- 2017年08月08日 14:37
働き方改革は「休み方改革」だ。労働時間を減らすより、個人が休みを実感できる方が大事──星野佳路×青野慶久
2/3プレミアムフライデーは間違い、ゴールデンウィークは地域別に分けて取るべき
休みを分散させることが大事なら、プレミアムフライデーで「月末金曜日はみんな15時に帰りましょう!」とやっているのは、星野さんの考えとは逆ですか?
完全に逆ですね。休みの集中をさらに煽るだけです。同じ意味で、わたしは「ゴールデンウィークは地域別に分けて取るべき」と提唱しています。
日本中で同じ時期に休むのではなく、地域ごとに休みの日をずらそうと。
反対する人がいるんですけど、理由を聞くとおもしろくて。自動車関連企業だと「部品メーカーが東北で、組み立ては東海地方。休みがずれたら大変じゃないか」と言うわけです。でも、「部品の何割が海外製ですか? 海外の休日は日本と同じですか?」と聞くと、「5、6割は海外製だが、そこは事前に計画に組み込まれていて問題はない」と言うんです。
おかしな話ですね(笑)。海外とは休みやルールが違ってもやりとりできるのに、国内はだめだと。
銀行も「祝日が違うと、引き落としや振り込みの手数料が違うから大変」と言うんですが、そこもプログラムで設定しておけば解決できますよね。なんとなく不安なだけで、いざスタートすれば、うまくいくはずなんですよ。
「ルールを変えることがなんとなく不安」っていうの、ありますよね。

経済的視点から考えても、いっせいに休みを取ることは、メリットよりもロスのほうが大きいというのが私の持論です。星野リゾートにとっても、休みを分散してくれれば、施設利用者の満足度も高くなるし、新たな時期の需要にもつながる。
ピークを分散させると、施設を効率よく使えるんですね。
弊社の話だけではなく、例えば昼食の時間もそうですよね。都市部は12時~13時の1時間に多くの人がランチを食べることになっている。でも、昼食を取る時間を11時~、12時~、13時~と分けるだけで、必要なキャパシティは3分の1でよくなるはず。すごくもったいないことをしているなと思います。
通勤電車もそうですね。朝、通勤のピークに合わせてたくさんの電車を走らせるのは大変です。乗客にとっても、蒸し暑い中ぎゅうぎゅうにされて、特に夏場はそれだけで朝から疲れてしまう。サイボウズではいっそのこと定時出勤を廃止にしようか、と言っているぐらいです。
電車でぎゅうぎゅう詰めにされるストレスや、疲労による経済的損失はすごく大きいはず。やはり、さまざまなピークをずらし、分散させていくことが大事です。昼食や通勤の時間をずらすのもひとつの「働き方改革」だと思います。
ちなみに、東京にある星野リゾートの本社オフィスも機能を「分散」させているんですよ。この部屋は、平日は会議室として使用していますが、土日はブライダルの説明会会場や、新卒リクルートの会社説明会に使っています。それぞれの需要のある時間や曜日が分散しているので、すごく効率がいいんです。
平日は農作業、土日はブライダル。日本に眠る「地域×働き方改革」の可能性
働き方改革だって、日本全国一律にしなくても、地域ごとに違っていてもいいんじゃないですかね。沖縄と北海道では条件がまったく違いますし、弊社に関係あるところでいうと、例えば観光シーズンが違う。せっかく、日本ほど地方ごとに観光地としての魅力が分かれている国ってめずらしいのに。
え、そうなんですか? むしろ画一的なのかと思っていました。
国土が南北に縦長な分、北と南では気候もだいぶ違います。地域ごとに食べものや言葉、歴史、文化がこれだけ違う国って、なかなかないですよ。
そうか。確かに、山側か海側か、日本海側か太平洋側かでもだいぶ変わってきますね。
星野リゾートの社員も地域ごとに特色があって、季節によって働き方も変わります。「スキーが趣味なので、冬はウインターリゾートの雪山で働きたい!」とか「実家が農家なので繁忙期は手伝いたい」とか。
すると、例えば、平日は農作業をやって、土日だけブライダルの手伝いに来てもらうこともできる。また、春先から秋口にかけてのブライダルや農作業の繁忙シーズンと、冬から春にかけてのウインターリゾートの繁忙期は、見事にずれるわけです。そんな風に、季節ごとに働く場所を変える契約の正社員もたくさんいるんですよ。
青野慶久(あおの・よしひさ)。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立した。2005年4月には代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し、離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得している。2011年からは、事業のクラウド化を推進。総務省ワークスタイル変革プロジェクトの外部アドバイザーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)。
星野リゾートさんと言えば、社員のマルチタスクオペレーション(※注1)が有名ですが、そこまで許容されているんですね。おもしろい。
注1:マルチタスクタスクオペレーション=1人の社員が、1日の業務時間の中で、フロント、清掃、レストラン業務などを兼務しながら少数精鋭で働くシステム
気候や条件の違う働く場所が複数あれば、さまざまな趣味や事情をもつ社員たちが活躍しやすい。社員も好きなことができるし、会社としても毎年違うスタッフを雇って一から教育というような採用費も教育コストもかけずに済む。お互いにメリットがあるわけです。
働く場所を一カ所だけと考えるとそこの季節だけしか関係ありませんが、日本全国に働く場所があると考えると趣味の幅も広がるし、生き方も変わりそうです。
星野リゾートの社員は、いろいろな趣味を持っていますよ。スキーをやる人もいれば、サーフィンが好きな人もいるし、渓流釣りをしたい人もいるし、山登りをしたい人もいる。つくづく、日本って地域ごとにいろいろ魅力があるなと感じます。
日本全国にいろいろな観光資源があって、見どころの季節もそれぞれ違うんだから、みんなが同じタイミングで長期休みを取るなんてもったいないですね。
そうなんです。さらに、日本は交通インフラもすごくいい条件が整っているんですよ。飛行場だけで約100施設ありますから。今は東京と大阪などの一部を除くと、キャパが余っていてもったいない。せっかく莫大なお金を投資して造ったわけですから、活用したいですね。
飛行場にも集中が起きていると。そこでもやはり、改革のキーワードは「分散」ですね。



