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栗戦書スキャンダルと中国政商達の命運

今年(2017年)7月、『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』(『南華早報』)がウェブ上では18日、紙媒体では翌19日「シンガポール・ペニンシュラホテルへの投資者は、習近平の最側近と、どのような関係があるのか」を掲載した。

 ところが、同紙は翌20日、突如、記事が社の方針にそぐわないとして、自ら削除したのである。極めて不可解な出来事だった
 同記事にある習近平主席の最側近とは、栗戦書を指す。栗戦書には、栗潜心という娘がいる。栗潜心の夫は蔡華波(32歳)という人物で、シンガポール国籍を持つ。

 同記事によれば、香港&上海ホテルズはシンガポール・ペニンシュラホテルの株を100%保有する。蔡華波は、香港&上海ホテルズの株15億香港ドル(約210億円)を所有している。

 蔡華波は栗戦書の娘婿である。栗戦書の存在こそが、蔡華波に巨額の富をもたらしたと見るのが自然だろう。
 現在、夏の北戴河会議(新旧の党・政府幹部による非公式会議)が開催される微妙な時期である。そこで、今秋の中国共産党第19回全国代表大会(「19大」)の人事がほぼ決定されると考えられる。

 現時点で、栗戦書は次期政治局常務委員となる事が確実視されている。この時期に、栗戦書を巡るスキャンダルが表沙汰になれば、「19大」の人事に多大なる影響を与えるだろう。栗戦書の政治局常務委員人事は流れる公算が大きい。

 おそらく『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』の記事削除は、習近平指導部の強い圧力があったと見られる。
 実は、『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』はアリババ・グループの総帥・馬雲(ジャック・マー)が所有している。
 もともと、馬雲は江沢民系の「上海閥」との関係が親密という。「官商結合」の典型的パターンである。

 言うまでもなく、習近平政権(「太子党」)は「反腐敗運動」の名を借りて、徹底して「上海閥」(時には「共青団」)を叩いている。
 従って、「上海閥」が習近平政権に反撃を加えるため『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』を利用し、栗戦書のスキャンダルを暴露しようとしたとしても不思議ではない。けれども、今回、習政権の反発が強く、記事が削除されたと考えるべきだろう。

 

但し、一旦馬雲の『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』が習近平主席の最側近、栗戦書のスキャンダルを暴こうとした以上、今後、馬雲は習政権から厳しいマークを受ける公算が大きい。

 さて、今年1月、「明天系」(金融会社)の蕭建華(カナダ国籍)がフォーシーズンズホテル香港から中国公安に拉致・拘束された事は記憶に新しい。

 蕭建華が拉致・拘束された翌2月、世紀金源集団(不動産会社)董事長・黄如倫が中国政府に調べられている。福建省出身の黄如倫は、一時、フィリピンへ渡った。1990年代に入り、黄如倫は中国大陸へ投資を開始している。

 更に、今年6月、安邦保険董事長の呉小暉(鄧小平の孫娘の夫)が逮捕された。習近平主席が鄧小平一族にメスを入れたのである。
 以上の3人は「官商結合」ゆえに、政治に翻弄されたとも言えよう。

 その他、有名な企業家としては、万達集団の王健林(王は、もともと遼寧省大連市西崗区の官僚だったが、ビジネス界へ身を投じる)は、習近平の姉夫妻、斉橋橋・鄧家貴との関係が深い。因みに2015年、王健林は、華人として李嘉誠を抜き、同年、世界1の資産家となった。

 楽視網の賈躍亭は、令計劃(2016年7月無期懲役の判決を受ける)・令完成(現在、米国へ逃亡中と見られる)との関係が取り沙汰されている。とすれば、今後、賈躍亭は習近平政権からチェックを受ける可能性がある。

 復星国際の郭広昌は、2015年に失脚した上海市副市長の艾宝俊と関係が深かった。そのため、郭広昌は、一時、当局に調べられているという情報が流れたことがある。

 海航集団の陳峰は、かつての上司だった王岐山との親密な関係が疑われている。この件については、米国へ亡命中の郭文貴が徹底的に王岐山の海航スキャンダル(郭は王岐山が同会社の大株主だと主張)を暴露した。

 周知のように、目下、中国経済低迷は未だ回復していない。そこで、ひょっとして、習近平政権は、中国の大実業家から巨額のマネーを巻き上げようとしているのではないか。そして、そのマネーで「ゾンビ企業」(主に国有企業)の生き残りを模索しているのではないだろうか。

 けれども、習政権のそのような姑息な方法では、“金の卵”を産む優良企業の首を絞める事になり、かえって、中国経済にダメージを与える恐れがあるかも知れない。

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