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高卒と専門卒「年収」はどちらが高いのか

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■意識高揚装置としての専門学校

しかし、以上は経済的側面に限った話である。ここで意識面まで広げて調査データを丁寧に読み込むと、図表3の結果にたどりついた。これは「自律性得点」と「適合性得点」の2つを指標に、各学歴がどのような心持ちで仕事に臨んでいるのかどうかを捉えようとしたものだが、男女ともに専門学校卒の【要資格職】が極端なポジションに位置していることがわかるだろう。

すなわち、男女に関係なく、どの層よりも、高い意識をもって働くことができているのが、【要資格職】の卒業生なのだ。彼/彼女らは、「自分の力で仕事をする」「この仕事をしている自分が好き」といった意識を、強く感じながら働いている。

「稼ぐこと」と「充実感に満たされること」――その両方が伴う働き方ができるにこしたことはない。しかし、もし、そのどちらがより大事かという質問を投げかけられたとき、後者を選ぶ者も少なくないのではないだろうか。専門学校を卒業し、「手に職」を付けた場合に得られるメリットは、資格領域に限定される話ではあるが、女子であろうと、そして男子であろうと、高い就業意識を持ちながら働けるという点にある。

■「手に職」には過大評価がある

専門学校卒業生の働き方を糸口に、日本社会における職業教育がどのような意味を持つのかを考えてきた。経済的・非経済的側面双方の分析からは、効果の範囲のようなものがみえてきたように思う。職業を意識した教育には、たしかにメリットもあるが、限界もある。そして限界という点でいえば、男子の【非資格職】に目立った効果が認められなかったという結果にスポットをあてておく必要があろう。多くの企業が評価しているのは、職業教育以外のところにあることを示唆する結果だからだ。

冒頭で述べたとおり、職業教育機関に期待を寄せる声は止むことなく、数年後には「専門職大学」「専門職短期大学」も誕生する。ただ、ここで本連載の目的である「エビデンスに基づいた学歴論」を展開すれば、私たちが「手に職」という言葉に吹き込む希望には過大評価の部分があるのではないだろうか。新たな教育機関も、同時にいまの労働市場の状況を変えるような策を講じなければ、存在感の薄いものになりかねない。

学歴がどのように機能するかは、何を教えるかという点のみならず、社会の側がどのような知識に価値を見出しているのかという点もかかわりながら定まっていく――職業教育の現状分析は、この点を改めて自覚させてくれるケースだといえる。

さて、次回は「大学での専門教育」について扱うことにしたい。「タコつぼ化」と揶揄されることも少なくない専門教育であるが、データに語らしめれば、そのタコつぼ教育には意外な効果がある。工学系研究室教育を事例に、一般的な理解を超えたひとつの世界を描き出したいと思う。

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濱中 淳子
東京大学 高大接続研究開発センター 教授。1974年生まれ。2003年東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。07年博士(教育学)取得。17年より現職。専攻は教育社会学。著書に『「超」進学校 開成・灘の卒業生』(ちくま新書)、『検証・学歴の効用』(勁草書房)などがある。

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(東京大学 教授 濱中 淳子)

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