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【読書感想】バッタを倒しにアフリカへ

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バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)


Kindle版もあります。

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

内容(「BOOK」データベースより)
バッタ被害を食い止めるため、バッタ博士は単身、モーリタニアへと旅立った。それが、修羅への道とも知らずに…。『孤独なバッダが群れるとき』の著者が贈る、科学冒険就職ノンフィクション!

 「アウトドア研究者もの」には、「当たり」が多いんだよなあ、と思いながら読みました。
 著者の前野ウルド浩太郎さんは、新進気鋭の昆虫学者です。
 ウルドって、ハーフなの?と思ったのですが、その名前のことも、この本のなかで書かれています。

 私はバッタアレルギーのため、バッタに触られるとじんましんが出てひどい痒みに襲われる。そんなの普段の生活には支障はなさそうだが、あろうことかバッタを研究しているため、死活問題となっている。こんな奇病を患ったのも、14年間にわたりひたすらバッタを触り続けたのが原因だろう。

 全身バッタまみれになったら、あまりの痒さで命を落としかねない。それでも自主的にバッタの群れに突撃したがるのは、自暴自棄になったからではない。

 子供の頃からの夢「バッタに食べられたい」を叶えるためなのだ。

 小学生の頃に読んだ科学雑誌の記事で、外国で大発生したバッタを見学していた女性観光客がバッタの大群に巻き込まれ、緑色の服を喰われてしまったことを知った。バッタに恐怖を覚えると同時に、その女性を羨ましく思った。その頃、『ファーブル昆虫記』に感銘を受け、将来は昆虫学者になろうと心に誓っていたため、虫にたかられるのが羨ましくてしかたなかったのだ。

 虫を愛し、虫に愛される昆虫学者になりたかった。それ以来、緑色の服を着てバッタの群れに飛び込み、全身でバッタと愛を語り合うのが夢になった。

 「夢」っていうのも、人それぞれ、なのだなあ……
 なんて感心するのと同時に、それを「若気の至り」だと処理せずに、ずっと追いかけてきた著者は本当にすごいな、と感心してしまいます。

 著者は、昆虫学者として生きていこうとしているのですが、そこには、生活の問題がのしかかってくるのです。
 昆虫の研究者としていまの日本で食べていくには、大学や研究機関でポストを得るしかないのです。
 そのためには、評価される論文を書かなくてはなりません。
 それしか「バッタの研究で食べていく道」はない。

 対象がゴキブリとかであれば、殺虫剤の会社などでニーズがあるのかもしれませんが、いまの日本でバッタによる被害というのは、現実的なものではありません。
 僕も、光栄の『三國志』というシミュレーションゲームで、「アア、イナゴダ……」と、自分の国が蹂躙されるシーンを思い浮かべることができるくらいです。

 しかしながら、アフリカでは、バッタによる農業被害は現在でも深刻なものなのだそうです。
 その一方で、環境の過酷さもあるのか、自分の国の研究室で遺伝子解析をする研究者は少なからずいるのに、現地でフィールドワークをやる人は、あまりいないのです。
 そこで、著者は一念発起して、西アフリカのモーリタニアの研究所に留学し、さまざまな文化の違いや思うようにバッタに遭遇できないことに戸惑いながら、バッタの研究を続けていきます。

 これを読んでいると、やっぱり、料理ができるっていうのは、どこに行っても武器になるのだなあ、と、自炊をほとんどしない人間としては反省してしまいました。
 著者は料理が得意で、現地の食材や食べ物にも積極的に挑戦しています。
 「食の問題」って、海外で生活をするときに、けっこう大きなハードルなんですよね。

 僕はKindle版で読んだのですが、数々の写真、とくに、バッタの群れの写真には、圧倒されました。なんなんだこの密度は。
 目の前にこんなのがたくさん飛んできたら、そりゃもう逃げるしかないよ。

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