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円谷プロを襲うかつての闇

「顎が尖っている」「スーツじゃなくてボディペイント!」と、まるでBLギャグもののごとき突っ込みどころで、悪い意味で話題を提供してくれているものと言えば、中国が発表したウルトラマン(?)であります。

円谷プロ、中国企業が製作発表したウルトラマン作品に「到底認められない」

もっとも、このウルトラマンはあくまでイベント用で、登場作品自体はフルCGアニメであるために登場するウルトラマンとは外見が大きくことなります。単に予算をケチったためにこのような外見になったのでしょう。
しかし、このウルトラマン、円谷プロに全く断りなく中国の広州藍弧文化伝播有限公司が作る映画に登場させられるもので、当然ながら円谷プロ側は「認められない」と声明を発表、断固抗議する構えをみせています。ちなみに中国側の作品はウルトラマンは主役ではなく、日本でも公開されたアニメ映画「ドラゴンフォース」の続編に半分ゲストのような形で登場するものなので、おそらく交渉しても円谷プロの許可は下りなかったものと思われます。

中国とキャラクターと言えば、かつては日本やアメリカの人気キャラクターを無断で使った遊園地が話題となったように、キャラクターの使用権に対しては全く気にしないお国柄。今回の件も褒められたものではないです。しかし、ネットに乗っている情報はともかく、先ほど見た地上波テレビのニュースでは広州藍弧文化伝播有限公司も「日本以外の国でウルトラマンを使用する権利がある、という契約書がある」と強気の構えを見せているようです。どうやら以前タイと円谷プロの間で揉めた権利を譲り受けたものと思われますので、そう簡単に解決しそうにありません。

タイともめた、というのは、かつてタイに存在したチャイヨー・プロダクション問題のことです。1970年代のころまでは権利もいろいろいい加減で、ウルトラマンなんかも結構無断でマンガに登場したり(有名作品では「Dr.スランプ」。当時の版では平気でウルトラマン・ゴジラ・ガメラなどが出てました)してましたが、全く問題になることはありませんでした。当時の社長が円谷プロ初代社長、円谷英二のもとで技術等を学んだ人で、それ以降も円谷プロとの付き合いは続いたようです。その縁で1974年にウルトラマンを使った映画を製作、日本でも1979年に「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」のタイトルで吹き替え版が上映されました。

主題歌は当時アニメ「ザ☆ウルトラマン」での歌っていたささきいさお氏が同時上映の「実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン」の両方を担当する毛色の違う作品となっています。地底からよみがえった怪獣軍団が登場するのに、あきらかに宇宙怪獣なタイラントやドロボン、挙句の果てにはウルトラ怪獣ですらないダストパン(本来の登場作品はミラーマン)が出てくるあたり、かなり適当に作った後が見られたり、ウルトラ兄弟がゲスト扱いで怪獣を倒す主役ヒーローはハヌマーンである点、怪獣と直接関係ないところで神が登場する点など、日本人が見るには違和感の多い作品となっています。ちなみにハヌマーンはヒンドゥー教の神なのですが、作中では「仏様」という言葉が何度か登場するなど、なぜか仏教の守護者となっています。ただ、日本ではヒンドゥー教は全くなじみがないため、翻訳吹き替えの際に分かりやすくするために仏という言葉が使われただけ、という可能性はあります。

少なくともその時点ではチャイヨー・プロダクションと円谷プロの間に諍いはありませんでした。が、90年代に入ってチャイヨー側が日本以外の国でのウルトラマンのキャラクター使用権を主張しはじめ、円谷プロと真っ向から対立するようになってしまいます。先の「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」や、それ以前にやはり円谷プロのキャラクターを使った「ジャンボーグA&ジャイアント」と言った作品を作った際の契約に期限その他の項目がなかったのかも知れません。単純に考えればキャラクターの権利は当然円谷プロ側にあるわけですが、あくまで利用権などに限った場合、契約の中身次第ではチャイヨー側が持っているという主張もあり得ない話ではないのです。実際、裁判によっては円谷プロ側が敗訴するケースもあるようです。

それを盾にチャイヨーはとうとう「ウルトラマンミレニアム」というオリジナルのウルトラマンまで作るに至り、両者の溝は埋まる可能性すらなくなるほど深くなりました。結果、それ以前は通販などでちょびちょび売られていた「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」のビデオは全く売られなくなりました。それ以前から円谷プロの公式資料には同作のことは記載されていなかった様子もあり、封印された幻の作品となっています。ただ、それ以前はビデオが売られていたため、同じウルトラの封印作品であるウルトラセブン第12話と比べるとマニアの再視聴を求める声は大きくないようです。わたしもレンタルビデオの払い下げではありますが持っていますし。

その後チャイヨー・プロダクションはどうも倒産したようで、一部の映画が封印された以外は解決・・・となるかと思われましたがそれ以前に別の会社へウルトラマンの権利を譲っており、今回の中国ウルトラマンはそれをさらに使って、のことらしいです。そもそも複雑な抗争を続けていた権利が中国という法律的常識が日本と大きく異なる国に入ったことで、ますますややこしくなりました。果たして公開を止められるかどうか、も怪しいところです。

とにかく円谷プロというところはウルトラマンというキャラクターがビジネスの柱なのですから、その権利を守るために本来全力を尽くすべきなのですが、どうもキャラクタービジネスなんて胡散臭い話よりも、良い作品を作ることの方が力が入っている傾向が昔からあります。特に初期の構成者は、特撮を中心した映像の技術者やその志望者が多く集まっていた技術者集団であったようですし、そうなるのも仕方ない話ではあるのですが、どうもいまだにそこらへんを引きずっているような。おかげで倒産の危機を迎えたのも一度や二度ではないはずです。
先日、その円谷プロの誇るウルトラマンをハリウッドで映像化した「ウルトラマンパワード」のBD-BOXを買ったのですが

ウルトラマンパワード Blu-ray BOX
ケイン・コスギ,ハリソン・ペイジ,ロビン・ブライリー,ロブ・ロイ・フィッツジェラルド,サンドラ・ギィバード
バンダイビジュアル

同梱されている冊子に「権利はハリウッド側にあり、日本側はソフト等の販売権のみ」というような記述がありました。はたから見るにあまり対等とは言えない契約になっていたように思います。さすがにここ数年は別の資本も入りましたし違うのでしょうが、どうも円谷プロのビジネスはヘタ、という印象しかありません。今回そうした負の遺産が噴き出してしまいました。正直中国作品でのウルトラマンの使われ方に興味はありますが、まずは円谷プロの権利が第一でしょう。訴えが通ることを祈るばかりです。

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