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"サングラス"を禁止する甲子園の時代錯誤

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■皮膚がんのリスクを高めかねない

だが、子どもの健康を考えれば紫外線対策も欠かせない。子どものころに紫外線を長時間浴びる生活を続けると、大人になって健康面で大きな問題を抱え込む。シミやシワなど肌の老化ばかりか、皮膚がんのリスクを高めかねない。

地元教育委員会は何をしているのか。問い合わせてみたところ、担当者は「毎年5月中旬には各学校に対して熱中症対策を採るように指示を出している」としながらも、「具体的対策については各学校に任せている」と回答。サングラスについては「使用許可を求める声は特に聞こえてこない」という。

そもそもサングラスについては使用許可を求めるのさえためらわれる状況なのだ。部活動でサングラス姿の生徒は1人もいないし、教員の大半もサングラスを掛けていない。こんな状況で保護者が「うちの子どもにはサングラスを認めてください」などと訴えたら、学校側は間違いなく戸惑うだろう。

■子どもは元気だからサングラス不要?

とはいえ、炎天下、サングラスなしで朝から夕方まで屋外で練習する日々を何年も続けたら、どれだけ目を痛めることになるのか。大人になってから白内障や黄斑変性症などを患うリスクがぐんと高まりかねない。

私は日差しの強いカリフォルニアに5年間住んでいたことから、紫外線のリスクについていやが上にも考えさせられた。屋外でスポーツするときに帽子、日焼け止め、サングラスの三点セットを持参するのは常識であり、紫外線から子どもを守るために一生懸命なアメリカ人の友人に感化された。「日焼け=健康的」という意識は皆無だった。

とりわけサングラスに対する意識は日本とは大きく異なる。屋外では率先して大人がサングラスを掛けてお手本を示しているから、子どもたちもサングラス着用に抵抗感を見せない。私自身も目の検査の際に「屋外ではできるだけサングラスを着用するように」とよく言われたものだ。

■「子どもは紫外線による健康被害を受けやすい」

アメリカでは紫外線から子どもの目を守ろうとの意識は数十年前からある。

例えば1993年7月の米ニューヨーク・タイムズ記事だ。「太陽から子どもの目を守ろう」と題し、「子ども向けサングラスの販売が爆発的増加」「幼児や子どもの目は紫外線をカットする色素が薄いから要注意」「70代の白内障や網膜変性は若い時期から紫外線を浴び続けた結果」などと書いている。

アメリカだけではない。世界保健機構(WHO)もかねて「子どもは紫外線による健康被害を受けやすい」と警鐘を鳴らし、帽子や日焼け止め、サングラスの使用を呼び掛けている。特に学校の役割に注目しており、「子どもを紫外線から守るうえで学校が担う役割は決定的に重要」と強調している。

それと比べると彼我の差はあまりにも大きい。かつて日本の部活動では「練習中は水を飲んではいけない」という非科学的慣行がまかり通っていたのだ。だが、今でも「子どもは元気だからサングラスなんて不要」「日本人は目が黒いから紫外線をカットできる」といった思い込みがどこかにあるのだとしたら、今も昔と変わらず非科学的である。

■使用許可を求めたら「診断書」を要求される

学校側に「子どもの目を守ろう」との意識が希薄な状況下でサングラスの使用許可を得ようとすると、大変な労力を伴う。それを象徴しているのが、長野県内の公立中学校へ娘を通わせている自営業の伊藤一彦さんのケースだ(詳細は伊藤さんがブログにまとめている)。

伊藤さんがサングラスの使用許可を得ようと思い立ったのは、テニス部の練習で直射日光を浴び続けた娘の目が真っ赤に腫れ上がったからだ。部の顧問に相談したところ、「どうせカッコつけたいんだろ」「試合の相手に失礼」「駄目と規則で決まっている」などと言われ、取り付く島がなかった。

伊藤さんは学校を相手にしていてもらちが明かないと判断、市の教育委員会に直訴した。すると学校側から連絡が入り「善処したいが、医師の診断書が必要」と言われた。最後には県の教育委員会に直訴し、ようやくサングラスの使用許可を得られた。ただし「今回は特例」と念を押されたという。

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