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- 2017年08月06日 09:47
ICOブームの一因はIPO市場の低調にある
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もうひとつ、それらのブティック証券の商売を美味しいものにしていたのは、ナスダック市場におけるマーケット・メーキングというシステムです。そこでは、これらの証券が顧客からの売買注文の反対側、つまり買い注文に対しては証券会社が自己ポジションで売り向かい、顧客からの売り注文には買い向かうことで流動性を提供していました。その際、Bid(買い気配)とAsk(売り気配)のスプレッドが大きいため、マーケット・メーキング業務によるスプレッド収入が莫大でした。
ところが1990年代半ばにドットコム・ブームが起きると、このビジネスのウマ味に気がついた東海岸の大手投資銀行が続々と参入し、過当競争になりました。
いまでは上記のブティック証券は、すべて大手に吸収され、消えています。
大手証券は費用構造がブティック証券とは根本的に異なるので、チマチマした小さな案件を追いかけていては商売になりません。そのような理由から、小型株のリサーチは止めてしまうところが続出しました。
つまり、本来の「難解な技術や先端的なビジネスモデルを、言葉を尽くして機関投資家に説明し、その対価として注文をもらう」ブティック証券のサービスは、大手に吸収された頃から、だんだん朽ちて行ったのです。
一方、起業家の側でも、メンタリティーの変化というものがありました。Facebookの創業物語を映画化した「ソーシャル・ネットワーク」の中で、マーク・ザッカーバーグのビジネス上の「師匠」であるショーン・パーカーが、次のように言い放つ場面があります:
その結果として時価評価10億ドルを超えるまでモラトリアム的にIPOを先送りする「行かず後家」的なスタートアップ企業が続々と出たのです。それらの大型非公開会社は、ユニコーン企業と呼ばれます。
しかしユニコーン企業の中には「わざとIPOしない企業」もあるけれど、経営内容が悪く「IPOしたくても出来ない企業」も多く含まれています。
女性版スティーブ・ジョブズと持て囃されたエリザベス・ホルムズのセラノスが、とんでもないインチキ企業だったことは話題を呼びましたし、ウーバーも「わざとIPOしない企業」から「IPOしたくても出来ない企業」へと転落しています。
投信会社は、「なるべく非公開のうちに一枚、噛んでおきたい」という魂胆から、それらのユニコーン企業のプライベート・ラウンドに積極的に参戦しました。本来、ベンチャー・キャピタルが供給すべきリスク・キャピタルを、ベンチャーのノウハウに乏しい投信会社が担う事で、バリュエーションの吊り上り現象が起きました。
このためユニコーン企業の多くは「いま株式公開すると、逆にバリュエーションが下がってしまう」という状態になっているのです。それを象徴する例が、最近IPOされたブルー・エプロン(ティッカーシンボル:APRN)でしょう。
同社の場合、IPOのロードショウをしている最中にアマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)がホールフーズを買収するという衝撃的なニュースが入ったので、当初の初値設定30ドルの3分の1、わずか10ドルで値決めとなり、アフターマーケットでも株価は下がっています。これはユニコーン戦略に拘り過ぎたことで上場の「旬を逃した」例です。
個人投資家目線からすれば、昔はIPOというとウハウハ儲かる案件が目白押しだったのに、余りにユニコーンがバリュエーションを引っ張った後で公開に持ち込むため、リスクばかりで、旨味に欠けます。
その点、ICOには、1980年代のIPOと同じような、初々しい魅力があります。また起業家の側でも、「やたらとべらぼうに大きい資金調達をする必要は無いし、むしろそれは悪である」と考える経営者も出てきています。つまり「これがやりたい」というプロジェクト毎に、そのプロジェクトを遂行するのに必要な金額だけを調達する方法として、ICOは手頃なサイズなのです。
ICOにはクラウドファンディング同様、デリバラブルズ(届けるべき成果)があります。その意味でICOにより調達される資金は、株式(=エクイティー)と言うより「債券的」と言えるかもしれません。その反面、そのデリバラブルズさえしっかり成就させれば、別に会社全体として利益を出す必要はないし、ゴーイング・コンサーンである必要すら無いと思います。
それは「かならずしも帳簿がしっかりしてなくて良い」(=それは上場に必要なmaterial weaknessの無い経理という意味で)ことも意味します。
そうでなくても最近のシリコンバレーのテクノロジー・シーンはFANG(=フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、アルファベット)による寡占が強まっています。ちょっと面白いビジネスとなると、これらの大手企業が無限の経営リソースを投入し、たちまち美味しいところを掻っ攫ってしまうのです。つまりシリコンバレーは息の詰まる、風通しの悪い処に成り下がりつつあるのです。
そのような閉塞状況に対するアンチテーゼという側面を、ICOは持っているのです。
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広瀬隆雄のTwitter、Instagramもよろしく。
お問い合わせはhiroset@contextualinvest.comまでお願いします。
ところが1990年代半ばにドットコム・ブームが起きると、このビジネスのウマ味に気がついた東海岸の大手投資銀行が続々と参入し、過当競争になりました。
いまでは上記のブティック証券は、すべて大手に吸収され、消えています。
大手証券は費用構造がブティック証券とは根本的に異なるので、チマチマした小さな案件を追いかけていては商売になりません。そのような理由から、小型株のリサーチは止めてしまうところが続出しました。
つまり、本来の「難解な技術や先端的なビジネスモデルを、言葉を尽くして機関投資家に説明し、その対価として注文をもらう」ブティック証券のサービスは、大手に吸収された頃から、だんだん朽ちて行ったのです。
一方、起業家の側でも、メンタリティーの変化というものがありました。Facebookの創業物語を映画化した「ソーシャル・ネットワーク」の中で、マーク・ザッカーバーグのビジネス上の「師匠」であるショーン・パーカーが、次のように言い放つ場面があります:
A million dollar isn’t cool. You know what’s cool? A billion dollar.これは起業家が自分の創業した会社を早期にIPOするのではなく、なるべく非公開の時期を長くし、大きくはぐくんでから、株式公開するストラテジーを象徴する流行語になりました。
百万ドルなんてはした金だ。10億ドルならイカすね。
その結果として時価評価10億ドルを超えるまでモラトリアム的にIPOを先送りする「行かず後家」的なスタートアップ企業が続々と出たのです。それらの大型非公開会社は、ユニコーン企業と呼ばれます。
しかしユニコーン企業の中には「わざとIPOしない企業」もあるけれど、経営内容が悪く「IPOしたくても出来ない企業」も多く含まれています。
女性版スティーブ・ジョブズと持て囃されたエリザベス・ホルムズのセラノスが、とんでもないインチキ企業だったことは話題を呼びましたし、ウーバーも「わざとIPOしない企業」から「IPOしたくても出来ない企業」へと転落しています。
投信会社は、「なるべく非公開のうちに一枚、噛んでおきたい」という魂胆から、それらのユニコーン企業のプライベート・ラウンドに積極的に参戦しました。本来、ベンチャー・キャピタルが供給すべきリスク・キャピタルを、ベンチャーのノウハウに乏しい投信会社が担う事で、バリュエーションの吊り上り現象が起きました。
このためユニコーン企業の多くは「いま株式公開すると、逆にバリュエーションが下がってしまう」という状態になっているのです。それを象徴する例が、最近IPOされたブルー・エプロン(ティッカーシンボル:APRN)でしょう。
同社の場合、IPOのロードショウをしている最中にアマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)がホールフーズを買収するという衝撃的なニュースが入ったので、当初の初値設定30ドルの3分の1、わずか10ドルで値決めとなり、アフターマーケットでも株価は下がっています。これはユニコーン戦略に拘り過ぎたことで上場の「旬を逃した」例です。
個人投資家目線からすれば、昔はIPOというとウハウハ儲かる案件が目白押しだったのに、余りにユニコーンがバリュエーションを引っ張った後で公開に持ち込むため、リスクばかりで、旨味に欠けます。
その点、ICOには、1980年代のIPOと同じような、初々しい魅力があります。また起業家の側でも、「やたらとべらぼうに大きい資金調達をする必要は無いし、むしろそれは悪である」と考える経営者も出てきています。つまり「これがやりたい」というプロジェクト毎に、そのプロジェクトを遂行するのに必要な金額だけを調達する方法として、ICOは手頃なサイズなのです。
ICOにはクラウドファンディング同様、デリバラブルズ(届けるべき成果)があります。その意味でICOにより調達される資金は、株式(=エクイティー)と言うより「債券的」と言えるかもしれません。その反面、そのデリバラブルズさえしっかり成就させれば、別に会社全体として利益を出す必要はないし、ゴーイング・コンサーンである必要すら無いと思います。
それは「かならずしも帳簿がしっかりしてなくて良い」(=それは上場に必要なmaterial weaknessの無い経理という意味で)ことも意味します。
そうでなくても最近のシリコンバレーのテクノロジー・シーンはFANG(=フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、アルファベット)による寡占が強まっています。ちょっと面白いビジネスとなると、これらの大手企業が無限の経営リソースを投入し、たちまち美味しいところを掻っ攫ってしまうのです。つまりシリコンバレーは息の詰まる、風通しの悪い処に成り下がりつつあるのです。
そのような閉塞状況に対するアンチテーゼという側面を、ICOは持っているのです。
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