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「TPPで同人誌は消えるのか?」シンポジウムで激論

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ニコニコ本社で開かれたシンポジウムの様子。中央が司会の津田氏。(ニコニコ生放送より)
ニコニコ本社で開かれたシンポジウムの様子。中央が司会の津田氏。(ニコニコ生放送より) 写真一覧
 TPPと著作権問題をテーマにしたシンポジウムが7日、東京・原宿のニコニコ本社で開かれた。著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム(thinkC)、一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)、ニコニコ動画などの5者が共同で主催し、ニコニコ生放送で中継された。2回に分けて開催される「TPPはネットと著作権をどう変えようとしているのか!? 徹底検証〜保護期間延長・非親告罪化・法定賠償金」の第1回だ。


 この日の司会は、ネットジャーナリストの津田大介氏。弁護士の福井健策氏、慶應義塾大学大学院准教授のジョン・キム氏、国際大学GLOCOM客員研究員の境真良氏、メディアアーティストの八谷和彦氏が参加して熱い議論が交わされた。第2回は、漫画家の赤松健氏らを招いて11日18時30分に開演予定だ。 (BLOGOS編集部・安藤)

外圧を利用した「ポリシーロンダリング」か?



津田氏:「TPPは危ない」って本ばかり。「TPPでこんなに成長する」って本が少ないんです。

八谷氏:TPPは農業と工業の話になるけど、24分野あるんで。そっちの影響も大きいというのが分ってきたんです。

津田氏:TPPによってどう変わるのか、米国と違って日本は議論できてないなって気がします。

福井氏:具体的な議論が必要だと思うので、総論は流します。知財の交渉項目ですが、「IPR CHAPTER」という(米国内の)要望が流出しました。「著作権保護期間の延長」「法廷損害賠償の請求」「著作権侵害の非親告罪化」「米国型のプロバイダーの義務・責任の導入」などが出ているそうです。しかし、それをなんで他国との交渉で知財・メディア政策を決めるのか。普通は、相手に変えて欲しいところがあるから要求するはず。でも、日本側がそういう要求をしているという話をついぞ聞いたことがない。だから日本にとってTPPとは、実は外圧を利用して国内政策を変えたい「ポリシーロンダリング」の面が大きいのでは。

著作権侵害の非親告罪化とは



境氏:非親告罪の話でいうと、私はコンテンツ産業の仕組みを研究してきたんですが、小学生や中学生がどうやってプロになっていくのか。コミケなりの小規模な市場のことはよく考えているんですが。ポケモンのパロディ同人誌を作った人が逮捕された事件の後、ディズニーキャラを使ったゲームの同人誌が急に減ったという事件がありまして。萎縮効果というのがあるわけですね。

TPPを日本が受け取って、どうするかという議論がないまま賛成が反対かだけで話が進んでいるのが怖いと思います。

キム氏:日本での議論がナイーブすぎるのではないかと思いますね。感情的な議論になってますよね。TPPが「他国からの侵略」という議論に終始している時点で残念かなと。アメリカからの要求は日本にとっては不本意な物ばかりです。でも、知的財産に関してはアメリカにとって一国のGDPを超えるような利害がありまして、TPPを使って外国に圧力をかけて飲んでもらうと。ニュージーランドもオーストラリアも、最終的には拒否したところはありましたでも、韓国FTAは米国の要求を全部飲んだんで(苦笑)。ある意味で韓国が選択した道は、知財はアメリカに譲ろうと韓国は別の部分を取ろうと。思考が停止状態なので、侵略論争になってしまっているのが残念かと。

津田氏:新聞とかテレビが仕事をなさすぎかなと。

キム氏:血を見るようなことになると思います。もし、ここで野田首相が政治的リーダーシップを発揮してTPPに乗るということになれば、ものすごい反発は起きるでしょう。

福井氏:非親告罪化を少し紹介させていただきます。現在は日本では著作権侵害は「最高で懲役10年または1000万円以下の罰金」。かなり高いんですね。法人は3億円以下の罰金です。しかし、これは親告罪といいまして、著作権者が告訴しない場合、国は起訴・処罰できないわけなんです。

津田氏:ニコニコ動画でもパロディ動画も上がるんですが、著作権者が「いいよ、いいよ」と言ってOKが出てしまうというのもありますね。

福井氏:「パロディや同人誌が萎縮するんじゃないか」という議論で、日本では著作権法の改正が見送られた過去があります。著作者本人が望んでないのに処罰される事態が出てきます。著者が黙認してきたコミケや同人文化が消える可能性があります。

境氏:赤松先生のように「どんどん(同人誌で)使ってくれ」と意思表示していてもダメになるケースがあるわけで。ダメといわずに見ていて、それに乗っかるという。「取り締まることが全てだ」という姿勢では出てこない。「パロディがいい」という基準は日本にはない。アメリカには「フェアユース」とか登録制とか基準はある。

津田氏:コミケがフェアユースの大きな実験場とも言えたわけです。八谷さんのメ―ヴェを「ジブリの著作権を侵害している」と警察が捕まえたりすることも考えられるわけですね。

八谷氏:それは怖いですね。ヨコハマトリエンナーレの「The Clock」という作品が、映画の中で時計が映っているシーンだけを抜き出して、24時間を流しっぱなしにするという作品なんですが。これはクリスチャン・マークレーが2年近くかかって、実時間に合わせて作成したんです。使った映像は3000本。これはぶっちゃけ許可を取ってないと思うんですよ。でも、アートの場合はずーっとこういうのがあって。マークレーは米国在住なんですが、米国のフェアユースの概念では「営利か非営利か」。「高度な創作か」。「利用された部分の量は」。「著作者が損をするか」。こういう風に社会的な合意が出来た上で、海賊版なんかはすぐに取り締まっていいということになってるんです。

でも、日本にアメリカの法律で一番ひどいところだけ、「ボン」と持ってきたら大変なことになる。「逮捕される!」と思うようになると、コミケで表現なんかができなくなってしまう。

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