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「安倍窮地」「蓮舫・稲田辞任」でどう動く政局「夏の乱」 - 青柳尚志

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民意糾合か「社会党2.0」か

 さて蓮舫代表の辞意表明は、夏場のアイスクリームのように溶融寸前だった民進党にとっては、最後の希望となる。辞意表明のタイミングが、安倍首相が内閣改造を予定している8月3日の直前だったことは、世論の関心を政権の側に向けさせない方策だったとすれば、なかなかのものである。ほとんど誰も関心を示さなかった民進党の代表選にも、突然の代表辞任というニュースの後だけに、世間の関心を呼ぶことが出来る。

 安全保障で国民の不安を払拭し、経済運営でも現実的な政策を提示する人物が後任の代表になれば、小池新党とスクラムを組む道も開けよう。自民党を離れた民意を糾合することで、政治の世界にも緊張感が戻って来ることが期待される。反対に、共産党とのズブズブな関係を清算できず、政府糾弾の反対政党の蓮舫カラーを引き継ぐならば、事態はあまり変わり映えしない。

 たとえば、「保育園落ちた 日本死ね」が流行語大賞(ユーキャン)に選ばれた際、嬉々として表彰式に出席した山尾志桜里衆院議員が党の要職に付くような体制となるなら、「蓮舫2.0」となってしまう。保育園の待機児童問題と「日本死ね」を結びつける発想に拍手を送るリベラル(水割りした左派)が多いのは確かだが、危うさを拭えない街行く人たちは、それ以上に多い。新体制の下で年を越せたとしても、その際の民進党は「社会党2.0」となっていることだろう。

自衛隊の「ソフトなクーデター」?

 恐らく政界の夏の乱は、ポスト安倍をめぐる自民党内の熾烈な権力争いである。いうまでもなく安倍首相は窮地に立っている。2007年には社会保険庁の職員たちが、自爆テロさながらに捨て身で年金情報のリークを行ったように、今回の前川の乱では、文部科学省の職員たちが加計関連情報をリークしたとされている。東芝の粉飾決算が経営陣同士の暴露合戦で明るみに出たのと同じ構造だが、エリート意識を傷つけられた官僚の逆恨みほど恐ろしいものはない。

 文科省官僚の自爆テロに対しては何の同情も感じないし、いっそのこと社保庁のように独立行政法人にでもした方がよいとも思われるが、より深刻なのは、陸上自衛隊の幕僚たちと稲田防衛相の対立だろう。発端となった南スーダンに国連平和維持(PKO)部隊として派遣された自衛隊の「日報」があった、なかったの問題。「日報」に「戦闘」の文字が記されていることから、「自衛隊が海外で戦闘に巻き込まれる」との批判を恐れて、「日報」がなかったことにしたが、後に出てきた。そんな話だった。

 陸自の現場が隠すことを提案したのか、大臣がその過程でどれだけ絡んだか。絡んだのに後々になって、現場にすべての責任を押し付けたのか。その辺が争点になっているのだが、やはり「大臣の腹が座っていなかった」と言わざるを得ない。「自衛隊は戦闘に行ったのではない。平和を回復させるために行ったのだ。だが現地の情勢は極めて不安定で、隊員からすれば『戦闘』という実感を抱いたかもしれない。それが問題ならば、他の国に平和維持の仕事を押し付けて、自分だけ引き揚げたらよいというのか」――。

 街の居酒屋でもこのくらいの議論はするし、それが街行く人たちの気持ちというものだろう。「戦闘」かどうかの議論で大臣に最も欠けていたのは、危険を顧みず現地で仕事をした自衛官たちへの思いやりである。国連第一主義を唱えるリベラルたちが、自らを安全地帯に置く平和論であるのはいいとしても、積極的な国際貢献を唱えていたはずの安倍政権が、他の国に平和維持の仕事を押し付けたのは決して褒められたことではない。

 ジョージ・オーウェルが喝破した平和主義者の欺瞞、つまり「他の人が危険に直面するから、安楽椅子の平和を唱えていられる」ことが、クッキリと浮かび上がってしまったのだ。そんな大臣に対し、現場の制服組が怒りを募らせたとしても不思議ではない。結局、岡部俊哉陸上幕僚長辞任など制服組も血を流すことになったが、稲田防衛相も辞任の道連れとなった。

「日報」問題での情報リークは、制服組による大臣の罷免要求、言い換えればソフトなクーデターとみることができる。その安倍政権が自衛隊の存在を憲法に明記する憲法改正を唱えても、味方からの強い支持を受けるのは難しかろう。

残るは外交の大博打のみ

 かくして、安倍政権は完全な八方塞がりに陥っている。日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)の大枠合意や、労働生産性向上のための脱時間給の取り組みなど、政権の経済運営は相当に評価できると思われる。少なくとも何の現実的な対案も示さない民進党よりは。それでも、いったん政権に倦んだ民意が戻って来るとは考えにくい。首相に残されたカードは、外交の大博打だろう。2002年9月に平壌に飛び、日朝首脳会談に臨んだ小泉首相の故事が思い起こされる。安倍首相が金正恩(キム・ジョンウン)と握手して、米朝首脳会談の橋渡しをするようなら――。夏のうたた寝のようなことを記すのはここまでにして筆を置くこととしよう。

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