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教科書によって違う“終戦の描写” 育鵬社と東京書籍で比較してみた

 日本が太平洋戦争で敗戦を迎えてから、66年目の夏を迎えた。戦争を後の世代にどう語り継ぐのを考えるときに、一つ思い浮かぶのは歴史教科書だ。「新しい歴史教科書をつくる会」元会長らが執筆した育鵬社版の教科書に対して、日本共産党などからは「侵略戦争を美化している」との批判も出ているが、実際にはどうなのか。中学生向け教科書での終戦に関する記述を、最もポピュラーと言われる東京書籍版と比較してみた。(BLOGOS編集部・安藤)

育鵬社(上)では原爆ドームの写真はごく小さいが、東京書籍版(下)では焼け野原になった広島市街の写真として大写しになっている 写真一覧

「新しい日本の歴史」(育鵬社)P221より

1945年8月6日、アメリカは完成したばかりの原子爆弾(原爆)を広島市に投下しました。人類史上初の核兵器は上空で炸裂し、想像を絶する高熱と爆風、そして放射能が約14〜15万人の一般市民の命をうばいました。その3日後、原子爆弾はふたたび長崎に投下され、約7〜8万人が犠牲となりました。

ソ連は8月8日に日ソ中立条約を一方的に破棄して日本に宣戦布告し、満州や朝鮮、南樺太、千島に侵攻しました。

相次ぐ悲報の中、政府では昭和天皇の臨席のもと、ポツダム宣言の受け入れをめぐる会議が開かれました(御前会議)。賛否が同数に分かれたため、首相の鈴木貫太郎は天皇の判断(聖断)を仰ぎ、天皇はポツダム宣言を受諾し降伏するという外務大臣の意見を支持しました。8月15日正午、ラジオで天皇の声を録音した玉音放送が全国に流れ、戦争の終結が知らされました。日本軍は武器を置き、戦争は終わりました

「新編 新しい社会 歴史」(東京書籍)P195より

1945年3月、アメリカ軍は沖縄に上陸し、激しい戦闘が行われました。沖縄の人々は、子どもや学生をふくめて、多くの犠牲者を出しました。沖縄戦のあと、アメリカ軍は、九州に上陸する用意を進めました。同時に連合国は、日本との戦争を終わらせる準備も進め、7月には、日本に無条件降伏を求めるポツダム宣言を発表しました。

さらに、アメリカは、原子爆弾を8月6日に広島に、9日長崎に投下しました。その間、ソ連も日ソ中立条約破って参戦し、満州・朝鮮に侵攻してきました。こうした中で日本は、8月14日、ポツダム宣言を受け入れて降伏することを決定し、15日、天皇は、降伏をラジオ放送で国民に知らせました。こうして、数千万人の死者を出したといわれる第二次世界大戦が終わりました。日本が占領した東南アジア諸国や、朝鮮、台湾などの日本の植民地は解放され、独立に向かいました。

“天皇の英断”か原爆ドームか

 こうして比較してみると、アメリカが原子爆弾を落とし、ソ蓮が満州や朝鮮に侵攻するなど戦局の悪化が決め手になり、ポツダム宣言を受諾して日本は無条件降伏した……という流れは、どちらの教科書も共通していることが分かる。その一方で決定的に異なるのは、昭和天皇の判断がどこまであったかというという描写だ。
 
 育鵬社版では、ポツダム宣言受諾は昭和天皇の最終判断の結果だったと明確に書いている。横のコラムでは、「御前会議での昭和天皇の発言」として、「私は自分がどうなろうとも国民の命を助けたい」などと触れている。これに対して、東京書籍版では政府内でどういう検討をしたのかには一切触れていない。昭和天皇は、「降伏をラジオ放送で国民に知らせました」という一文に登場するのみだ。

 また原爆ドームの扱いも好対照。小さい写真であっさりと取り上げた育鵬社版に対して、東京書籍版では焼け野原になった広島市街の様子とともに大写しにしている。広島の歴史も別ページで詳しく書いており、戦争の悲惨さをより強調した格好になっている。
 
 「ポツダム宣言をめぐる天皇の英断」を強調する育鵬社に対して、「広島と長崎への原爆による被害」を強調する東京書籍。教科書会社によって歴史の解釈や、切り取り方が微妙に異なるようだ。歴史教育はどうあるべきなのかを考える上で、興味深い結果となった。

【関連情報】
 8月5日、東京・武蔵村山市教委は臨時会を開催し、市立中学校で2012〜15年度に使用する中学生向けの歴史と公民の教科書について、育鵬社版を採択した。同社版の教科書の採択は横浜市や東京都大田区に続き、全国で8例目。

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