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- 2011年08月30日 12:30
「原発再稼動に向け努力」「日米同盟は『国際公共財』」… 野田新首相が語る政権構想とは
29日に行われた民主党代表選では野田佳彦氏が決選投票で大逆転を果たし、下馬評を覆して民主党新代表に選ばれた。
30日朝の閣議で菅政権は総辞職を決定。午後には衆参両院本会議で野田新代表が第95代首相に指名される見通しだ。
その後の動きとして野田氏は「幹事長などの骨格を30日に決めたい」としているものの、組閣は週末以降になるとの報道が優勢であり、その間は憲法の規定により菅内閣が「職務執行内閣」を務める。
閣内人事の行方に注目が集まる一方、やはり新首相がどのような政権運営を目指すのか、この日本についていかなる現状認識を持っているのかは国民として気になるところである。
野田新代表は文藝春秋9月号に「わが政権構想」と題する論文を寄稿しており、この内容が新政権を読み解くヒントとなっている。
今回はその抜粋を改めて紹介していく。(BLOGOS編集部・野村)
震災から5ヶ月、その間政権の中で国難に向き合ってきた野田氏は、「民主党政権は言葉が先行するだけで政策が実行されていない」と、内閣に厳しい視線が向けられていると認識。
その理由を、政治が「やるべきことをやってない」と国民が思っているからだと分析する。
「政治家に求められているのは、現実を直視し、困難な課題から逃げない、先送りにしない姿勢です。」と語るのは、菅内閣で働いて湧いてきた実感なのだろうか。
日本人の力を信じ、「なでしこジャパン」のように最後までチーム一丸となって挑戦を続ければ、必ず日本再生の道は開けると述べ、いざとなれば「先頭に立つ」と断言していたが、今回早くもその時が来たことになる。
この政権構想の中で、野田氏は少子高齢化や経済停滞など、震災前から解決すべき課題は目前に迫っていたと指摘。
過去20年間、製造業が海外に生産拠点をシフトするなどの結果、「約500万人の雇用が失われ」、その「失われた雇用」が国内の需要の落ち込みにつながり、デフレ経済を進行させたとの認識に立ち、財務大臣として必要な政策を懸命に進めてきたと語る。
その上で、震災直後の3月18日に財務省・日銀が実施した為替介入は「その一例」として決断したとしている。
巨大な為替市場を相手とするため、市場に強いメッセージを伝えるために断続的に先進各国に働きかけ、11年ぶりの協調介入への合意を得ることが出来たとその実績を強調する。
また、民主党政権が昨年策定した、今後の経済成長のための「新成長戦略」の実行が遅れていることを指摘し、日本経済の競争力強化に向けた対策は出揃っているものの、その実行が遅れているとの見解を述べた。
これについては「奇策はいりません。実行こそ最大の戦略です。」と、菅氏へのメッセージともとれる表現で強く語っている。
なお、野田氏は最近の円高への対応でも為替介入や24日に設立した緊急対応基金に加え、3次補正予算などで、さらなる円高対策にも取り組む考えを示しているとされる。
国内産業の衰退を「第一の危機」と捉える野田氏は、第二の危機として、「電力・エネルギー問題」を掲げ、原子力の「安全神話」は崩れたとし、最優先すべきは福島第一原発の速やかな収束であると位置付けている。
原発事故で生活の場を奪われた福島県の方々や、被災地以外で被害を受けた方々へ適切な賠償がなされるよう万全を期すのが「国として当然の責務」と語る。
また、直近の論点としては原子力や、当面の電力不足への対応について、「現在から3年後までの短期の工程表を示して行動すること」だとする。
震災後に政府が混乱を引き起こした首都圏での計画停電対応については、「電力は日本社会の『血液』そのものであり」、「その現実をまざまざと見せ付けた」と総括している。
その上で、「政府には電力を安定的に供給する体制を作る責任がある」との立場を表明し、「当面は(原発)再稼動に向けて努力することが最善の策ではないでしょうか」と、原発再稼動への支持を明らかにしていた。
この点、当面は経済産業大臣の人事がどうなるかは注目される。
「原発再稼動に向けて努力する」―。
野田氏はそのためにまずは、原発のストレステストといった規制体系の整理や、原子力安全・保安院と原子力安全委員会の統合といった規制監督体制の再編も必須とし、国内外の英知を集める新たな仕組みも検討すべきと語る。
そうした「器」をまず整えた上で、首相が自ら原発立地の自治体に自ら足を運び、意見を直接聴き、自らの言葉で語る真摯な姿勢こそが電力危機を回避する第一歩であると、菅首相を間近で見てきた中での思いが綴られている。
また、日本の原発輸出については、唯一の被爆国として原子力の平和利用の技術を蓄積してきており、相手国はそれを信用して導入することを選んでくれたのだから、今回の事故を契機にその危険性と安全対策を伝えた上で相手国に判断してもらうことが、震災後の日本だからこそできる国際貢献でもあると述べ、「短兵急に原発輸出を止めるべきでない」との考えを明らかにした。
これらの他、エネルギー問題については、新たな原発の増設が難しいのは「明らか」と表現しながらも、少なくとも2030年までは一定割合は既存の発電所を活用し、原子力技術を蓄積することが「現実的な選択であろうと思う」と述べた。
また、日本の自然エネルギー比率が9%(水力含む)である現状を、2020年代までには20%まで上昇させるのが「当面の目標」とも語り、革新的な技術開発や省エネを「創エネルギー」と位置づけ、こうした変化が日本の新たな「稼ぎ手」となるとした上で、「今回の危機は長い目で見ればチャンスとなる可能性を秘めている」としている。
第三の危機は本人が「最大の危機」と位置付ける「財政」。
阪神・淡路大震災から16年で借金が2.5倍に膨れ上がった現状を憂慮し、「もはや、大震災を理由に、財政健全化への取組みを先延ばしすることは出来ない」と財務相を経験してきた立場をこう述べた。
現在の日本の「毎年30〜40兆円の借金に慣れてしまった」状態を「お子さんやお孫さん名義のクレジットカードを親や祖父母が勝手に使っている状況に似ている」と指摘し、社会保障と税の一体改革を実現していきたいとの考えを示した。
この他にも、中国の経済発展が日本の好機ともなる一方、急速な軍事力の増強や活動範囲の拡大が周辺国の「リスク」でもあると指摘。
その上で、我が国自身の防衛努力と並び、日米同盟が「日本の安全保障と外交にとって最大の資産であり基盤」であると述べ、日本の安全・繁栄に不可欠であり、更には世界の安定と繁栄のための「国際公共財」とも断言した。
また、2009年衆院選での民主党マニフェストについては、衆議院の任期満了まで折り返しを過ぎ、党内での議論を尽くし、「やる」「やらない」ではなく、政策の優先順位や進め方の問題について「聖域なく見直すべき」との考えを示していた。
野田氏の政権構想全文は10日発売の「文藝春秋・9月特別号」に寄稿されている。
・文藝春秋・9月特別号
・野田新代表「怨念を超えた政治」訴える 海江田氏との激戦を制して - BLOGOS編集部
30日朝の閣議で菅政権は総辞職を決定。午後には衆参両院本会議で野田新代表が第95代首相に指名される見通しだ。
その後の動きとして野田氏は「幹事長などの骨格を30日に決めたい」としているものの、組閣は週末以降になるとの報道が優勢であり、その間は憲法の規定により菅内閣が「職務執行内閣」を務める。
閣内人事の行方に注目が集まる一方、やはり新首相がどのような政権運営を目指すのか、この日本についていかなる現状認識を持っているのかは国民として気になるところである。
野田新代表は文藝春秋9月号に「わが政権構想」と題する論文を寄稿しており、この内容が新政権を読み解くヒントとなっている。
今回はその抜粋を改めて紹介していく。(BLOGOS編集部・野村)
「現実を直視し、困難な課題から逃げない、先送りにしない」
震災から5ヶ月、その間政権の中で国難に向き合ってきた野田氏は、「民主党政権は言葉が先行するだけで政策が実行されていない」と、内閣に厳しい視線が向けられていると認識。
その理由を、政治が「やるべきことをやってない」と国民が思っているからだと分析する。
「政治家に求められているのは、現実を直視し、困難な課題から逃げない、先送りにしない姿勢です。」と語るのは、菅内閣で働いて湧いてきた実感なのだろうか。
日本人の力を信じ、「なでしこジャパン」のように最後までチーム一丸となって挑戦を続ければ、必ず日本再生の道は開けると述べ、いざとなれば「先頭に立つ」と断言していたが、今回早くもその時が来たことになる。
「産業空洞化を防ぎ、経済を再生するために為替介入」
この政権構想の中で、野田氏は少子高齢化や経済停滞など、震災前から解決すべき課題は目前に迫っていたと指摘。
過去20年間、製造業が海外に生産拠点をシフトするなどの結果、「約500万人の雇用が失われ」、その「失われた雇用」が国内の需要の落ち込みにつながり、デフレ経済を進行させたとの認識に立ち、財務大臣として必要な政策を懸命に進めてきたと語る。
その上で、震災直後の3月18日に財務省・日銀が実施した為替介入は「その一例」として決断したとしている。
巨大な為替市場を相手とするため、市場に強いメッセージを伝えるために断続的に先進各国に働きかけ、11年ぶりの協調介入への合意を得ることが出来たとその実績を強調する。
また、民主党政権が昨年策定した、今後の経済成長のための「新成長戦略」の実行が遅れていることを指摘し、日本経済の競争力強化に向けた対策は出揃っているものの、その実行が遅れているとの見解を述べた。
これについては「奇策はいりません。実行こそ最大の戦略です。」と、菅氏へのメッセージともとれる表現で強く語っている。
なお、野田氏は最近の円高への対応でも為替介入や24日に設立した緊急対応基金に加え、3次補正予算などで、さらなる円高対策にも取り組む考えを示しているとされる。
「短兵急に原発輸出を止めるべきでない」
国内産業の衰退を「第一の危機」と捉える野田氏は、第二の危機として、「電力・エネルギー問題」を掲げ、原子力の「安全神話」は崩れたとし、最優先すべきは福島第一原発の速やかな収束であると位置付けている。
原発事故で生活の場を奪われた福島県の方々や、被災地以外で被害を受けた方々へ適切な賠償がなされるよう万全を期すのが「国として当然の責務」と語る。
また、直近の論点としては原子力や、当面の電力不足への対応について、「現在から3年後までの短期の工程表を示して行動すること」だとする。
震災後に政府が混乱を引き起こした首都圏での計画停電対応については、「電力は日本社会の『血液』そのものであり」、「その現実をまざまざと見せ付けた」と総括している。
その上で、「政府には電力を安定的に供給する体制を作る責任がある」との立場を表明し、「当面は(原発)再稼動に向けて努力することが最善の策ではないでしょうか」と、原発再稼動への支持を明らかにしていた。
この点、当面は経済産業大臣の人事がどうなるかは注目される。
「原発再稼動に向けて努力する」―。
野田氏はそのためにまずは、原発のストレステストといった規制体系の整理や、原子力安全・保安院と原子力安全委員会の統合といった規制監督体制の再編も必須とし、国内外の英知を集める新たな仕組みも検討すべきと語る。
そうした「器」をまず整えた上で、首相が自ら原発立地の自治体に自ら足を運び、意見を直接聴き、自らの言葉で語る真摯な姿勢こそが電力危機を回避する第一歩であると、菅首相を間近で見てきた中での思いが綴られている。
また、日本の原発輸出については、唯一の被爆国として原子力の平和利用の技術を蓄積してきており、相手国はそれを信用して導入することを選んでくれたのだから、今回の事故を契機にその危険性と安全対策を伝えた上で相手国に判断してもらうことが、震災後の日本だからこそできる国際貢献でもあると述べ、「短兵急に原発輸出を止めるべきでない」との考えを明らかにした。
これらの他、エネルギー問題については、新たな原発の増設が難しいのは「明らか」と表現しながらも、少なくとも2030年までは一定割合は既存の発電所を活用し、原子力技術を蓄積することが「現実的な選択であろうと思う」と述べた。
また、日本の自然エネルギー比率が9%(水力含む)である現状を、2020年代までには20%まで上昇させるのが「当面の目標」とも語り、革新的な技術開発や省エネを「創エネルギー」と位置づけ、こうした変化が日本の新たな「稼ぎ手」となるとした上で、「今回の危機は長い目で見ればチャンスとなる可能性を秘めている」としている。
財政が「最大の危機」
第三の危機は本人が「最大の危機」と位置付ける「財政」。
阪神・淡路大震災から16年で借金が2.5倍に膨れ上がった現状を憂慮し、「もはや、大震災を理由に、財政健全化への取組みを先延ばしすることは出来ない」と財務相を経験してきた立場をこう述べた。
現在の日本の「毎年30〜40兆円の借金に慣れてしまった」状態を「お子さんやお孫さん名義のクレジットカードを親や祖父母が勝手に使っている状況に似ている」と指摘し、社会保障と税の一体改革を実現していきたいとの考えを示した。
この他にも、中国の経済発展が日本の好機ともなる一方、急速な軍事力の増強や活動範囲の拡大が周辺国の「リスク」でもあると指摘。
その上で、我が国自身の防衛努力と並び、日米同盟が「日本の安全保障と外交にとって最大の資産であり基盤」であると述べ、日本の安全・繁栄に不可欠であり、更には世界の安定と繁栄のための「国際公共財」とも断言した。
また、2009年衆院選での民主党マニフェストについては、衆議院の任期満了まで折り返しを過ぎ、党内での議論を尽くし、「やる」「やらない」ではなく、政策の優先順位や進め方の問題について「聖域なく見直すべき」との考えを示していた。
野田氏の政権構想全文は10日発売の「文藝春秋・9月特別号」に寄稿されている。
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