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トヨタリコール問題で前原氏が米国側に伝えた「懸念」 ウィキリークスが明らかに

2009年8月、フロアマットを2重に敷いていた「レクサスES350」に乗った4人が、カリフォルニア州サンディエゴ郊外で死亡する事故が発生。

これを受け、同年11月25日にトヨタは「適切にフロアマットを敷いていなかった」として自社の責任を否定しながらも、米国内で販売した8車種の乗用車計約426万台を対象にペダルの無償交換などのリコールを行うと発表した。

しかし翌年1月には、フロアマットとは関係なく、アクセルペダルが元の位置に戻りにくい不具合が発生した可能性があるとして、アメリカ国内で販売した計8車種約230万台について追加のリコール実施を発表。最終的にリコールや自主回収は1000万台を超える大規模なものとなった。

最終的にリコール対応を取ったとはいえ、トヨタ側はこうした不具合について少なくともカリフォルニアでの事件よりも前から認識していたとの報道もあり、アメリカ国内のトヨタに対する風当たりはとても厳しいものとなった。

「北米トヨタは日本のトヨタ本社に再三警告したものの、本社側経営陣がきちんとした対応を取らなかった」「現地の北米トヨタには指揮権がなかったからだ」「トヨタ側の隠ぺい体質」…こうした批判もあり、米上院では日本・北米トヨタの経営陣を呼んで3度もの公聴会が開かれるなど、次第に問題は政治的なものとなっていった。

この当時の国土交通大臣であったのが、野田新内閣で政調会長に就任する予定の前原誠司氏だ。
昨年2月3日にはトヨタ自動車の佐々木副社長、9日には豊田社長が前原大臣と面会し、一連の経緯を説明している。

また、同月10日の共同通信は「米大使に冷静な対応要請=トヨタのリコール問題で−前原国交相」という見出しで以下のように報じている。
 前原誠司国土交通相は10日夕、トヨタ自動車のリコール(回収・無償修理)問題などをめぐり、同省内でルース駐日米大使と会談した。前原国交相は「日米関係に支障が出ないようわれわれで努力しなければならない」と述べ、米国側の冷静な対応を要請。これに対して、ルース大使は会談後に記者団に、「この問題は、直接的にも間接的にも日米関係の強さを損なうものではない」との考えを示した。
(後略)
前原氏がルース大使に要請した「冷静な対応」とは、一体どういうものだったのか。今月26日にウィキリークスにより公開された在日米国大使館発の公電からは、当時の前原国交相がルース大使に伝えた、ある「懸念」が浮かび上がっている。(BLOGOS編集部:清水・野村)

(以下の引用はすべて、ウィキリークス公開の在日米国大使館発の公電より)

当時の前原国交相、日米関係の悪化を懸念


¶1.
「日本政府は最近のトヨタの問題が原因で米国との関係が傷つかないように望んでいる」と2月10日に当時国土交通大臣であった前原誠司氏が米国大使に伝えた。

前原大臣(当時)は米国大使とトヨタの安全装置を巡るリコールと日本のエコカー補助金制度(脚注参照)について会談し、前原氏はこの問題が日本と米国の関係に損害を与えるのではとの懸念を伝えた。

前原氏は会談を他の2つの問題(高速鉄道と嘉手納基地のレーダー進入管制区)を提起する機会としても利用したが、マスコミの報道はトヨタのみに絞られた。

トヨタのリコール申し出は「むしろ正しいこと」


¶2.
2月10日の米国大使との会談では、前原氏は「日本政府はトヨタの問題が日米関係の土台を壊すことがないようにしたい」と語り、日米貿易の障害とならないことを望んでいることを伝えた。

前原氏は米国大使に、日米関係は日本の国際政策の土台なので、平和的な問題の解決が重要だと伝えた。

前原氏は今回のリコールの申し出をネガティブなものとは見ていない。むしろ、正しいことであり、メーカーは顧客の為にこのような対応をしていくべきだとしている。

「トヨタの豊田章男社長はステークホルダー(利害関係者)に状況の説明、アメリカ連邦議会への出席、アメリカ国民をトヨタの"誠意"をもって説得をする為に訪米する計画を立てている」と前原氏は続けた。(トヨタの代表者たちは大使館側にトヨタは3月に訪米すると伝えていた)

米国大使は「トヨタにとってこの問題を解決する為に一歩先を行くことが大切であり、日米両政府はトヨタの問題が両国間の関係に影響を与えないように行動することが必要だ」と答えた。

会談後、米国大使は報道陣に対して「トヨタのリコールは安全性の問題であって、強い日米関係には影響しない」と語った。

日本の官僚・自動車会社経営陣も米国大使館に訴え


¶7.
日本のメディアはこの会談を広く報道したが、報道はトヨタの問題に限定された。

日本の報道陣はトヨタのリコール問題の原因について推測し、多くのアナリストらはこの問題はトヨタや日本の製造業が世界的に拒絶される予兆だと示唆した。

日本政府の多くの官僚と自動車会社の幹部にとっては、どのような自動車の問題でも1980年代〜90年代に起こった日米間の経済摩擦を思い返すだろう。

2008年の終わりに世界経済の後退が始まってから、これらのステークホルダー(官僚や自動車会社の経営陣)は大使館側に、自動車部門における貿易摩擦の再燃を避けたいという要望を多くの場面で非公式に伝えており、前原氏のメッセージはこうした一触即発の懸念を公式に表明したものと思われる。

特に最終文からは当時、政府・与党だけでなく、官僚や日本の自動車会社経営陣までもが貿易摩擦が再燃する懸念を米国大使館側に伝えていたことが示されており、一連の事件の動揺はトヨタ内部のみならず、日本経済の大部分にまで広がっていたことが分かる。

脚注
(同公電の「¶3.」より)
前原氏はアメリカ合衆国通商代表部が日本政府に対して、日本のエコカー補助金制度にアメリカの輸入車が適合するかを判断する為に、アメリカ合衆国環境保護庁の統合マイルレートを採用するように要求したものの、日本政府は国土交通省が日本のマイレージレートにより合致すると考えるEPA Cityモードを採用することを決めことに言及した。

日本政府が採用した要件は約50%の米国の輸入車、40%のヨーロッパ圏の自動車がエコカー助成金制度に適合することを保障している。

一方、アメリカ合衆国環境保護庁の統合マイルレートは90%の米国の輸入車が資格を得るとされており、このことは日本とヨーロッパの企業から不満を呼ぶかもしれないと前原氏は強く主張した。

多くのアメリカの自動車が輸入自動車特別取扱制度の下で輸入されており、アメリカ合衆国環境保護庁の統合マイルレートを使用した場合、二重の優遇を受けることとなる。

米国大使は「米国政府は日本政府のEPA Cityモードの使用を決断したことに落胆させられた。そして、エコカー補助金の問題は今後も米国内において注目され続けるだろう」と返答した。

米国大使は更に日本政府が自由貿易の為に透明性と市場開放の為に献身的に取り組み続けることが大切だと強調した。

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