必要がなかったのです。ところが、ここ数年、アメリカも積極的に新規に原発を建設する計画を発表しています。これも地球温暖化などの環境問題というよりは、この数年の間に化石燃料価格が数倍に跳ね上がったからです。エネルギー産業も実は市場原理で動いています。
ところで、史上最悪のチェルノブイリ原発事故を引き起こしたウクライナはどうでしょうか? 実はウクライナは非常に積極的に原発を推進ています。事故が起こった1986年当時は20%弱しかなかった原子力の比率は、今や50%に達しています。新しい原発の建設も順調に進んでいます。そもそも途上国で、50年に一回ぐらいシビア・アクシデントが発生して、その結果、最悪の場合、癌になる確率が何十年後に0.うん%上がるかもしれないなんていうものをリスクとは呼びません。放射能ホラーを怖がるのは、豊かな国の贅沢なのです。
僕は、もともと日本で政治的なコストが高い新規の原発の建設など必要ないと思っていましたので、今後、新たな自治体に原発を建設することができなくなったとしても何の問題もないでしょう。日本はすでに全国に54基も原発があり、それらをアメリカのようにパワーアップさせ、稼働率を9割まで引き上げれば、何の問題もなく電力の原子力比率を5割程度まで引き上げて、二酸化炭素の排出を押さえることが可能になります。また、そもそも脱原発というのは、合理的ではないので、もう少ししたらあまり話題にもならないんじゃないかと思います。
なぜ合理的ではないかというと、脱原発をすると、日本は貧乏になり、さらに危険も高まるからです。トレードオフでもなんでもありません。悪いことばかりです。また、民主党の中でも、脱原発などとアホなことをいっているのは菅直人ぐらいで、自民党・公明党も現状維持派です。そもそも財界や官僚組織で、脱原発なんて本気でいっている人はほとんどいません。ビジネスマンの多くも、脱原発がいいこととは思っていません。証券業界では、電力会社のアナリストは、原発停止の決算へのインパクトを必死で計算していますが、原発が停止して安全性が高まったなんていったら、頭がおかしくなったと思われるでしょう。
3・11以後の原発立地県の選挙では、脱原発派は全敗です。3・11直後に「原発推進、日本は核武装するべき」なんていい切った石原慎太郎は、都知事選圧勝でした。菅直人が一発逆転を狙った「原発ゼロ社会」演説の直後に、内閣支持率は急落しました。
原子力政策に関しては、なんだかんだいって、現状維持というのが、僕の予想ですね。庶民も来年あたりの電気代の請求書を見て、すっかり脱原発なんてアホなことだと気がつくのではないでしょうか。
参考資料
原子力発電がよくわかる本、榎本聰明
激化する国際原子力商戦―その市場と競争力の分析、村上朋子
Nuclear Power in Ukraine, World Nuclear Association