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「大本営発表」を続けるマスメディアの大罪

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新聞は8割が発表報道


司会:メディアの現状を変えるにはどうしたらいいか。

日隅:良心的な記者さんと話していると、精神論的なところに落ち着くところが多いですね。記者の自覚とか。まず精神論では変わらないと認識することがスタートかなと。例えば、可視化の問題。これもいつになっても変わらない。方法論、システム論を変えるところにたどり着かない。どんなおかしな警察官が出てきても、違法な取調べが出来ないシステムを作らなければいけない。民主主義は人気主義だから、どんな人が権力を握っても、ちゃんとできるシステムを作らなければいけない。

司会:高田さんは100人程度の新しいメディアを作ったほうがいいとの事ですが、それで何が出来るのでしょうか?

高田:一定程度のスキルを持った集団というのが、オルタナティブなメディアを作るには必要だと思ってます。ただ、今の既存メディアの組織を変えることが出来るかできないかで言うと、精神論では絶対に変えられない。良心的な記者がいくら頑張ってもやがて疲れて元気を無くてしまう。過去幾度も繰り返されてきた。福島原発の問題で何が明らかになったかというと、いかに日本のメディアが戦後ずっと発表漬けになっていたかという事。今に始まったことではない。システムが構造化されている。

岩瀬達哉さんというジャーナリストが書かれた本に「新聞が面白くない理由」(1998)というのがある。その中に出てくる話で、当時、朝・毎・読の新聞記事の紙面の面積を測ったら、発表記事、および発表を加工したものがだいたい7割から8割、それから「どうする情報源」という元共同通信社論説副委員長の藤田博司さんが書かれた本で、大学のゼミ生が測定した所、発表記事は8割から9割だったという。私の実感としてもそうです。新聞社に入った25年前から新聞というのはほとんど発表ものなんです。それがシステムとして刷り込まれていますから、僕らの日々の仕事は発表ものをどう書くか。

ただ昔はまだ自由度がありましたから、発表の裏側になにがあるか掘り起こすことが出来たのですが、今はどんどん許容量が少なくなってきて、言われたとおりに書くことがシステムとして出来上がっている。あとは、私が入った頃、25年前の北海道新聞本社の警察産業記者ってのは7〜8人。25年後の今も7〜8人。これだけ世の中不況になって、労働問題は沢山ありますよね。賃金不払いとか。でも、労働基準監督局、労働基準監督署の専属記者ってのはいないんです。なぜか、それはおそらく労基署に記者クラブがないからです。逆説的な言い方をすれば。労基署に記者クラブがないから、その問題は扱わない。入国管理局には記者クラブが無いから、不法就労の問題は扱わない。じゃあなぜ、警察の事件・事故はこんなに大きく扱われるかというと、そこに記者がいるからです。記者クラブがあるからです。

私は2003年から2005年に北海道警察の裏金を問題にして、メディアが変わる最後のチャンスだと書きました。あれから7年、8年たって、まだチャンスがあるのか分かりませんけど。だから一時的に調査報道でああいうことが出来ても、警察にはこんなに記者は要らないのではないのか、首相官邸に発表物を追いかける記者はあんなに要らないんじゃないか、もっと自由に動く記者を増やさなければいけないんじゃないか。そういう組織の中身を変えないとどうしようもない。で、そういう決断を出来るのはトップだけなんです。組織ですから。現場の記者に言っても精神論で「頑張ります」しか言えない。あ取材の配置とか記者の配置とか、戦後50年変わってないですよ、おそらく、数としては。それを変えられるなら組織にも可能性はあるかもしれない。非常に少ないですけど。それがダメなら新しい対抗組織を作るにしても、スキルをもったプロフェッショナルが何十人か百人か必要なイメージがあります。

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