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キャメロンとレンツィの失敗に学ぶ - 「すべての改革の母」憲法改正に挑戦を -

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3.イタリアの経験:スピードの重要性

イタリアでは、レンツィ首相を裏切った?フォルツァ・イタリアのブルネッタ会派長らと意見交換し、イタリアの憲法改正国民投票が、如何に最初から最後まで“政治”に貫かれていたかを理解することができました。イタリアの憲法改正と選挙制度改革は、2014年1月のナザレノ協定から始まりました。

ナザレノ協定というのは、憲法改正(上院改革と地方制度改革)と選挙制度改革を実現するために、レンツィ首相が閣外に去ったフォルツァ・イタリア率いるベルルスコーニ党首と結んだ協定ですが、政権が主導する憲法改正に野党が協力するのは困難なはずです。何がそうした高邁な合意を可能にしたのか。

現地ローマでヒアリングして分かったのは、ナザレノ協定は高邁でも何でもなく、二大政党のリーダーであるレンツィとベルルスコーニが決選投票の当事者となり五つ星運動を潰すための、当に二人による二人のための政治合意。その後支持率を落としたベルルスコーニが協定を破棄するのは必然だったのです。

イタリアの経験が示唆するのは、憲法改正であっても時の政局から切り離せない、という厳しい現実でした。加えて一時的ではあってもナザレノ協定が成立した背景には、両者が直前まで連立政権を構成していたという事実もあります。大阪の自民党を割って生まれた維新が憲法改正に協力するのと似ています。

結局、憲法改正を巡る一定の政治合意から時間が経過すればするほど、そうした合意が維持できなくなるのは現実の政治の必然。ローマで面談したチェッカンティ教授(元下院議員)に国民投票が政治化するのを避ける方法を問うたところ、「時間をかけ過ぎない」ことだと仰ったことが、極めて示唆的でした。

4.「すべての改革の母」憲法改正に挑戦を

日本でも公明党を中心に、時間をかけて民進党の協力を取り付けた方がいい、国民投票の政治化を避けるためにはコンセンサス形成に更なる時間をかけるべき、といった意見が根強いわけですが、欧州の経験から学ぶべきは、憲法改正の意思ある政治勢力で発議を断行するしか道はない、という冷徹な判断です。

キャメロンもレンツィも、首相を辞し一旦は身を引きましたが、本人のみならず周辺は再起を期するという前向きなエネルギーに満ち溢れていました。「すべての改革の母」(レンツィ)たる憲法改正に挑戦するのは、いずれの国にあっても国士たる政治家が背負っている、避けることのできない責務なのです。

もちろん、国民投票が時の政権の人気投票になりがちな現実の政治において内閣支持率が高い方がいいのは当然です。しかしながら、内閣や政党の支持率が十分でないからといって国会の両院で3分の2を有する自公維がその責任を果たさないとなれば、日本政治の歴史に汚点として記憶されることでしょう。

5.おわりに:国を前に進めるため:国会の改革を

憲法改正や国民投票とは別に、今回の海外調査で感銘を受けたのが、議会における審査の在り方でした。日本の国会では、委員会質疑の基本形は議員(主として野党)が政府、閣僚を追及することになっていて、委員会室も教室型が中心ですが、スウェーデン国会の委員会は完全にコの字型、円卓型。

政府メンバーは必要に応じて呼ぶだけで普段は議員間で討論をするのだそうです。本会議場でも、首相と議員は対等に討論。日本の党首討論は特別扱いで滅多に行われませんが、スウェーデンでは党首討論形式が基本、年2回は総当り戦ならぬ総当り党首討論が開催されるのだそうです。

これなら、野党第一党が一方的に政府を追及し、暴力でもプラカードでも何でもやりたい放題、政府与党はひたすら我慢、といった理不尽かつ非生産的な状況にはなりません。憲法改正を実現するためにも、国を前に進めるためにも、私たちがまず取り組まねばならないのは、国会の改革なのかもしれません。

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