- 2017年08月06日 15:00
介護と愛情――ACジャパン広告学生賞の作品を見て
2/2渡辺ペコ『1122(いい夫婦)』1巻(講談社)には、故人となった父に暴力をふるわれ、それに何も抗しなかった母を半ば憎み、半ば「かわいそう」と思う主人公の女性(いちこ)が登場する。
母だって
ずっと
やさしくなんか
してくれなかった
のに
わたしが
大人になって
向こうが弱った
からって
やさしく
なんか
できないよ
わたし
あの人の
介護なんか
できない
今だって
殴りたく
なるんだもん
主人公の夫(おとやん)は「やんなくていいよ」と声をかける。
「やらなくていいのかな……」と不思議そうに戸惑う、いちこ。おとやんはいちこの肩を抱きしめながら提案する。
そういう
ときが
きたら
いちこちゃんが
辛(つら)くならない方法
考えようよ
俺もいるし
「辛(つら)くならない方法」とは、家族介護ではなく社会サービスとしての介護を利用することだろう。
憲法13条にもとづく個人の尊厳を守る。そのために憲法25条にもとづいて国はお金を出す。それが公的な介護である。
子どもが親をどう思っていようが、老後の尊厳が守れるようにしたい。
ぼくがこんなにいつもハラハラ思っている娘は、ぼくのことなどなんとも思わず、大人になればもう家に寄り付かないかもしれない。それどころか、反発して絶縁状態になるかもしれない。
しょうがないよね、別の人格だもの。
娘に依存しない老後。
愛情と介護は、手を切った方がいい。
愛情による介護は否定しないが、場合によっては愛情を根拠に介護を求めることは暴力的でもある。
この学生の広告が、広告として人の情動を揺さぶったことは間違いない。ぼくは泣いたのだから。だから広告としてとてもよくできている。
他方で、政治的な公正さから、複雑な思いも抱いた広告であった。
悪いとはおもわない。この間、『ゆらぎ荘の幽奈さん』問題で感じた、「創作とポリコレ」の応用問題の一つなのだ。



