- 2017年08月09日 10:00
内閣改造"半本社説"にとどめた朝日の嫌味
2/2■「堅実な布陣」と評価する読売新聞
朝日社説以外の全国紙は、いずれも大きな1本社説で内閣改造を書いている。だがいずれの社説も総花的である。はっきりいって面白くない。
たとえば読売新聞の社説。「『経済優先』で原点回帰せよ」との主見出しを掲げ、こう書き出す。
「かつてない逆風の中での再出発である。『人心一新』によって、国民の不信感を払拭(ふっしょく)するという安易な期待は禁物だ」
「様々な政策を前に進めて着実に結果を出す。それが信頼回復を図る唯一の道である」
「第3次安倍・第3次改造内閣が発足した。麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官ら5閣僚が留任し、内閣の骨格は維持した」
「即戦力の閣僚経験者7人を再入閣させる一方、初入閣は6人にとどめ、堅実な布陣としたのは妥当だ。政策面で成果を上げるには、政権基盤の安定が前提となる」
「逆風の中での再出発」や「安易な期待は禁物」は問題ないだろう。だが、「堅実な布陣としたのは妥当だ」と評価するところなどは、「このまま説明責任を果たさないなら『疑惑隠し』の改造と言うしかない」と批判する朝日社説と対照的である。「保守の読売」対「革新の朝日」という旧来の構図そのままだ。
■最大のサプライズは「河野外相」のはず
さらに読売社説は「安倍首相は記者会見で『最優先すべきは経済の再生だ。アベノミクスを加速させたい』と強調した。新内閣について『結果本位の仕事人内閣だ』とも語った」と書いたうえで、こう安倍内閣の方針を評価する。
「経済政策を最優先する首相の方針は当然だ。2012年12月の第2次安倍政権の発足時に掲げた『デフレ脱却』は依然、道半ばにある。景気は緩やかに回復しているものの、安定した成長軌道には至っていない」
アベノミクスの行き詰まりが指摘されて久しい。それにもかかわらず、「アベノミクスを加速させたい」と主張する安倍首相を褒めたたえるのはいかがなものか。だから「読売は安倍政権を擁護する新聞だ」と非難されるのである。
改造内閣での最大のポイントは、河野太郎氏の外相起用である。それは何よりのサプライズだった。少なくとも沙鴎一歩はそう受け止めた。河野氏は、元衆院議長でハト派の代表格といわれる河野洋平氏の長男だ。洋平氏と安倍首相とは政治信条が大きく違う。
しかし読売社説は「外相には、河野太郎・前国家公安委員長が起用された。途上国援助の削減が持論で、外交手腕は未知数だ。6日からの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会議で早速、真価が試されよう」と書いただけだった。
■北朝鮮好きな産経は「敵基地攻撃能力」を主張
読売と同じ保守系の産経新聞の社説は、「北の脅威から国民を守り抜け」とのサブ見出しを付けて次のように論を展開する。
「喫緊の課題として、安倍政権がさらに力を入れるべきは、北朝鮮にいかに対処するかである」
「核開発を進め、大陸間弾道ミサイル(ICBM)などを日本の排他的経済水域(EEZ)へ撃ち込んでくる。脅威の度合いは格段に増している。戦後最大級の国難に直面していることを自覚しなければならない。日本に対する軍事攻撃さえ懸念すべき状況にある。防衛相経験者の小野寺五典氏を再び起用したのは妥当だろう」
北朝鮮問題が最大の課題ということには沙鴎一歩も賛成である。だたし「小野寺五典氏を再び起用したのは妥当」とまで評価できるだろうか。少しばかり論がゆがんでいないだろうか。
「具体的に何をすべきか。それは防衛体制の抜本的強化にほかならない。弾薬の備蓄増は自衛隊の抑止力を高める。これまでも合憲とされながら見送られてきた敵基地攻撃能力の保有を決断し、整備を急ぐ必要もある」
「敵基地攻撃能力の保有」とまで主張するところなどは、“右翼新聞”とまでいわれる産経らしいと指摘されても仕方がないだろう。
■「圧力」で核・ミサイル戦力を放棄させられるか?
「河野太郎外相は『国民の平和、安全を守る』と語った。ならば国際社会とともに最大限の圧力を北朝鮮にかけ、核・ミサイル戦力を放棄させなければならない」
北朝鮮は「最大限の圧力」によって核・ミサイルの開発を中止するような国ではない。産経もそのことは承知のはず。それなのにここで「最大限の圧力」を持ち出すのは、読者を欺いている。
最後にひと言。朝日社説も含め、全国紙の社説はどれも、今後の政治の最大の焦点になる政界再編成について触れていない。安倍改造内閣の発足からわずか4日後の8月7日には、小池百合子都知事に近い衆院議員が「日本ファーストの会」の設立を発表している。それなのに改造内閣の社説では政界再編を示唆する言及がなかった。読者は不満をもっているはずだ。猛省をうながしたい。
(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)
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