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政治思想史家・藤田省三の言葉と菅直人の広島演説

 戦後の政治思想家を代表する丸山眞男の弟子に藤田省三という人がいる。

その藤田氏の言葉の中に次のような趣旨の言葉があるという。
・・・動物は遺伝的にプログラムされているので、してはならないことはしない。しかし人間は放って置くとしてはならないことをするから「内側からのブレイキ」として「倫理」が必要である。倫理的ブレイキとは何か。
基礎は反省能力、自己批判能力である。そしてこの自己批判能力を一番欠いている国民は、僕の知っている限りでは、日本国民をおいてない。あるのは「自己愛」、つまりナルシズムだ。この「自己愛」こそ結果として「国家主義」、「会社人間」を生む・・・
 この藤田省三氏の言葉を知ったのは、「憲法9条―世界へ未来へ 連絡会」機関紙「9条連ニュース」7月20日の中に見つけた影書房編集者・松本昌次氏のコラムであった。

松本氏はこの藤田省三の言葉を引用し、今度の福島原発事故で明らかになった日本の原発政策の矛盾と事故後の対応の迷走について、今藤田氏が生きていれば、倫理的ブレイキの利かない自己愛のこの国の指導者、会社人間、それを許す国民をどう思うだろうか、と書いている。

それはその通りである。

しかしそこまで日本人を「自己批判」しなくてもいいだろう。

世界を見渡せばどの国も問題を抱えている。中国も米国も欧州も、あの平和と思われていたノルウェーでさえも、いま国を揺るがす大問題に直面して苦しんでいる。

パレスチナ問題に至っては言うに及ばない。

人間はひとしく倫理的ブレイキが必要であるのだ。

「おそらく日本国民の倫理的ブレイキを唯一示したものは日本国憲法の前文と憲法9条だろう、このことは藤田省三も異論はないだろう」、

 と述べる松本昌次氏の言葉は正しい。

「戦争放棄と原発放棄を世界に発信することこそ倫理的ブレイキを取り戻すことだ」

 と唱える松本昌次氏の言葉はまったくその通りだ。

 今の日本を救ってくれるのはこの倫理的ブレイキである。

 そしてそれは世界を救う普遍的倫理ブレイキだ。

 なぜ日本人はこの事に気づかないのだろうか。

 菅首相が6月のサミットでこの倫理ブレイキを世界に呼びかけていたならば、世界は日本を見直しただろう。

 日本国民も目覚めたであろう。

 今のような政治の混迷は起きなかったに違いない。

 果たして菅首相は8月6日の広島で倫理的ブレイキを自らにかけられるのだろうか。

 借り物やごまかしの言葉ではなく、本物の言葉を自分のものとして語れるか。

 最後のチャンスだ。

 私はそれを注目している。

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