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六本木に関するむちゃくちゃな記事を見つけたので訂正しておきます

「ガイジン地獄」六本木へようこそ、レジス・アルノー、Newsweek


このブログは知らず知らずの間にかなりの読者を抱え、ここ1、2年は金融・経済の話題にある程度絞って書いていたのですが、今日おかしな記事をNewsweekという大きなメディアで見つけたので訂正しておきます。

六本木という町は、僕は実際に住み、そこで働き、また仕事の後も多くの時間を過ごした、おそらく人生で一番長く関わった、そして今も関わっている町です。だからこの数年の六本木という町の変化には僕も大変憂いているのですが、この記事には大きな事実誤認がたくさんあります。
かつてこの街にあった無邪気さは、シニシズムに取って代わられた。六本木交差点の辺りで立ち止まれば、ストリップを見ないかと誘う客引きの男や、フェラチオや路上セックスを堂々と持ち掛けるアジア系の売春婦がひっきりなしに寄ってくる。通りにはフライドチキンや油やハンバーガーの臭いが漂い、あちこちのクラブで麻薬が半ば公然と売られている。

僕は六本木で売春婦や麻薬の売人に会ったことは一度もありません。少なくとも積極的にそういったものを求めない限り、向こうから営業してくるということは六本木ではありません。その点でこの記事はかなり事実誤認があると思います。実際に、ロンドンの人気クラブなんて行くと、麻薬をやっている人は結構簡単に見つかるし、パリなんて売春婦がたくさんいるのですが、六本木は少なくとも表立ってはそういったものをほとんどみつけることができません。ニューヨークもいっしょで、警察が麻薬や売春をかなり厳しく取り締まっているので、積極的に求めない限り、目につくものではありません。そういう意味で、六本木はおそらく世界の中でももっとも健全な町のうちのひとつです。

最近の六本木はあらゆる店で客層が悪くなっているし、そもそも人が少なくなったという点に関しては、僕はこの記者に同意します。しかしその原因に関して彼は根本的に大間違いをしています。彼は六本木がこうなってしまった原因を次のように述べています。
警察も東京都も六本木の現状を野放しにしている。石原慎太郎都知事は、歌舞伎町に対して行ったように、とっくの昔に六本木の「浄化作戦」に乗り出していてもいいはずだ。けれど六本木は、何の措置も取られないままひたすら悲惨さを増すばかり。

これは完全に逆です。六本木が一気に荒んだのはオリンピック招致のために石原都知事が「浄化作戦」に乗り出したからです。2008年から2009年にかけて、人気の大型クラブががんがんつぶされました。日本ではクラブというのは風営法等で微妙な位置づけで、夜中の1時以降に営業したらいけないことになっています。よって、そういったクラブは、あくまでバーやレストランとして営業して「客が勝手に踊っている」みたいな感じで営業していたのです。そして警察もそれを黙認していました。そもそもクラブを夜に営業したらいけないというのは世界的に見てもかなり滑稽な規制です。


しかしオリンピック招致のためにトチ狂った石原慎太郎が、六本木をクリーンにすると称して、当時ものすごく人気があった大箱をがんがんつぶしていきました。そういった大箱にはふつうのOLやちょっとイケてる感じのビジネスマンがたくさんきていたのですが、彼ら、彼女らはいっぺんにいなくなりました。1000人単位で入る大箱がどんどん潰れて、六本木の生態系が大きく変化しました。大箱にいく前に腹ごしらえしたり、ちょっと飲んだりしていたバーやレストランが潰れていったのです。

またビジネスで外人の接待なんかでよく使っていた、老舗のストリップバーもがんがん潰れました。知っているストリップバーのオーナーがしょうもない理由でどんどん逮捕されて、それがよく新聞に載っていました。そういう店では会社の経費でがんがんお金が使われ、それがストリッパーの懐に入り、そのストリッパーが六本木のクラブで遊んだりして、そんな艶やか女を求めて、東京中から名うての狩人が集まってくるという六本木の聖なるエコシステムが、たかがオリンピック招致なんていうくだらない目的のために完全に破壊されたのです。複雑に絡み合った妖艶な六本木という海の美しい生態系が、コンクリートの塊みたいな醜い人工物によって殺されました。

六本木が荒んだのは、皮肉なことに行き過ぎた規制や、警察による取り締まり強化が原因なのです。一度、破壊されてしまったサンゴ礁がなかなか元に戻れないように、六本木という町がかつての豊潤さを取り戻すには何十年という歳月が必要だと思います。自然を破壊するのは簡単ですが、一度破壊された自然を元に戻すのは本当に難しい。僕は六本木の絶妙なバランスを保っていた奇跡ともいえる生態系が、くだらないことのために破壊されてしまい大変悔しいです。六本木は人災によって死んだのです。


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