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【読書感想】綾瀬はるか 「戦争」を聞く II

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綾瀬はるか 「戦争」を聞く II (岩波ジュニア新書)

綾瀬はるか 「戦争」を聞く II (岩波ジュニア新書)

内容(「BOOK」データベースより)
爆心直下で被爆しながら奇跡的に命をつないだ人々、被爆直後の惨状の中で生まれた命、原爆症の父を支え続けた娘…。戦争体験者の言葉を通して平和の意味を考えます。大きな反響を呼んだNEWS23「綾瀬はるか『戦争』を聞く」シリーズの書籍化第2弾。

 NEWS23の「綾瀬はるか『戦争』を聞く」では、広島県出身の綾瀬さんが、戦争体験者と時間をかけて、直接話をされています。
 この本によると、なるべく自然な形で話をしてほしい、ということで、「あの綾瀬はるか」が来る、ということは、取材相手には事前に知らされない、ということでした。これを読んでいると、被爆体験をされた年齢層の方には、綾瀬さんを知らない人も少なくないようです。

 広島、長崎に原爆が落とされたのは、1945年。もう70年以上が経過しており、あのときのことを語れる人の数は、減り続けています。
 被害者の4分の1は、現在でも自分が被爆者であることを誰にも話せずにいる、との統計も紹介されているのです。
 福島の原発事故のあとに起こったとされている、さまざまな差別をみても、その気持ちはわかるような気がします。

 7歳のときに被爆した神戸美和子さんは、中学1年生のときに朝鮮戦争がはじまった際に、こんな体験をされています。

神戸「原爆がどんな悲惨なものか、どんな凄惨なものか、友達にすごく言ったのね。そしたら二日くらいたって私の周りからスーッと誰も私に近づかなくなったの」

綾瀬「やっぱり被爆者だと思われたから?」

神戸「うん。それまで、とても仲のいい友達もいたんだけど。で、私はその子の袖をギューッと掴んで、校門のところまで引きずっていって、『私が何したの? どうしたからみんなに私は嫌われているの? 言うて!』ってすごく言ったら、その子ね、ポロッと泣いて、『あんた、被爆しているでしょ』って。『あんたから放射能が出てみんなにうつるから、みんなそばに行かないようにしてる』って。で、私もうびっくりして、うちに帰って母にウワーッと泣きながら言ったのね。そしたら母が『これから先、絶対に被爆のことは言ってはいけない』って固く口止めされたの」

 当時、原爆や放射線に対する知識はほとんどなく、何の根拠もないままに「ピカの毒がうつる」などの偏見が広まっていたのです。

 以来、被爆のことを封じてきた神戸さんでしたが、45歳の夏、入院している兄嫁の見舞いに行った時のことでした。

 末期ガンに冒されていた兄嫁の雅子さんは、原爆で酷いヤケドを負い、体にケロイドがありました。
 ケロイドは、ヤケドの跡が盛り上がったもの。
 その醜い姿は、多くの被爆者を苦しめました。

神戸「被爆のことを黙っててはいけないって私を一生懸命さとすんです。両方の肩から着物を脱ごうとしるんです。で、私が『どうしたの?』って言ったら、『私の背中には酷いケロイドがある』って。右側全部がケロイドだったのね。こういう形で(右方向から)被爆したんですって。『この体を写真に撮っておいてほしい。で、世の中の人が汚いとか気持ち悪いとか言ったら、原爆に遭うとこういう体になるんですよって言ってちょうだい』って言うんですね。『私はそれでいいから』って。それでもう私は写真撮る勇気もなかったし、『姉さん、いいからいいからいいから』って……」

綾瀬「……」

 この一週間後、政子さんは息を引き取りました。
 遺言となった想いを託され、神戸さんは40年間隠し続けた被爆体験を語るようになったのです。

 あれから70年あまり。
 科学技術が進み、みんなの知識も進歩したように思い込んでいたけれど、東日本震災後に起こったことを考えると、人間そのものは、劇的に進化したわけではないのです。

 広島では、工場や作業場に動員されていた中学生たちが、多数、原爆の犠牲になっています。
 そのなかで、あの日、軍の命令に背いて生徒たちを建物疎開の作業に行かせなかった学校があったそうです。
 いまも広島市内にある比治山女子中学校・高等学校の女学生たちは、「今日は風がなくて、空襲の危険が高そうだから」という校長先生の判断で、あの日、疎開に加わらず、被爆を免れました。

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