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型破りの自衛隊広報誌「MAMOR」編集長に直撃インタビュー

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アイドルやグラドルたちが表紙を飾る「MAMOR」
アイドルやグラドルたちが表紙を飾る「MAMOR」 写真一覧
 自衛隊の制服に身を包んだアイドルが敬礼をしている表紙。一見、コスプレ雑誌かと見まごうような自衛隊広報誌があるのをご存知だろうか。人気アイドルユニット「AKB48」の前田敦子や大家志津香まで表紙を飾った号は大人気となった。気合が入っているのはグラビアだけではない。自衛官の婚活コーナーからミリタリー占い、女性自衛官のガールズトークまで。防衛省が編集協力をしているのに、ゆる〜い紙面は衝撃的だ。

 それが扶桑社が発行する月刊誌「MAMOR」(マモル)だ。自衛官のインタビューや日本の防衛問題を語る真面目なコーナーもちゃんとありつつも、普通の月刊誌のようなテイスト。なぜこんな型破りな雑誌が生まれたのか。編集長の高久裕(たかく・ゆたか)氏にインタビューで直撃してみた。【写真・文:安藤健二(BLOGOS編集部)】

「自衛隊には全く興味なかった」

 JR浜松町駅から歩いて数分。東京都港区の芝浦埠頭を臨む海岸縁に扶桑社の入ったビルはある。親会社のフジテレビがお台場にあるから、割と近くだ。インタビューを行った会議室では、港を行きかう船が見え、時折、汽笛を鳴らす音がかすかに響いた。

人気の婚活コーナーを開く月刊誌「MAMOR」の高久裕編集長
月刊誌「MAMOR」の高久裕編集長 写真拡大
 高久編集長は54歳のベテラン。日之出出版のファッション雑誌「Fine」や、ダイヤモンド社の自動車雑誌「カー&ドライバー」の編集に携わった後、1987年に扶桑社入社。女性向け情報誌の「ESSE」、男性誌「SPA!」の副編集長などを経て、2005年に創刊した「MAMOR」の編集長を務めている。自衛隊雑誌の編集長とは思えない雰囲気だ。よほどな軍事マニアではないかと思っていたが、開口一番、「もともと自衛隊には全く興味なかったんです」と、驚くべき発言をした。それなら、なぜこのような雑誌が生まれたのだろう……。

―高久さんご自身は自衛隊や軍事に興味があったわけではなかった?

いや、全然。僕の思春期の頃までは世の中の雰囲気が左翼的でしたから。当時のヒットソングはみんな反戦歌だったんです。フォークソングって基本、反戦ですからね。サッカーのW杯でよく歌われている「翼をください」もそうです。「翼があったら国を飛び越えて自由になれるのに」という内容でした。ですから、僕も自衛隊に反対はしてなかったけど、全く興味がなかったんです。

―以前は生活情報誌から一般紙、自動車雑誌までやっておられますが、今回、自衛隊の雑誌ということで戸惑いはあったのでは?

いや、「MAMOR」はもともと、私が企画したんです。そういう媒体があって配属されたわけではないので、びっくりしたことは特になかったですね。

―えっ、発案された経緯はどんな物だったんですか?

もともと2005年に、弊社にカスタム出版という部署が新設されました。これは企業・団体向けにカスタマイズされた出版物を作る部署なんですね。これはアメリカで生まれたマーケティング手法で、日本でも講談社もマガジンハウス、日経などいろんなところでやってますけど、企業からお金をもらって企業向けにカスタマイズした出版物を作ろうという部署なんです。

ご存知のように出版不況で雑誌や書籍が売れない時代においては、新規ビジネスとして扶桑社も参入したんですね。で、その部署が立ち上がったときに私も配属されて、じゃ、カスタムで「どこかスポンサーを探しに行かなくっちゃね」ということで考えて、「やはりでかい企業がいいよね。予算をいっぱい持ってそうだよね」。「でかいといえば、日本政府が一番でかいだろう」と。そういうことで、官庁の仕事が一番手堅いんじゃないかな、と素人ながらに思ったわけです。

実は「SPA!」の副編集長をやっているときに自衛隊の特集を担当したことがあったんです。現場で取材をしたのは記者なんですが、相馬原(そうまがはら)の駐屯地に記者が3日間、体験入隊して記事を書いたんです。まあ、「SPA!」なんで非常に軟派な感じの記事だったんですが、出来た物を自衛隊の広報に持っていったんです。「これは結構お叱りを受けるかなぁ」といった内容だったんですけれど、お持ちしたら非常に喜んで頂けたんです。

「これからは自衛隊もこういう柔らかいPRをしなきゃいかんだろうなぁ」と、当時の広報官はおっしゃってまして、それが妙に頭に残ってたんですね。それで、さっきの「官庁にどこか企画を持ち込まなきゃなぁ」と考えていたときに、その自衛隊の広報官の言葉を思い出して、「やわらか〜い自衛隊のPR誌を作ります!」っていう話を持ち込んで飛び込み営業をかけたんです。

当時の防衛庁に電話して、「かくかくしかじか」と。そのときに、たまたまなんですけど、タイミングがばっちりだったんです。というのは防衛庁の関連団体(財団法人防衛弘済会)で「セキュリタリアン」という広報誌を作っていたんですが、これは社内報のような雑誌で一般書店での扱いはなかったし、一般の国民が目に触れるところには置いてなかったんですね。一般の人にはあまり知られてなかったんです。

当時の自民党政権では民活(民間事業者の能力活用)という動きがありました。そんな中、「広報誌を作るのは民間に頼んだらどうか。内部で作って内部だけで読んでても広報誌とは言えない。民活で雑誌作りのプロに任せたらどうか」という話があって。私が企画を持ち込んだのは、防衛庁の内部で広報誌の民間委託をちょうど検討していた時期だったんです。

―ほぉ、ちょうど時期がぴったりだったんですね

ただ、随意契約はなかなか防衛庁の場合はできない。それで企画の競争入札ということになったんです。それで他社と競争して、うかったという経緯です。

―てっきり「セキュリタリアン」の廃刊が決まっていて、扶桑社に話が降りてきたのかと想像していたんですが

いやいや、そういうことではないんです。「フジサンケイグループの扶桑社で、『新しい歴史教科書』とかを作っていたからじゃないか?」という誤解をされがちなんですが、全くそんなことはないんですよ。

―「セキュリタリアン」はかなり堅い紙面だったと思いますが、MAMORはグラビアにアイドルを起用したり、かなり柔らかい紙面になってますよね。これは最初から意識されていたわけですね?

最初に持ち込んだ企画からして「柔らかい物を」ということでしたから。それを認めて頂いたので、ソフト路線を前面に出すということでしたね。

―ネット上では広報誌と紹介されたり、準広報誌と紹介されたり扱いがマチマチなようですが、どういうポジションなのでしょうか?

オフィシャルな広報誌ですね。オフィシャルマガジンです。

―ただ、内部で紹介する物ではない

違いますね。一般書店で売られてますから。セキュリタリアンの頃は一部の書店には置かせてもらっていることはあったようですが、(取次を介した)流通はしてなかったですね。

―「セキュリタリアン」と比べて「MAMOR」の部数は上がっていますか?

かなり上がっていますね。

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