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起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと、磯崎哲也

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ちまたでたくさん出版されている「起業本」の多くが自己啓発の類です。これらの本は、サラリーマンを辞める勇気をひたすら賛美し、自分の力で会社を起こすことがどれほど素晴らしいのかということを、とうとうと書いています。はっきりいって、それを大きなお世話といいます。

勝間和代のいうことを真に受けて、断る力画像を見るを発揮して会社で嫌われ、居心地が悪くなって、会社に人生を預けるのは馬鹿らしい画像を見ると思い、上司に辞表を叩きつければ、ほとんどの場合、現状より困窮した生活が待っています。確かに、我々は他人に迷惑をかけなければ基本的には何をやってもいいという、すばらしい自由の国、すばらしい資本主義の国に住んでいます。しかし、多くの人にとって、その自由って「会社を辞めてもっと貧乏になる自由」に過ぎません。残念ながら。僕たちはお金を稼がないことには生活できないのですから。

確かにすぐに金銭的な報酬を得られるような金になるスキルを持っている人もいます。50人に1人ぐらいでしょうか。こういう人は嫌な上司やおかしな会社にがまんせずに、嫌だったらすぐに辞めればいいでしょう。社会的強者です。しかしそんな社会的強者は会社でも大事に扱われることが多く、どこにでもいけるがゆえに、逆説的ですが会社がそんなに居心地の悪い場所ではなくなりますし、報酬も「独立して自分で稼ぐ方がもっと稼げるかもしれないけど、リスクを考えたら今のところで働いててもいいかな」と思えるぐらいの絶妙なところに不思議なことに落ち着くものです。自己啓発的な起業本を読んで、なんか自分がすごいことをできるんじゃないかと勘違いしている人たち、つまりカツマーみたいな人たちは、勝間和代のような社会的強者ではない確率が極めて高い人たちですから、皮肉なことにカツマーが勝間和代の話を真に受けると大変なことになります。

日本は形式的には資本主義国家ですが、実態はかなり左寄りの社会主義国家といってもいい国ですから、いったん大企業の正社員になるとそうそう首になるものではありません。社会的地位も高い。端的にいって合コンでもてる。(僕は合コンに行ったことが過去数年間まったくありませんが)

あなたが社会的強者でないなら、そういう椅子にしっかりとしがみついた方がいい。いや、社会的強者であったとしてもです。

しかし自分で会社を起こして新しい事業をはじめるというのは、まことにロマンを掻き立てるものでありまして、もちろん僕もそれを否定するつもりは毛頭もありません。むしろ僕もそのロマンに煽られて、ふつうのサラリーマン以上のことをいろいろとやっており、いくら出世しても永久に「中間管理職」というサラリーマン人生の虚しさというものを人一倍感じているひとりの男でもあります。それにいくら高給の外資系サラリーマンでも、給料を受け取るサラリーマンが金持ちになるということはほとんど不可能でして、やはり金持ちになるにはまとまったエクイティを握る人間になる必要があるわけです。つまり資本家です。資本主義社会ですから、やはり資本家になるのが金持ちになる一番の近道のようです。だから僕も上でさんざん馬鹿にした「自己啓発的な」起業本を山ほど読んでしまいました。

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