- 2017年08月03日 17:51
内部告発者を取り巻く社会環境――スキャンダリズム社会における勇気とは何か
3/3告発者の勇気、市民の勇気とは
確かに内部告発には妬みや嫉みなど、一定の恣意性を孕んだ告発や、完全なガセネタもあるだろう。故に告発内容の精査に関しては細心の注意が払われなければならず、告発者の人格なども考慮の対象になる。しかし、優先順序は人格よりも告発内容だ。この点を我々は忘れてはならない。付言するならば、昨今のポストトゥルース(脱真実)と呼ばれる時代においては、ある内容が正しいか否かといった真偽に関心が払われなくなっており、「信じたいものを信じたい」人々が情報を自分の都合に合わせて消費する。したがってどれほど告発内容が正当なものであっても、「みたい事実だけをみて」告発内容を解釈されたりスキャンダリズムに巻き込まれるなど、告発者は大きなリスクを背負うことになる。
するとここでもまた告発はジレンマを帯びる。こうした状況に負けず、批判を覚悟で語る告発者の姿勢に賞賛の声が上がる一方、語れば語るほど告発者のリスク増大を意味してしまう、というものだ。そしてそのような状況を前に、我々は告発者の「勇気」に頼らざるをえない。だがこの勇気や「立派な告発者」という考えもまた一種の人格的な判断であるため、勇気や「立派さ」の評価をめぐってさらなる社会的混乱を招いてしまう恐れもある。それほどまでに、この社会は複雑で混乱した状況に陥っている。
勇気や覚悟が困難な時代にあって、それでも勇気を振り絞る告発者を我々はどのように受け止めるべきか。課題は尽きない。
著者/訳者:塚越 健司
出版社:SBクリエイティブ( 2012-08-17 )
定価: Amazon価格:¥ 788
新書 ( 216 ページ )
ISBN-10 : 4797369620
ISBN-13 : 9784797369625
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塚越健司(つかごし・けんじ)情報社会学・社会哲学
1984年生。拓殖大学非常勤講師。専門は情報社会学、社会哲学。ハッカー研究を中心に、コンピュータと人間の関係を哲学、社会学の視点から研究。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップレギュラー出演中。




