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- 2011年11月08日 17:00
【特別寄稿】高いの?安いの?95億円。ベイスターズの価値を試算してみる
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井上弘・現株式会社東京放送ホールディングス及びTBSテレビ代表 写真一覧
これって高いの?安いの?フェアな価格なの…?というわけで、前回に続き、元ライブドア・フェニックスGMの小島克典氏に話を聞いた。
球界参入のいろんなルール
横浜ベイスターズの発行済株式総数は130万株です。これをTBSホールディングスおよびグループ1社で90万株(69.23%)、ニッポン放送が40万株(30.77%)の割合で保有していました。今回はTBSホールディングスが保有していた90万株のうち87万株(議決権ベースで66.92%)を、DeNAに譲渡することが両社から発表されたわけです。今後TBSの持ち株数は3万株となります。
今回DeNAがプロ野球への参加資格を取得するために必要な初期費用の総額は95億円です。内訳はTBS保有のベイスターズ株(87万株)の買収に65億円。NPBに30億円です。NPBへの30億円は、野球協約で次のように定められています。1.預り補償金として25億円。2.野球振興協力金として4億円。3.加入手数料として1億円。NPBへの30億円は、正式に参加承認された翌日から30日以内に一括で納めなければなりません。
25億円の預り金は毎年2/1〜11/30の稼働期間を一年とみなし、10年間保有し続けた場合は全額が球団に返還されます。預かり補償金制度は、プロ野球の公共性を企業の認知向上などに活用される短期保有を避け、長期保有を促すための策といえます。残りの4億円は野球振興のために様々な活動に充てられ、1億円は文字どおり手数料です。
預り金を含めた参加資格の規約は、僕らが球界参入を目指していた頃に大幅改定されたルールです。以前は新規参入(新球団)の場合は60億円、経営権譲渡の参加は30億円という加盟金をNPBに支払うルールがあり、このお金はNPBと12球団で分配されることとなっていました。ところがこれは既存球団の寡占を増長させ、球界の閉鎖性を高めることになっちゃう。さらに加盟金の徴収は独占禁止法に抵触するのでは、という疑いまででてきたりして、球界が8球団だ10球団だと縮小しかけた時にプロ野球選手会の熱心な働きかけなどもあり、加盟料(新規60億円、譲渡30億円)の廃止と、預かり金保証制度ができたのです。
ひとつ加えておくと2002年1月、当時のオーナー企業マルハからベイスターズ株を取得したTBSは、「特例」が認められたために30億円は支払っていません。マルハは当初、球団第2の株主であったニッポン放送への株式譲渡を目論んでいました。しかしニッポン放送はフジサンケイグループの一員で、同グループのフジテレビがヤクルトの球団株を20%所有していることが野球協約に抵触するとかしないとかでひと悶着あったんです。結局、ベイスターズ株の買い手は第3の株主だったTBSに落ち着いたのですが、その時に偉い方々が話し合って特例が認められたのです。球界全体も「事情も事情だし、せめて30億円は勘弁してもいいんじゃない?」みたいなトーンでした。TBSは15%強のベイスターズ株を保有していたので、それを体よい理由に…しかし悪例は残さないよう、あくまで特例として時限立法が成立したのですね。
私は当時ベイスターズに勤務していました。横浜ベイスターズは唯一、球団名に企業名を入れていない独立採算型の経営を行っていたので、オーナー企業が変わってもチーム名は変わらないという、メジャーではよくある売却ケースを経験できました。NPBでは初のケースだったかもしれません。
話は2004年に変わります。以前と比べて自由度が高まった球界のその後の効果は明らかで、新たな30億円ルールのもと新加盟を果たしたソフトバンクと楽天の2球団は、球界のみならず地域の活性にも大きく寄与しています。特に楽天のプロ野球新規参入は50年ぶりの快挙で、ライブドアとして参入が叶わなかったことは残念でしたが、今もイーグルスの活躍を見るに、僕らの問題提起は間違っていなかったんだと納得しています。
ソフトバンクと楽天の参入から2年後には、別の経営統合もありました。阪神タイガースの親会社である阪神電鉄と阪急電鉄が合併して、阪急阪神ホールディングスとなった件です。この統合は阪急ホールディングスが阪神電鉄の株式を取得したので、私は「実質的な所有者の変更(つまり球団経営権の譲渡)」かなと思いました。阪急阪神ホールディングスからNPBへ30億円の支払いが必要なケースです。ところが球界に多大な貢献をしてきた阪神だからでしょう、またも特例で支払いは免除となりました。
良くも悪くも、日本の球界ってこんな感じなんです。



