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オカルトと手を組む産経新聞 テロ等準備罪の対象か


【評論家の呉智英氏】

 医者や弁護士、大学教授など、世間から冷静沈着な判断を期待されている職業であっても、オカルト的風潮に染まった人たちがいる。評論家の呉智英氏は、たとえ権威ある地位にある人物であっても、マスコミはオカルトと手を組んではいけないし、オカルトを煽り続けてはいけないと批判している。

 * * *
 6月22日、市川海老蔵夫人の小林麻央が満34歳の若さで亡くなった。その翌日もなお、悲しみを堪えて公演を務める海老蔵の姿に、歌舞伎ファン以外の人々も感動の拍手を送った。

 しかし、そもそも小林麻央は適切な治療を受けていたのか。麻央の病名は乳癌だった。癌治療はこの三、四十年で著しい進歩を見せ、今や「治る病気」になっている。だが、麻央はオカルト治療を受けていた。「週刊新潮」7月6日号によれば、麻央は、手術、放射線、抗癌剤などによる標準治療を受け容れず「気功に頼っていた」。施術師が患者に掌をかざして気を注入するのだという。夫君である海老蔵も「女性風水師やゲイの占い師に傾倒」していたらしい。

 オカルトが若い命を奪ったとさえ言える。1995年のオウム事件の衝撃によって、それまで広まっていたオカルト的風潮は地を払ったように思われたが、実はしぶとく生き延びていた。そのオカルトと手を組むマスコミさえある。

 産経新聞がオカルト論者をしばしば紙面に登場させてきたことを私は何度も批判したが、7月11日付の一面コラム「産経抄」では、「胎内記憶の研究を続けている産婦人科医の池川明」センセの迷著『子どもは親を選んで生まれてくる』を取り上げている。

 2007年刊行以来版を重ねるこの迷著には、驚くべき知見が書かれている。胎内記憶の拡大概念として、池川センセは「精子の記憶」「卵子の記憶」まで唱えておられる。ある男児、また別の成人男性は「精子のときの記憶」を語ったという。当然のように、ある女性は「自分が卵子だったとき」の「記憶がよみがえった」という。あのう、センセ、精子が男性になり、卵子が女性になるわけじゃないんですけど。センセは本当に医大を卒業されたのだろうか。

 池川センセは胎内記憶の調査について小児科医たちに協力依頼をすると「そんな馬鹿げたことにつきあってられないと、嫌な顔をされる」と書いておられる。まだまだまともな医者の方が多数派で、ほっとする。

 ところで、6月15日にテロ等準備罪(いわゆる「共謀罪」)が成立した。私はこの法律は不十分かつ遅きに失したのではないかと思う。

 戦後日本最大のテロ事件は何か。1950年代初めの日本共産党による中核自衛隊の活動か。あるいは1972年の連合赤軍事件か。否。1995年のオウム事件である。一連の事件で死者29人、負傷者六千人の甚大な被害を出している。もし、オウム事件の前に、処罰対象も広げ、宣伝・煽動・協力者も含めて一網打尽にするテロ等準備罪が成立していたら、あの大惨事は防げたはずだ。

 当然、ずっとオカルトを煽り続けてきた産経新聞も、社長以下論説委員たちの投獄を免れまい。

 その場合、私の信頼する何人かの論説委員については、私は全面的に法廷闘争の支援をするつもりだ。海外亡命の手助けも惜しまないぞ。

●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。著書に『バカにつける薬』『つぎはぎ仏教入門』など多数。

※週刊ポスト2017年8月18・25日号

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