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小林よしのり氏「もう国家論やめたくなった。わしだってもっといろんな表現をしたいよ」

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左にも右にも嫌われる


小林:そして、自衛隊の車両があれほどまでに被災地を行き交っていて、だからこそ安心するという感覚ね。
「軍靴の足音が聞こえる」とか「こんなに野放しで自衛隊が活動していいのか、軍国主義国家になったんじゃないか」、みたいにちょっと前ならすぐ言われてた。あそこにおいては、そんな陳腐な言葉はもう通用しなかった。自衛隊の車両を見るとほっとするという、そういう心理状態になるわけですからね。

―これまで自衛隊については、議論を始めようとしただけで、保守だとか、右寄りだとか、いわばタブーのような扱いをうけることも多かったと思います。
今回震災があって、国民の中で、自衛隊に対する「頼もしさ」のような認識も出てきたようにも思うのですが、小林先生の中では必要性を再認識された、ということでしょうか。


小林:というよりも今度は逆に心配になったけどね。つまり、単なるレスキュー隊と間違われていないかということだよね。国民にとって自衛隊の本来の姿が認識されているのか。ボランティアの延長線上のレスキュー隊として認知されちゃったんではないのか。保守派の人間たちも、「暴力装置じゃない、暴力装置じゃない」と言っているわけだから、非常に安全で無難な団体、組織として認知されようとしているということが、逆に危険だな、という感覚も持ちましたよね。

ー「世界で最も多くの命を救った軍隊」という言い方に端的に表されているかもしれませんね。

小林:そうですね。でも、軍隊ならば、具体的な軍事衝突の局面では命を取らなければならないという面、敵の命まで救うわけではないという面もあるわけだから、その辺を勘違いしちゃいけないんじゃないかなと思ってそこを危惧するようになった。でもそれを表明してしまうことが、保守派の人たちには気に入らない、”暴力装置”と書くことも気に入らないっていうことになっちゃうし。だから左にも右にも嫌われる、ということに結局はなりますよね。

―13年前に「戦争論」を出版されましたが、あの頃から比べると、ワールドカップでの盛り上がりなど、若者におけるナショナリズムや愛国心という話もクローズアップされるようになったと思います。先生の作品に対する読者や社会の反応は変わってきたと思いますか?

小林:昔はみんな若者は左翼だったんだけど、今は保守か、なんか”ネトウヨ”みたいな感じになっちゃって、切り替わっちゃったかなという感覚はしますよ、「戦争論」以降。
でも、今度はある意味、国家というものを持ち出しさえすれば自分自身の自意識を底上げできる、という人間が随分増えたなと。

自衛官のような”現場”を持たなくて、プロフェッショナルでもなくて、自分の全く未熟な”個”に対して、”国家”っていうものを出しさえすれば、人を”左翼”だとか”売国奴”とか色んな言葉で非難しつつ、自分だけは尊大に振る舞える。そういうことのために、国歌や日の丸がだんだん利用されてきている。そういう状況に対して、わし自身は嫌悪感を覚えることがあるので批判的になってしまう。そうすると"アンチ小林よしのり"みたいなのが出てくる。ネットの中からは特に。知ったことかという感じだけどね。どっちみち右からも左からも、全てから嫌われるということは前提ですから。何も誰かに気に入られたくて何かを発言しているわけじゃないので、できるだけ人の耳障りなことを言おうと、自然とそうなっちゃう。耳障りだけど言っちゃえとなってしまう。わしはそういうものじゃないと表現する意味はないと思っているので。

最大多数の言葉を全部代弁しちゃって、「そうだそうだ!」って言う同意をもらえるようには描いていないということですよね。

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