- 2017年07月28日 10:30
「自民も民進もイヤ」受け皿は小池新党か
2/2■「都民ファースト大勝」の内実
こうした中でにわかに注目が集まっているのが「都民ファースト」ならぬ「国民ファースト」である。都民ファーストの会が、都議選での地滑り的勝利を受けて、今度は国政に打って出るのではないかという話である。
実際、小池知事も都議選後「国民ファースト」という言葉を口にしているし、小池氏の側近ともいえる若狭勝衆院議員も国政への進出の可能性について報道番組で言及している。自民党の大敗、民進党の惨敗に終わった今回の都議選、確かに自民党で民進党でもない有権者の受け皿として都民ファーストが登場したと考えられなくもない。しかし、得票数と得票率さらには投票率に着目すると、必ずしもそうともいえないことが分かる。
まず、都民ファーストの会の合計得票数は188万4,029.850票、得票率にして33.68%である。一方、大敗したとされる自民党はといえば、合計得票数126万101.444票、得票率は22.53%である。ちなみに、民主党から自民党へ政権交代した2012年の衆院選で大勝した時の自民党の得票率は小選挙区では43.01%だった。
■「都ファ」の得票率はそれほど高くはない
国政選挙と地方選挙であり単純比較はできないが、今回の都議選での都民ファーストは大勝という割には、得票率はそれほど高くはないということが分かる。つまり、都民ファーストに対しては前評判ほどの期待も支持も集まらなかった。むしろ有権者をシラケさせ、「政治を諦め」させてしまったといえるのではないかということである。
このことは投票率にも表れている。今回の都議選の投票率は51.28%、前回は43.50%なので7ポイント近く上昇しているが、前々回、2009年の都議選は54.49%であり、今回よりも3ポイント以上高い。この時の選挙は衆院選の前哨戦と位置付けられ、自民党が大幅に議席を減らし、民主党が議会第1党となった選挙である。民主党への投票は半ば自民党への批判票でもあった。その前の05年の選挙が43.99%、その前の13年が50.08%、1997年に至っては40.80%であるから、09年の投票率がこの十数年では最も高い数値である。
今回の都議選の投票率は決して高いというわけではない。加えていえば、50%強でしかないのであるから、残りの50%近くは投票していないということである。そして、この投票していない人たちこそ、都政に関して「政治を諦めた」人たちであるといえよう。
■「小池劇場」の国政進出はまだ先か
自民党もダメ、民進党にも期待できない。かといって都民ファーストに望みを託すかといえば、小池知事人気にあやかっただけの緑の集団、しかもついこの間まで自民党や民進党だったのに看板を架け替えだだけの人も多くいる、そんな地域政党に都政を任せることなんてできない。公明党も学会員ではないし、共産党もなんとなく。無所属は、海のものとも山のものとも……投票に行かなかった背景・理由は、おそらくそんなところだろう。
要するに都民ファーストはまだ第三極たりえていないし、反自民票を根こそぎ取っていったというわけではないということである。別の言い方をすれば、反自民の受け皿にすらなっていないということである。
では、都民ファーストが「国民ファースト」になったらどうだろうか?
結論からいえば、「国民ファースト」は国政進出への意思の表れではなく、盛り上がった支持を保たせるための、カタチを変えた小池劇場であるように思われてならない。小池知事も馬鹿でもなければ軽くもない。都民ファーストへの支持がうつろいやすものであることを重々承知していて、支持を確実なものとし、それをしっかり固めていくため、これからしばらくは新人都議の引き締めと東京大改革の着実な推進に専念していくはずだだろう。無党派層が増加の一途をたどっていることも踏まえれば、当然のことであろう。
小池知事は都知事選に始まる小池劇場を何度も繰り返しつつ支持を広めたのみならず、その基盤を着々と固めてきているように思う。「国民ファースト」はその延長線上にありうる選択肢ということではあっても、東京都にとっての一大行事である東京オリンピックを前に都政を放り出して国政へなどということはありえない。小池都知事は慎重である。これは永田町界隈で関係者から聞かれる話でもある。
さて、そうなると自民党でも民進党でもない有権者の受け皿となる勢力の形成は絶望的なのだろうか? 可能性として次の2つが考えられる。
■民進党リベラル派が第三極の核に?
1つ目は、共産党の第三極化である。共産党は、それまでの革命政党的なイメージからソフト路線へ転換を図り、反自民票や民進党離れ票を上手に取り込んで、ここ数年の選挙で着実に議席数を増やしてきている。その政策も、共産主義的なものではなく、地域や共同体を守ろうという、本来は自民党が主張すべき保守的なものが中心になってきている。これで名称を「共産党」から「労働党」なり「共同党」といったような名称に変更すれば、指示は一気に拡大する可能性さえある。スウェーデンでは共産党が左翼党と名称を変更し、連立政権入りを果たしている。
しかし、共産党にとって「共産党」という名称がアイデンティティーの一つであり、その変更は共産党の在り方そのものを根本的に変える一大事である。革命の闘士のような古参の党員が数多くいる現状では難しいと考えられ、共産党の躍進もある程度のところで頭打ちとなるだろう。したがって、この可能性は当面は低いと思われる。
2つ目は民進党の分裂による第三極の誕生である。支持率が危険水域に入った安倍内閣が終焉を迎える日はそう遠くはないだろう。ポスト安倍は麻生内閣とも岸田内閣ともいわれている。良くも悪くも安倍1強に対抗することを旗印にまとまっていた民進党、それ以外に明確な軸を打ち出せていない中で好敵手がいなくなれば、一気に求心力を失って遠心力が働き始めるだろう。
そうなれば右(前原、細野ら)、左(旧社会党系)、リベラル系(旧維新系および玉木雄一郎周辺)の3つ程度に分裂する可能性があるように思う。このうちリベラル系が第三極として新たな受け皿になるのではないかと考えられる。要は旧第三極が旧民主党の一部を取り込んで再独立するということで、この可能性が一番高いのではないか。
政治への諦めを期待に変えさせることができるか、特に野党にとっては正念場である。
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室伏謙一(むろふし・けんいち)政策コンサルタント。1972年生まれ、国際基督教大学(ICU)教養学部卒業、慶應義塾大学大学院法学研究科修了(法学修士)。1998年総務庁(当時、現総務省)入庁。その後、三井物産戦略研究所、衆議院議員政策担当秘書を経て、2014年より政策コンサルタントとして活動。政財官での実績を生かし、国会議員、地方議員の政策アドヴァイザーや民間企業向けの政策の企画・立案の支援、政治・政策関連の執筆活動等に従事。
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